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マスター:久宗貴則(マウンテン生駒)
コーヒー豆に命を与える「焙煎」

皆様の良く目にする茶褐色の「コーヒー豆」
そのコーヒー豆は、元々は「グリーン ビーンズ」という緑がかった色のコーヒーの生豆(なままめ)なのです。
私達が普段口にするコーヒーは、その生豆を吟味する所から始まり、豆を焼き、豆を選別する、これらの一連の作業を行って生まれ変わります。
その1つ「豆を焼く」作業、いわゆる「焙煎」こそが、焙煎士の技量が試される最も重要な作業なのです。
そして、良いコーヒー豆を作る決め手となる「焙煎」に最も必要なのが「見る」力です。
コーヒー豆の焙煎は、ケーキやパンを焼く作業の様な認知度がなくまだまだ知られていないのが現状です。ですから「焙煎」という工程がどの様な作業なのか、そしてこの工程によってコーヒー豆がどの様に変化するのか?、またどの様に変化させるのか?あまりピンとこないと思います。
今回のお話で、この「ピン」とこない焙煎が「ピンッ!」ときて頂ければ幸いです。
まず、「焙煎」をするには「焙煎機」が必要です。
これは業務用も家庭用も大きさこそ違いがありますが、基本的には同じコーヒー豆を焼く機械です。
より細かな調節が出来る業務用は、理想的な「味」を求めて独自のセッティングを行います。このセッティングをベースに焙煎の工程を組み立てます。季節や温度が与える影響力を考えて調節したり、コーヒー豆の種類や個々の状態(作柄の違いや保管状態によるコーヒー生豆の乾燥具合=お米が新米から古米になる様な感じです。)に合わせたり、そして最終的な焼き具合などにも合わせて変化させます。新しくて初めて使うコーヒー豆の場合、大体はその豆の状態や情報をもとにセッティングや焼き具合が想像できるのですが、中には「ワクワク」半分、「イライラ」半分となかなか決まらない時もあります。その代わり決まった時の喜びときたら!、思わず踊ってしまいます、人には見せられませんけど。
そんなこんなで向い合っている「焙煎」ですが、
私の場合は、4つの工程を経て焼き上げます。

(工程の細かな内容につきましては企業秘密ということで、ご了承下さい。)1〜3の工程は温度や時間をチェックしながらコーヒー豆の膨らみがピークになるのを待ちます。コーヒー豆はピークになるとポップコーンの様に「パチパチ」音を鳴らして膨らみます。この状態を「ハゼ」と言います。一回目の「ハゼ」が終了すると4つ目の工程に入ります。そこから数分間が最も緊張する瞬間です。ここで失敗すると全てがパーになります。私の場合は中煎り(シティーロースと)が多く、豆を出すタイミングを計る手段に「豆の焼き色」と「豆面(まめづら)」というコーヒー豆の表面の焼き上がり具合そして温度と時間があり、これらのタイミングと「理想」が合致した瞬間の数秒で判断し手早く釜からコーヒー豆を出します。この数秒での判断を誤ると勿論「味」に影響が出てしまい、最悪「失敗」となってしまいます。そうならない様に、しっかり「見て」確認します。
4つ目の工程に入ってからの数分間、その中でも豆を出す数秒、気が焦っているせいでしょうか、たったの数秒が果てしなく長く感じる時もあり、リラックスの意味で歌を唄いながらなんてことも♪♪♪。これも人には見せられませんね。
では、中煎り以外は?
中煎りから更に深く焼くと、これが不思議とコーヒー豆が「もうそろそろですよ」と教えてくれるのです。セッティングに従って工程通り進めて行くとコーヒー豆が2回目の「ハゼ」に入ります。これが合図です。
ここからハゼる音や時間を頼りに焼き上げて行きます。そして色目を確認して釜から出して出来上がり!
どの焼き加減も最後に工程の確認を行い、表現したい形に焼き上げているかチェック!!
どの様に「火」を与えるか?どれ位「時間」を掛けるか?そしてどの位まで「焼く」か?これらのポイントを始めのセッティングに反映させ調節し、個々のコーヒー豆が最も「美味しく」なるであろうポイントを見つけて焼き上げます。中煎り位までの焼き加減のコーヒー豆程このポイント探しが難しくなります。例えば香りを引き出すには、よく焼かなくてはいけない、しかし焼きが深くなると苦味が増し、場合によっては渋味まで引き出してしまう。浅く焼くと香りが出ず酸味の印象が強くなるといった状況が多々あり、これらの条件をカバー出来るストライクゾーンが中煎りだとやけに狭くなります。釜から出す間際は、豆と会話をする様に「もういいか?」「もういいか?」と豆面を確認し、最後「OK!」と言って出します。「五感」と「記憶」を頼りにコーヒー豆の気持ちになって焼く!これが鉄則!
おうちで焙煎される方へ
最低でも2回目の「ハゼ」(合図)が来る所まで焼き込む事をおすすめします。その方が失敗も少なく安定した味のコーヒー豆が焼き上がります。後は2回目がハゼ始めてからどの位の時間焼くか?またはどれ位色づけるか?で、お好みに合わせます。時間を掛ければそれだけ焼きが深くなるので、当然苦味も強くなります。
そしてもう一つ重要な作業があります。それは、焙煎後のコーヒー豆を選別する事です。この作業は、焼き上がったコーヒー豆の状態確認を含めて、不良豆や異物の除去を行います。「一粒一粒、しっかり見て確認します」、というとオーバーですが、それに限りなく近い感じであることは間違いありません。だから結構手間と時間が掛かります。
これ本当です。ちなみに、この作業を「ハンドピック」といい、カビ豆、虫食い、発酵豆、死豆(乾燥して味が抜けている白っぽい豆)、石、金属(コイン、釘、針金等)、カカオ豆、とうもろこし等、これらの不良豆や異物をじっくり見ながら、しかもスピーディー(いい加減と言う事ではありません)に取り除いていきます。
ここで手を抜くと不快な味や香りの原因になったり、異物が原因の器具のトラブルを招いたりと決して良い事にはなりません。だからこそ「焼き」同様に「じっくり」見ながら丁寧に行う必要があるのです。
「焙煎」とは、基本的にはシンプルな作業です。豆をただ「焼く」というだけですから。
しかし、そこから少しでも違いを表現する為に、そしてその結果が皆様に満足して頂けるように、私達自家焙煎コーヒー店はそれぞれ独自の試行錯誤を繰り返しながら「美味しいコーヒー」を求めて努力しています。
皆様もそのあたりをちょっと意識して自家焙煎店のコーヒーを飲んでみて下さい。
きっと一口飲んだ後その熱意が伝わってくるはず・・・。
と、やや不安なのは、私達コーヒー屋も含めて意識して頂く為の情報公開がきっちりされているのかなと思うからです。そもそもコーヒー豆自身もあまり理解されてないような?
コーヒーは黒くなった状態で輸入されると思われている方や、コーヒーの赤い実は知っているけれど中は黒い豆だと思われている方など、コーヒーの生豆?と思う方はまだまだ多くいらっしゃいます。
また別の例で、「モカ」という商品を挙げると、A店の「モカ」とB店の「モカ」は同じ、いわゆる、どのお店でも「モカ」は「モカ」だと思われている方も多くおられます。勿論、個々の関心の高さで知識量は違うと思うのですが。
やはり私達コーヒー業界に携わる者の勉強不足や閉鎖的考えから来る情報発信の少なさや嘘が横行した結果なのかな〜、とも考えてしまいます。ここ最近は、大手のコーヒー会社や飲料メーカーも少しずつ情報公開をし始めています。缶コーヒーがいい例でしょう。よくCMもしてるし。コーヒー豆100%とか、無香料とか、丸いままのコーヒー豆を使用とか、よく考えると「当り前やないか!」と言ってしまいそうな内容だったりしますが、それでも大きな進歩です!。コーヒー本来の味や内容に近づけ、嘘偽りを極力減らす、そしてその内容をはっきり謳える状態にする、やはりそれがニーズであり差別化に繋がると判断したからでしょう。
今後コーヒーが文化として定着して来たとして、消費者の知識レベルが上がって行かなければ文化の発展どころか衰退に繋がります。今後私を含め業界の者は、お客様が知識を深めていける為の情報を具体的な形として発信し「見せる」必要があると感じます。
次回は焼き立てコーヒー豆の「楽しみ方と保存」についてのお話です。

今回のおすすめコーヒー 「サンチュアリオ」

世界でも有数の最高品質コーヒー豆生産地コロンビア。
その中でもカウカ州ガジビオ地区は、クオリティーの高いコーヒー豆を生産しています。今回は「サンチュアリオ農園」で生産されたティピカ種(品種)のコーヒー豆をお届けいたします。この「ティピカ種」という品種は、エチオピア、アビシニア高原で発見された最も原種に近いコーヒーの木と言われています。特徴としては生産量が少なく、病害虫に弱い、そしてデリケートで手間が掛かる、といったマイナスもありますが、優しくまろやかな舌触り、後口のキレ、豊かな甘味といったマイナス面を補う優れた味わいを持っています。
この品種で代表的なコーヒーがジャマイカの「ブルーマウンテン」です。
今回ご紹介する「サンチュアリオ」は、やや小粒で味に締まりがあり「ブルーマウンテン」の様な優しくまろやかという特徴がある事から、豊かな甘味と果実感のある心地よい酸味と香り引き出し、のどの奥に残る深みのあるコクと余韻を楽しんで頂く為の焼き加減で「焙煎」しました。その結果、柔らかいのに存在感のある深い味わいに仕上がりました。そしてこのコーヒーに対するオーナーの思いは特別で、環境保全(土壌・動植物の生態系の保全、農薬の使用禁止、労働環境、社会貢献など)を前提に栽培する「レインフォレスト・アライアンス」という認証を得て、豊かな自然の維持と共に良質なコーヒーの生産に情熱を持って取組んでいます。
今回はこの「サンチュアリオ農園」のコーヒーをシティロースト(中煎り)100gと
フルシティロースト(中深煎り)100gをセットにしてプレゼント致します。
同じコーヒーのローストの違いによる味の変化をお楽しみ下さい。

コロンビア サンチュアリオ
国  ・・・・・コロンビア
産地 ・・・・カウカ州ガジビオ地区
品種 ・・・・ティピカ種
ロースト・・シティロースト
       フルシティロースト

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