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甲山事件「221人の大弁護団」

 「甲山事件」第二次控訴審で、これまでの弁護団が、検察の控訴に対する抗議の意思表明として、近畿六府県の弁護士3,000人に弁護団への参加を呼びかけたところ、それに応えて165人が新たに受任し、合計221人の大弁護団になったというニュースが報じられました。署名運動ではあるまいし、法廷で争うべき問題に、多数の弁護士の参加を呼びかけそれによって大弁護団を結成するというのは、本来の弁護士としての行動とは思えません。弁護士として受任したと言う実態があるのでしょうか。
 検察が控訴するかどうかは検察自身が決めることで、控訴を不当という非難の方が不当です。正当な法的手続きを踏んでの控訴を非難するのは三審制の否定になります。検察の主張が正しいか、被告の主張が正しいかは法廷で争うべき問題です。

 この裁判に限らず通常の民事事件などでも、訴状や内容証明で送られてくる文書に、多数の弁護士の名が連ねられていることは決して珍しくありません。しかし、そのような場合でも実際に弁護士として活動するのは1〜2名で、あとは単に名を連ねているだけということがまれではありません。素手の喧嘩ではあるまいし、人数で相手を威嚇するというきわめて幼稚かつ原始的な戦法がこの業界ではまだ生きているのです。弁論の中身で争うよりも法廷外で数を頼んでの示威行動で相手を攻撃するという、弁護士とは思えぬ思考、行動です。

 弁護団は「検察控訴への憤りから、立場の違いを越えて多くの弁護士を結集することができた」と言っていますが、立場の違いとはどのような違いなのでしょうか。考え方、主張の違う者が「検察憎し」の感情だけで弁護団に結集するのは、本来の被告人の代理人としての弁護士の行動ではありません。「結集」などという言葉はふた昔前の「全学連」を思い出させます。群れて固まり数を頼んで行動するのは日本の弁護士ぐらいのもので、頭に自信のない人たちのすることです。

 主任弁護人の古高健司弁護士は、「これだけのメンバーが結集したことで、検察の控訴の不当さを世論に理解してもらいやすくなったと思う」と言ってることからも、今回の大弁護団結成の目的が、本来の法廷での活動ではなく、法廷外での宣伝が目的であることが分かります。

平成10年9月26日      ご意見・ご感想は   メールはこちらへ      トップへ戻る      B目次へ