環境ホルモンについて

 「環境ホルモン」は、正式名「外因性内分泌攪乱化学物質」と呼ばれ、生物の内分泌系を攪乱し、生殖障害など健康や生態系に悪影響を与える環境中の化学物質です。環境庁の研究班が1997年にまとめた中間報告書によると、約70種類の化学物質がリストアップされている。
 アメリカ合衆国では、アメリカ環境保護庁(EPA)が中心となって、さらに約15,000種類の化学物質の調査を開始した。

<関連サイト>

1)内分泌攪乱候補物質、関連物質、および参照物質一覧
(国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部)

 

2)化合物質名一覧(内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の生体影響: 東京都立衛生研究所)
参考文献へのリンク有り、生体影響に関する素晴らしい情報提供サイト

3)アメリカ国立化学アカデミーの学術研究会議(NRC)による環境ホルモンの報告書告(1999年7月発表)
この報告書では、これまでの研究報告を分析することによって、環境ホルモンが生殖と発達、神経システム、免疫システム、癌発生率、ヒトや野生生物の生態系に与える影響に関する評価と勧告を行っています。そしてさらに評価するために、胎児から成人になるまでを通じて、リスクを持っているグループに対して新たに継続的研究を行うべきだと述べています。環境ホルモンに関する最新報告書について、「住まいにおける化学物質」が要約しました。

 

環境ホルモンの人間への影響 

  1. デンマークのスキャケベク博士による男性の生殖器異常の報告

    1938年から1990年までの世界中の論文をコンピュータで解析した結果、成人男子の精子数が1億1千3百万個から6千6百万個へと約50%減少していた。また、精液量も約25%減少していた。さらに、精巣がんの増加、生殖器異常なども報告されている。

     

  2. 1970年代のDESシンドロームによる女性への影響

     合成女性ホルモン(DES)の服用した母親から生まれた女性は、思春期に膣がんの発生率が増加。生殖器の奇形や異常のほか、免疫系、行動、能の性分化にも影響し、流産、子宮外妊娠、早産などが発生した。

     また男性においても、精巣が体内にとどまったまま降りてこない停留精巣、尿道口が正常な位置よりも後方にある尿道下裂、小精巣、精子数の減少、精巣がんの増加などの影響があった。

     

  3. 熊本県水俣市で、有機水銀に汚染された魚の摂取により男児出生率が低下

     有機水銀による水俣病発生が起こった1955年から1959年において発生しており、特に漁業関係者らや魚を多く摂取する人々において影響が大きく現れた。

     

  4. ベトナム戦争で用いた枯れ葉剤に含まれるダイオキシン類により、奇形児や子数減少が発生

      この影響は、被爆したベトナム人の体内にダイオキシン類が正常値に戻った現在でも起こている。つまり、世代を越えた影響が人体で発生しているというとである。

  

住まいにおいて摂取の可能性がある環境ホルモン一覧表 

環境ホルモン物質

概要

関連製品

ビスフェノールA

動物実験でホルモン障害による行動変化が発生。

 

分解性があり、半減期は土壌中で約180日、表層水中で約50日

1)ポリカーボネート食器

2)エポキシ接着剤

3)エポキシ塗料

4)エポキシコーティング缶詰

5)エポキシコーティング配管

6)住宅用樹脂製サンルーフ

7)歯科用シーラント 

フタル酸エステル

  • フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)
  • フタル酸ブチルベンジル
  • フタル酸ジ−nブチル
  • フタル酸ジクロロヘキシル
  • フタル酸ジエチル

ラットの実験で精子数減少、甲状腺ホルモン異常、妊娠率低下、精巣重量が発生。

 

水に不要で、油に溶ける性質があり、食品包装用ラップから食品へ移行することが確認されている。

1)玩具、食品包装用ラップ、ビニール製かばんなど塩化ビニルを使っている商品。

2)ペンキ、インク、粘着テープなどの軟化剤(可塑剤)

3)コンデンサーの電解液

 

アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル

水に不要で、油に溶ける性質があり、食品包装用ラップから食品へ移行することが確認されている。

1)プラスティックの柔軟剤

2)塩ビ系食品包装用ラップフィルムの柔軟剤

 

スチレンの2量体、3量体

水に不要で、油に溶ける性質があり、カップ麺のスープの油脂分へ移行することが確認されている。

1)カップ麺容器

2)ABS、AS製食器

3)断熱材

ベンゾ−a−ピレン

強い発癌性、催奇形性有り。

魚での実験でホルモン分泌異常、卵巣発達抑制が確認。

1)食品のお焦げ

2)たばこの煙

ベンゾフェノン

魚での実験で生殖異常確認。

分解性が良くないが、濃縮性はない。

1)医薬品合成原料

2)保香剤

3)紫外線吸収剤

合成ピレステロイド

  • シペルドリン
  • エスフェンバレレート
  • フェンバレレート
  • ペルメトリン
  • アレスリン
  • フラメトリン
  • レスメトリン
  • フェノトリン

男性ホルモンの分泌を抑制

1)殺虫剤

2)蚊取り線香

3)蚊取りマット

4)農薬

ダイオキシン類

  • ポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン
  • ポリ塩化ジベンゾフラン
  • コプラナーPCB

炭化水素と塩素(または塩化水素)が300−400度で燃焼すると副生成物として発生する。

極めて猛毒で、最強の毒性をもつ化学物質。

 水に不要で、油に溶ける性質があり、動物脂質に蓄積される。

 難分解性で土壌での半減期は約12年で長期に残留する。

1)汚染海域の魚

2)汚染地域の畜産物

3)汚染地域の農作物

 

ごみ焼却場、金属精錬工場から排出される。その近辺が汚染地域になることが多い。

Author: Kenichi Azuma


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