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プリペイド携帯電話に罪はない

 横浜市の男児誘拐事件で、身代金の要求にプリペイド携帯電話が使用されたことから、警察庁は26日、郵政省と電気通信事業者協会、携帯電話会社4グループに対し、販売時の身元確認など、犯罪防止対策の徹底を要請しました。

 4月26日の朝日新聞によると、「・・・警察庁は26日、郵政省などに対し、犯罪に使われないために購入時の身元確認の実施と、記録の保存などの改善策を検討するように文書で要請するとともに、現在までの対応状況の確認も求めた。同庁は1月にも要請を行っており、2回にわたり同じ内容の要請を行うのは異例だ。
 警察庁が要請したのは、郵政省の他に電気通信事業者協会とNTTドコモ、日本移動通信、J−フォン東海、DDIの電気通信事業者4者。
 要請文は黒沢正和・生活安全局長、林則清・刑事局長の連名で、契約時とプリペイドカード販売時に運転免許証などの公的発行物で身元の確認をして記録を保管するなど、犯罪防止策を取ることを求めている。
 警察庁は昨年12月の大阪府摂津市の誘拐事件を受け、1月に要請を行っていたが、具体的な改善策は示されなかった」
とのことです。

 犯罪防止は重要ではありますが、犯罪防止がすべてに優先するというわけではありません。犯罪防止のためには国民の自由を簡単に制限できると考えている警察庁の考え方は危険なものがあります。警察庁が所管以外の電話業界にこのような一方的な要請をし、文書で回答を求めることは越権行為であると思います。

 犯罪者が悪用するのは何もプリペイド携帯電話に限りません。脅迫状や嫌がらせなどの文書はほとんどが郵便で送られますが、郵便が犯罪に「悪用」されているという言い方は聞いたことがありません。郵便は差し出すに当たって身元を確認していませんから、捜査に支障があるはずです。それでも警察庁が郵便物の匿名性を問題にしたと言うことは聞いたことがありません。どうしてプリペイド携帯電話だけを問題視するのでしょうか。

 わが国は買い物をするのに身分証明書を提示しなければならない国ではありません。現在、普通の携帯電話の申し込みに際して身元の確認が必要なのは、通話代金が後払いであるからに過ぎません。国民の自由、通信の秘密は最大限の尊重を要するものだと思います。法律によらず、警察庁の要請ごときで国民の自由が損なわれてはならないと思います。
 安易に規制の必要性を主張している日本のマスコミは、規制緩和 の重要性が何も分かっていないと思います。

平成12年4月30日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ