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 子育て支援は少子化対策にならず、少子化対策を口実とした子育て支援は便乗詐欺。便乗詐欺が続く限り“子持ち様”論争は必要・有意義で不可欠

 5月26日と、6月2日の読賣新聞は、それぞれ「[あすへの考]【加速する少子化】子育て支援は自分への投資…NPO法人フローレンス会長 駒崎弘樹氏 44」、「「子持ち様」論争 なくすには」と言う見出しで、次のように報じていました。
(茶色字は記事、黒字は安藤の意見)
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[あすへの考]【加速する少子化】子育て支援は自分への投資…NPO法人フローレンス会長 駒崎弘樹氏 44
2024/05/26 05:00 読売


 「静かなる有事」と言われる少子化が加速し、人口の減少に歯止めがかからない。2023年の国内の出生数(速報値)は75万8631人となり、8年連続で過去最少を更新した。

 危機感を募らせる政府は年3.6兆円規模の新たな対策を打ち出した。30年代に入ると、出産期を迎える女性が急速に減るため、それまでを「少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と位置づける。

 私たちはどうすればいいのか。保育現場での体験を基に政策提言を続けてきたNPO法人フローレンスの駒崎弘樹会長は、対策を充実させるだけでなく、子育てを巡る意識を変えていくことが不可欠だと説く。(社会部 山下真範)

 「どうすればいいのか」を真面目に考えるのであれば、まず、「少子化」の原因は何かを考える必要があるのは言うまでも無いことですが、1989年の1.57ショックと、それ以来35年余り「少子化対策の中心」として続けられてきた「子育て支援」の経緯と結果を見れば、多額の費用と手間と時間を掛けて続けられてきた、子育て支援は「少子化対策」としては何の効果も無かった(むしろ少子化を加速させた)ことは明白です。「子育て」と「少子化」は関係ないのです。子育て支援が少子化対策にならないと分かった段階で、少子化対策としての子育て支援は中止されるべきでしたが、なぜか中止されることなく継続され続けて現在に至っています。

 少子化の主たる原因は未婚・非婚の増加です。本来であればその増加の原因を十分調査しなければなりませんが、調査をして当事者の本音を聞くのが難しいという事もあってか、未だ広範囲の対象者に対して、深掘りした調査が実施されたことがありません。
 少子化の原因が子育て支援とは無縁であることがばれることを恐れてか、女性の有識者(そのほとんどが既婚の子持ちの女性達)から、「結婚の奨励(強制)は、産めよ、増やせよの再来だ」とか言う、見当違いの反論に遭うことがしばしばでした。これらは原因を究明し効果的な対策を実施する気はないと解釈するほかはありません。「少子化」の原因を「共働きの母親の子育て負担」とする以上、この人達にとって「未婚・非婚の原因」はどうでも良いのです。

 未婚・非婚の増加の原因は、“子育ての負担”ではありません。子育てが負担だから結婚はしないと言う人はいません。結婚する気があれば結婚して子無しの人生も可能です。
 主たる原因は日本社会の劣化です。配偶者を得たい、子供を持ちたいという人として当然の意識を持たない人が増えたことであり、その主因は男女平等思想の暴走により夫婦(男女)の役割分担社会が揺らいで来たことです。夫婦(男女)の役割分担を全面否定する社会は、未婚(非婚)の増加に繋がります。

 また、定義の曖昧な「人手不足」を口実にした安易な外国人労働者の増加と、日本各地の工場が中国などの海外に移転し、かつて「金の卵」と言われた若年労働者経済力が大幅に低下したことも一因です。

「子持ち様」拡散に衝撃。肩身狭くなり、産む気持ちが薄れる
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こまざき・ひろき 東京都出身。慶応大を卒業後、2004年にNPO法人「フローレンス」を設立。
都内を中心に保育園や小規模保育施設、障害児保育施設など約20の保育関連施設を運営している。
NPO法人全国小規模保育協議会理事。1男1女の父でもある。著書に「政策起業家」(ちくま新書)など。


 少子化はゆっくりと社会を襲う危機です。人は突然起きる災害などには、団結してすぐに対処します。ですが、温暖化がそうであるように長い期間、目に見えない形で進行する問題への対応は苦手です。少子化対策の必要性は1990年頃に叫ばれ始めましたが、いまだにその深刻さを共有できていないのが実情です。

 最近、SNSを中心に「子持ち様」という言葉が広がっています。子どもを育てる親が、職場などから配慮を受けることをやゆするものです。「子持ち様の子がまた熱を出したとか言って休んだ。そのカバーで仕事が増えた」などといった使われ方をしています。

 共働きが当たり前の世の中になり、少子化対策が叫ばれる中、20~30歳代の未婚の男女からそうした声が上がることに衝撃を受けています。不満をぶつける相手は、仕事のカバー態勢を整えていない会社側であるはずです。「被害者が被害者をたたく」ような悲劇的な構図だといえます。

 1980年代は全世帯の半数近くに子どもがいましたが、今は2割弱と少数派になっています。こうした言葉により、子育て世帯の肩身が狭くなり、子どもをさらに産もうという気持ちが薄れてしまうのではないでしょうか。その結果、少子化が加速するのではないかと危惧しています。

(以下略)
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 子持ち様と、「共働きが当たり前の世の中」いう言葉は初めて聞きました。

 本来、子供の養育費誰が負担するものなのでしょうか。それは子供の両親が負担すべきもので、それが基本です。少子化対策子育て費用は本来関係ありません。
 共働きの母親に対する“子育て支援”中心の少子化対策を実施して、何の成果もなく少子化が出生率1.20まで落ち込んだことは、子育て支援少子化対策としては、何の効果も期待できない(却って逆効果)という事を明白に物語っています。

 「共働きが当たり前の世の中」がどういう意味かよく分かりませんが、仮に「共働きが多数派になった」という意味であるとしても、多数派=優先を意味しません。“少子化対策”と「子育て費用」が結びつかない以上、本来“子育て費用"はその父母が負担するもので、子育て費用の公費負担が求められるのは、“生活保護”家庭だけのはずです。「共働き」は関係ありません。
 少子化対策を語って子供の養育費を公金から出して貰おうというのは、悪質な“便乗詐欺”です。

 “異次元の少子化対策”で、役割分担夫婦の家庭にも児童手当(子育て支援)支給をと言う発想は、今までの「夫婦共働き家庭への子育て支援こそ少子化対策の要」としてきた経緯を考えれば、便乗詐欺行為を役割分担夫婦にも拡大して共犯に陥れ、自分たちの罪を薄めようとする行為に他なりません。

  「共働きの母親」が育児のために休暇を取り、その為周囲の未婚者などの仕事が増えることを「子持ち様」という言葉を使って揶揄する事を非難していますが、「子育て支援」が「少子化対策」にならない事が明らかになった以上、その非難は不当です。

 “少子化対策”と“子育て費用の負担”は関係ない事が明らかになった以上、子育てに休暇が必要であれば、それは“有給”ではなく、“無給”とすべきです。
 子育て支援が少子化対策にはならないのですから、そもそも「有給休暇」にする必要・理由がありません。賃金は労働の対価ですから、家庭の事情で仕事を休み、そのしわ寄せで他の労働者の仕事が増えたのであれば、休んだ人の賃金をカットして、その分は代わりに働いた人の超過勤務手当に充当すべきです。それをしないから周囲の人達から「子育て様」と揶揄したくなる程の不満が出るのです。

 本来家庭でできる育児をせず有料の保育施設に任せ、自分はその間有給労働に従事して対価(給与)を得ているのですから、保育料(養育費)は公費負担ではなく、両親がその対価の中から負担すべきと言う事になります。「夫婦共働き」か「夫婦役割分担」かは、その負担の有無を決める口実にはなりません。
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「子持ち様」論争 なくすには
2024/06/02 05:00 読売

 SNSで「子持ち様」を巡る論争が続いています。
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 子育てをしながら働く人が職場などで配慮されることを 揶揄やゆ する言葉で、先日このコーナーで紹介したところ、約60件の意見が寄せられました。

 子育てと仕事を両立している人、仕事のカバーに回る人……。それぞれの立場で、この言葉に複雑な思いを抱いているようです。今回はみなさんの声を紹介し、改めて論争の背景を考えます。

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 「ずっと我慢してきた。正直よくぞ言ってくれたと思っています」。奈良県のサキコさん(40歳代、仮名)からは LINEライン でこんなメッセージが届きました。

 電話で話を聞くと、20歳から働き、結婚歴はないそうです。職場では子どものために休む人の穴を埋めてきました。「国を挙げて子育て支援を進める中、独身は見向きもされず肩身の狭い思いをしてきた」。論争について「SNSの普及で、隠れていた不満が見えるようになったのでは」と考えています。

(以下略)
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  “便乗詐欺”が続く限り、“子持ち様”論争は必要・有意義で、不可欠です。

 日本のマスコミ報道では、一方の意見だけが大きく報道され、もう一方の意見は無視されて全く報じられない事がある事が改めて確認されました。これはこの“少子化”を巡る問題全体について言えることだと思います。その結果が少子化対策として何の役にも立たない“子育て支援”35年にわたって繰り広げられ、効果が無いと分かった現在に至っても軌道が修正されないという異常事態となっているのです。このような展開は“少子化問題に限りません。
 この点でこの記事は大変意義あるものと思います。

令和6年6月8日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ