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新聞・テレビ(地上・BS)兼業状態を解消し、マスコミ市場への新規参入の道を開いて自由で公正な競争市場を

 11月21日の読売新聞は、「米 
新聞・TV兼業容認 取材網共通化可能に」という見出しで、次のように報じていました。
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[メディア]米 新聞・TV兼業容認 取材網共通化可能に
2017年11月21日5時0分 読売

 【ワシントン=山本貴徳】米連邦通信委員会(FCC)は16日、
新聞とテレビの兼業を禁じるメディア規制の緩和を決めた。言論の多様性を確保するために1975年に設けた規制だが、インターネットが普及した時代に合わなくなったと判断した。

ネット時代に対応…規制緩和

 これまでの規制では、
1企業が同じ地域で新聞社とテレビ・ラジオ局を保有することを禁じていた。情報の発信源が特定の企業グループに偏らないようにする狙いがあった。

 規制緩和により、同じ地域の
新聞社とテレビ局が合併し、インターネット関連事業への投資や取材網の共通化を図る、といったことが可能になる。

 FCCは、テレビ局の合併を制限するルールも見直す。現行規制では、同じ地域で最低八つのテレビ局が存在する状態が保てないと、
合併が認められない。この条件を撤廃する。また、同じ地域で上位四つのテレビ局のうち、二つの局が合併することも、「公共の利益」などの条件を満たせば容認する。

 テレビ・ラジオ局でつくる全米放送事業者協会は「現在の規制は新聞産業を弱体化させ、報道に携わる者の雇用を犠牲にしてきた。(規制緩和によって)調査報道に投資し、視聴者により良いサービスを提供できるようになる」との声明を発表した。

 地方の新聞社やテレビ局はインターネットに押されて経営が苦しくなっている。ネットメディアが地域に関係なく、ニュースを配信する時代となり、規制は
「時代遅れ」との指摘が出ていた。規制緩和により、米メディアの再編が進む可能性がある。

 FCCはネット時代のメディアのあり方を議論してきたが、オバマ前大統領の民主党政権は規制緩和に慎重だった。トランプ大統領が指名したアジット・パイFCC委員長は、
市場競争を重視する「規制緩和派」だ。今回の見直し策でも、FCC委員5人のうち、3人が賛成票を投じた。
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 アメリカでは独占禁止,
言論の多様性確保の観点から,様々な対策が取られていることが分かりますが、日本ではこの種の言論の多様性確保の為の法的規制が無いばかりか、その問題が指摘されたり、議論されたりすることさえありません。大手の新聞・テレビ業者には無制限の自由が有る反面、読者・視聴者などの一般国民を言論の独占から保護する規制は皆無と言って良いと思います。
 
 現に日本ではこの種のニュースは、今回のように
海外で規制が撤廃される時だけ報じられのが常で、多様性確保の必要性やその為の規制がアメリカなどの外国には存在することが報じられることがありません。読売新聞の読者(その他の新聞読者も)の多くは、アメリカで国民の言論の自由を確保するために、このような法的規制がある事を知らなかったと思います。

 日本ではNHK以外のテレビ放送企業は、全部と言って良いほど全国新聞といわれる大手
5大新聞企業によって所有、系列化されています。従って新聞、テレビ相互間の批判が無いなど、言論の多様性が損なわれているにもかかわらず、多様性を確保すべきだという議論が封じられています。

 新聞とテレビの間だけではありません。テレビには
地上波BSの2種類がありますが、後から出来たBS放送は全部、5大新聞社が所有、系列化している地上波テレビ局と同一系列下にあり、5大新聞社が紙の新聞、地上波テレビ、BSテレビを兼営・兼業しています。

 このような実態は
言論の自由(参入の自由)・多様化という観点から深刻な問題をはらんでいますが、日本ではこの問題が、提起されることも議論されることもなく推移しています。

 日本のマスコミの健全化のためには、独占禁止の観点から
5大グループの新聞・テレビ(地上・BS)兼業状態を解消し、マスコミ市場への新規参入の道を開いて自由で公正な競争市場を実現することが不可欠だと思います。

 (なお、日頃インターネットを敵視している読売新聞が、こういうときだけインターネットの普及を(否定的にではなく)肯定的に取り扱うのは大変身勝手だと思います)。

平成29年11月23日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ