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もの創りの心と手
〈 AIDA デザイン 〉
木に寄せる心ばえは大らかに、温かく
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木のやさしさに触れる

道路からのアプローチも自然な植栽でほっとする |
ならやま大通 り沿いにオープンしたオーダー家具AIDAデザインは、歩道から数メートルのアプローチにも間さんの自然への想いがこぼれて木や草花が育っています。
扉を開けるとベンチや小さな椅子、テーブルが木の肌合いを見せながら所を得ているし、奥には大きなテーブルが人を待っているのです。誘われるようにテーブルに近づくと大抵の人は、思わず手を差し伸べてなでてしまいます。厚みのある一枚の板のやさしさを確かめたくなるのでしょうか。
周囲の壁にはたくさんの一枚板が立てかけられ、それぞれの木肌の色、形、風合いを見せていますが、近づくと小さな紙の札に値段と買い主の名前が記されているのです。あれもこれもほとんどが行き先決定、居合わせた人からは「いいなあ」とのつぶやきが聞こえてきます。
主催者の間さんは陶器のギャラリーを開いたり、夫のデザイナーからデザインを習ったりするうちに木の魅力と職人たちの仕事ぶりに心を奪われ、お店を開くことになってしまいました。

主宰者 間 都(はざま みやこ)さん写真中央「物売りおばさん」に徹する間さんを中心に、 娘婿である建築家の丸尾夫妻も力強い協力 |
「主婦が子どもを連れて働こうと思ってもなかなか無いんですね。だったら自分でやるしかないって、家を売った資金でギャラリーを開いたんです。お金は無い、家しかない、だったら売るしかないって。夫に話すと『営業の経験もなくてどうして物が売れるんだ、証拠を』っていうから、営業職に半年就きました。そうして説得したんです。いつも誰かの協力がありました。一番は夫ですね、支えられてきました」
ご主人の転勤などでギャラリーを閉めたものの娘が高校生の頃「何かしないとお母さんらしくない」の一言から木の仕事に携わることになったそうです。「その娘も結婚して夫婦そろって手伝ってくれているんです」。娘婿は建築家、木の家具が似合う家を設計、間さんの仕事も一層フィールドが広がるようです。
使い手と作り手をつなぐ
間さんは毎月材木市に立ちます。女性がほとんどいない世界にしんどい思いをしても行くのは値段をおさえるため。

厚みのある大きなテーブルは、何年生きた木なのか。 思わずなでてしまう。 |
「木のことなら何でも知っています。製材所のおじさん、工房のおじさん、いろんな人から教えてもらいました。いい物は値段を抑えたら、必ず売れます。私は物に作品は無いと思っています。全てが道具。家具はもちろん家も道具。道具を作るのは職人で先生ではありません。使う人の身になって真剣に考えて作ったらきっと気に入ってくれるし、長い間使えます。ただ、職人には物が売れませんから、私が売っているんです。
物売りおばさん、使い手と作り手のつなぎ役。納得のいくまで話し合って作りますから、今までクレームは一度もありません。思っている以上の物ができたと喜んでくださるのが私の生き甲斐です」
家具はできるだけ少なく、が間さんのモットー。食器棚も普段使いならざる籠でいいのではと話します。本当に気に入った最小限の家具を置いて暮らすそんな当たり前のことが素敵に思えます。
「木は使うほどに味がでて温かみがにじんできます。使う人の気持ちが滲むのでしょうか。手ずれの味わいを長く楽しめる家具でありたいですね」