F64
竹島問題とアメリカ


 8月6日の読売新聞は、「米韓首脳会談 北の核で連携強化 徹底検証の必要性確認」と題して、次のように報じていました。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
 韓国を訪問中のブッシュ米大統領は6日、ソウルの青瓦台(大統領官邸)で韓国の李明博(イミョンバク)大統領と会談した。・・・また、李大統領は会談で、ブッシュ大統領が米政府機関の竹島の地名を「韓国領」と再修正させる措置を取ったことに謝意を表した。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

 竹島地名問題のお陰で、5月から6月にかけて韓国を襲い、洞爺湖サミットの時期に合わせたブッシュ大統領の訪韓を断念させた「反米・牛肉騒動」は嘘のように収まり、アメリカにとっては「メデタシ、メデタシ」の結果になりましたが、これは偶然の結果なのでしょうか。

 続いて、8月7日の読売新聞は、
「米韓首脳会談 同盟強化積み残し アフガン協議進展せず」という見出しで次のように報じていました。、
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
 ソウルで6日行われたブッシュ米大統領と李明博(イミョンバク)韓国大統領の首脳会談は、米国産牛肉の輸入再開問題や日本海の竹島の呼称問題などで揺れた米韓関係の立て直しに向け一応の成果を上げた。しかし、ブッシュ大統領が意欲を示していた米韓同盟の強化・発展では具体的道筋をつけるには至らず、残り任期が半年を切った大統領の「限界」を露呈した。・・・

◇最近の米韓関係の経緯
 2008年
 2月25日 李明博大統領就任
 4月18日 韓国、米国産牛肉の輸入制限の段階的緩和を発表
 4月19日 米キャンプデービッドで首脳会談。北朝鮮の核放棄に向けた協力確認
 5月29日 米国産牛肉の輸入制限を6月から撤廃と発表
 6月10日 牛肉騒動で、韓昇洙首相と全閣僚が辞意表明
 6月21日 月齢30か月以上の牛肉輸入禁止で米韓合意
 7月 9日 洞爺湖サミットの会場で首脳会談
 7月28日 米「地名委員会」が竹島の表記を「韓国領」から「主権未確定」に変更し
        たと発表

 7月30日 米、竹島表記を「韓国領」に戻したと言明
 8月 6日 ソウルで首脳会談
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

 こうして経緯を眺めると、アメリカにとって竹島地名問題は、絶妙のタイミングでアメリカ外交を救ったことになります。すべては偶然かもしれません。しかし、偶然にしてはあまりに巧く出来すぎています。このような状況に接した時には、いずれかの作為の結果ではないかと疑問を持たなければなりません。
 アメリカの地名委員会は、なぜこの時期に表記を変更したのでしょうか。そして、なぜこの時期にわざわざ記者会見で公表したのでしょうか。

 7月29日の読売新聞は、
「竹島表記 『韓国領』改め『主権未確定』に/米政府機関」という見出しで、次のように報じてました。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
 米国務省のガイエゴス報道室長は28日、記者団に対し、米政府機関の「地名委員会」が、日本海の竹島の表記について、これまでの「韓国領」から「主権未確定」に変更したことを明らかにした。同島を実効支配する韓国は強く反発しており、来月初旬に訪韓予定のブッシュ大統領と李明博(イミョンバク)大統領との首脳会談でも主要議題に浮上する可能性がある。
 報道室長は具体的な変更時期を明らかにしなかったが、地名委員会のウェブサイト上では、「リアンクール岩」を標準呼称とし、その他の呼称として「竹島」、韓国名の「独島」の順に列挙している。・・・
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

 7月28日と言えば、7月14日にわが国の政府が学校で竹島を日本の領土として教える方針を明らかにして以来、日韓両国の確執が激化している真っ最中です。その時にアメリカがこのような発表をすれば、韓国人がどのような反応を示すかは火を見るよりも明らかです。国務省の報道室長が、そのような事情を知らないことはあり得ないと思います。
 読売新聞の報道を見る限り、アメリカ政府がなぜこの時期に変更したのか、変更したのは竹島だけなのか、何の説明もありません。
 そもそも竹島問題が、日本の敗戦直後の1946年1月29日に、連合国最高司令官がSCANPIN指令第677号によって、竹島を日本の行政上の管轄権外に指定したことに端を発していることに鑑みれば、
アメリカの意図を疑うのは日本国民として当然のことと言うべきです。
 この点を追及しない日本の新聞は腰が引けていると言わざるを得ません。
(参照 E4 北方領土問題とアメリカE36 対北朝鮮外交に見るアメリカ外交の本質) 

平成20年8月23日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ