意外に平凡だった?”幻覚”ハルキゲニア」



分類:有爪動物門
生息時期:カンブリア紀
主な種:ハルキゲニア・スパルサ[Hallucigenia sparsa] 
     ハルキゲニア・フォルティス[Hallucigenia fortis]


[ハルキゲニアの誤った復元図(左)と訂正された復元図(右)]

 少し古い古生物関係の本の「バージェス頁岩」の口絵の中に左上の絵に描かれたような生物がでているのをご覧になったことはないでしょうか?7対の棘で海底を這う奇妙奇天烈な生物、これがこの頁で紹介するハルキゲニアです。この生物の学名は「幻覚 (hallucia)が生んだ (-gen) もの」と云う意味があり、なるほど幻覚のなかにのみ存在する生物のようにみえます。この生物はバージェス頁岩からは発見当初から知られていましたが、便宜的に、環形動物(ミミズ・ゴカイの仲間)として記載され(1911,Walcott)詳しい研究はされていませんでした。この生物を詳しく研究し再記載したコンウェイ・モリスは1977年に発表した論文に左上図の復元図をのせました。彼はこれを分類群不明の生物とし、この絵がハルキゲニアの復元図として一般に知られていました。
 しかし、中国澄江でみつかった澄江動物群よりみつかった化石により、この生物の正体がわかりました。かの地の化石を調べていたRamskoeldと侯の両氏はこの動物群より多産する有爪動物を研究した結果、ハルキゲニアも有爪動物の一種であり、腹側に生えてるとされた棘は背中側のものであったということを発表しました。
(右上図)
(1991,Ramskeold and Hou) その後、澄江より第2のハルキゲニア、「H.フォルティス」種が発見され彼らの説は実証されたのです。
 カンブリア紀には有爪動物群は大いに繁栄し多様な種分化をしていたようです。
(最近、あのアノマロカリス類も有爪動物に近縁だという説もあります。)