ネップレコーヒースタンド コーヒーよもやま話 ネップレコーヒースタンドのトップへ戻る
マスター:久宗貴則(マウンテン生駒)
月ヶ瀬より 〜若葉の香り〜

新緑の香るとても気持ちの良い季節がやって来ました。
  店をはじめて2年程経った頃、お客様の紹介で「月ヶ瀬の岩田茶園」さんを伺いました。オープン当初から「有機JAS認証」のコーヒー豆を使っていたためか、その手の商品に興味があったのと「何か美味しいものを置きたい」という思いからいろいろ調べたり聞いたりしている時、岩田茶園さんの「有機・無農薬栽培茶」のお話がでてきました。その時はもちろん「緑茶」の話で、「まぁ話を聞いてみて、よかったら」なんて考えていました。今思えば、とても失礼なはなしです。その時は、コーヒー屋に「お茶?」って思ってましたし、「あまりインパクトがないかなぁ」とちょっと不安もありましたから・・・。
  でも、「お茶屋にコーヒー豆が売っているのだから、反対があっても良いだろう!」と思い、とりあえずご紹介していただいたお客様に連れられて行ってきました「岩田茶園!」。
で、そこで出会ったのは、なんと出来て間もない「紅茶!」だったのです!!
「ビックリ!」でした。国産の紅茶の存在をほとんど知らなかった僕としては、ただただビックリ。紅茶なら店でも扱っていましたから願ったり叶ったり!「お茶」への心配は一瞬で吹き飛んでしまいました。
ちょっとした興奮を抑えながら、出来立ての「紅茶」を見せて頂きました。一見「中国茶」を思わせる茶葉で、バナナの皮のような甘く「ツンッ」とくる香りがありました。その時頂いた紅茶の新茶は、甘味と爽快な口当たりがあるのですが、ボディ(コク)が少なく「サッパリ感」だけが、やけに印象に残る味わいでした。しかし、出来たての紅茶にはボディ感や香りが少なく、後に「後熟」(コウジュク)と呼ばれる成熟期間を経て味に深みが出るのだと聞きました。最近ではこの「後熟」が逆に「劣化」を招く恐れがあるため、窒素ガスの封入などで抑える傾向だそうです。
そして、その「後熟」期間(約半年)を終えると・・・。
その通り!味に深みとコクが出て、香りも初めの「ツンッ」としたものが消え甘さと深さが出ました。やはり言葉どおり「変化」があるとうれしいですね。その時期がちょうどお正月。新年早々良いものを頂きました。

感動を頂いてから4年が経ちました。その後も岩田さんの「研究・開発」により茶葉の内容は格段に良くなり、味の深みと香りが増しました。
研究の中で岩田さんが特に重要視していたのは、茶葉をしおらせる「萎凋(いちょう)」。
この工程は茶葉を日陰に満遍なく広げて、風通しの良い状態で数時間置き茶葉の水分を減らして柔らかくし香味を引き出します。もっとも良い状態であればリンゴの様な甘酸っぱい香りが広がり、茶葉の先から茎まで均等に柔らかくなります。
  「萎凋」がピークを迎えると、次に「揉捻(じゅうねん)」の作業があります。ここでは、
揉捻機にかけ葉汁を絞り出し、葉の細胞を壊して発酵を促します。ローリングの圧力をかけすぎない様にコントロールし最適な発酵を促すポイント探しがとても重要だそうです。
茶葉の品種により圧のかけ方が違うらしく、今まさに新たな品種に挑戦している最中で、この違いプラス「萎凋」の加減、それが「美味しさ」のキーになる事は間違いないようです。
  そして「発酵」にはいります。1〜2度の僅かな温度変化をコントロールしながら加湿をし、数時間掛けて発酵させます。過剰発酵してしまうと香りや旨みが飛んでしまうため、
しっかり張付いて管理します。
  最後に「乾燥」です。発酵を止めるため高温で乾燥させます。最適な水分含量の4〜5%にします。コーヒー豆の焙煎時もそうですが、色や持った感覚で出来上がりの良し悪しが分かるようです。
  これで「国産有機無農薬紅茶ムーンロック」の完成です!
  今この紅茶(ムーンロック)は緑茶の品種(オクミドリやヤブキタ)で製造されています。緑茶品種はアミノ酸が豊富で甘味が強いのが特徴で、紅茶に加工してもその甘味は引き出され、渋味が少ない甘くまろやかな味わいになります。しかし新たに紅茶品種(べにふうき、べにほまれ)の栽培に乗り出し、より香りと味わいに「パンチ!」をきかした紅茶づくりに取り組んでいらっしゃいます。この品種で作られた紅茶は昭和30年頃の日本でも生産されており、その当時のロンドン市場で高い評価を得て、オークションでも高値が付いた実績があるそうです。ですから日本の紅茶は他の紅茶の名産地に引けを取らない内容であると証明されているのです。今取り組んでいらっしゃる「紅茶品種による紅茶」はその当時のように「手摘み」での収穫で更なる「旨味」への挑戦中です。
そして去年と今年、その紅茶のテイスティングをさせて頂きました。去年と今年では大きく味が変化していました。香り、味の深み、渋味、全てにおいてあじの存在感が増していました。ただ、アクもあり「萎凋」「揉捻」「茶葉の見極め」など研究の余地はまだまだあるようですが、岩田さんには「イメージ」が湧いているみたいです。出来上がりがとても楽しみです。
この「岩田茶園」さんには、緑茶やほうじ茶など沢山の商品をご用意しています。5月の「新茶」をはじめ、一番茶を焙じたとても贅沢な「月香(げっこう)」という名のほうじ茶や花粉症に効果があると言われている「べにふうき」という紅茶品種を緑茶に加工したティーバッグなど、全てを「有機・無農薬」で栽培し、飲む方の健康を願いながらお茶作りに励んでおられます。
私は、岩田茶園さんを通じて「大和茶」の良さを知る機会を頂いた事にとても感謝しています。近畿であればどうしても「美味しいお茶」=「宇治茶」のイメージがあり、地元の商品の良さを知ろうとする好奇心が沸きませんでした。歴史をたどれば宇治も大和も名張川から木津川における良質なお茶の産地で、この辺り一帯がひとつの「茶所」だったようです。しかし、都道府県で別れた時「宇治」と「大和」と分かれてしまい後の明暗を分ける結果となってしまったようです。一説によれば「大和茶」の方が「宇治」より歴史が古いそうです。ただ、歴史以上に「大和」のお茶の葉は肉厚で深い旨みを持つといわれ、標高300m以上の高地栽培による寒暖差が「ゆっくり」とした生育をさせ、高い香りと味の深みを与えるようです。地元の産物だからという訳ではなく、「うまい」物が身近なところに存在する「認識」と「感謝」がこの「奈良」には必要なのではないのかなと思うのです。

今回のおすすめ商品 有機・無農薬国産紅茶「月ヶ瀬ムーンロック」

 奈良月ヶ瀬で育まれた有機・無農薬(JAS有機農業認定)茶葉を紅茶に加工いたしました。美味しいお茶を安心して飲んで頂き、みんなが健康にいられるようにと茶園オーナーが真心込めて育てた茶葉を慎重かつ丁寧に精製し、爽やかで甘くフルーティーな香りとまろやかで甘味のある味わいに仕上げました。緑茶品種で作られた渋味の少ない柔らかな味わいの紅茶です。

 この紅茶には、春摘み「ファーストフラッシュ」と夏摘み「セカンドフラッシュ」があり、今回は春摘み一番茶をご紹介いたします。
  5月の最も柔らかい新芽のみで作られました。まろやかな口当たりと優しく華やかでフレッシュな若葉の香りを楽しんで頂けます。アミノ酸の多い緑茶品種だから渋味が少なく甘味が濃厚。ティータイムのひと時を「ほっこり」させてくれる癒しの紅茶です。
この紅茶はストレートがおすすめです!柔らかな甘味と風味をお楽しみ下さい。
蒸らし時間は3分以上で「ゆっくり」と蒸らして下さい。出来れば1杯分より2杯分以上で作って下さい。これは1人でお召し上がりになる場合も同じです。2杯分の紅茶をカップの3分の1ぐらいまで注ぎ、3回ほどに分けてお飲み下さい。1杯目は香り、2杯目は味わい、3杯目はコク、この時に紅茶によってはミルクを入れて甘味を引き出したり、渋味を中和させたりして色々と味わいを楽しんで頂けます。ちなみに「ムーンロック」のセカンドフラッシュ(夏摘み)は、ミルクとの相性が良いので2杯目か3杯目にミルクを入れていただくと甘味が増して美味しくなります。この3回飲み、紅茶を飲む時は是非お試し下さい。

- ネットプレストップへ - KCNホームページへ -
Copyright(C) KCN-Netpress All rights reserved.