高鴨神社のさくら草
金剛山麓、高天が原伝説の 地は神さびた雰囲気が漂い、八百万の神々の物語が生まれたのも納得してしまいます。京都の上賀茂、下鴨神社はもちろん全国の鴨社本社であるという由緒正しい古社、高鴨神社は風の森峠、葛城古道を結ぶ道沿いに深閑として建っています。4月下旬、若葉が日々色を深める頃、境内には目もあやなさくら草が典雅な装いで並びます。このあえかな花に心血をそそいで育てるのは鈴鹿義胤宮司。
 |
 |
京都の上賀茂、下鴨はもちろん全国の「かも」神社の本社である高鴨神社 |
「鈴鹿家は京都の吉田神社の社家で曾祖父は一時明治天皇と共に東京へ行っていたようです。その時に祖父はさくら草を知って、京都に帰ってからも育てていたんですね。交友のあった勧修寺伯爵や樋口子爵がさくら草の愛好家で、関東へ転居される時に秘蔵の花を譲り受けているんです」

古式の作法で飾られるさくら草 |
動植物には非凡な才能を持つ祖父は、広大な邸の庭をさくら草の舞台にしていったそうです。四百八十種、二千六百鉢を数えるさくら草の歴史のはじまり。
「日本人らしいたおやかで上品な美しさが花の魅力でしょうね。江戸時代に最盛期を迎えて、見事な品種も生まれ、黒鉢に六段飾り、小屋の間数も決められたようです。天保年間には『桜草作伝法』という本が出ています。花に付けられた名前も唐衣、狩衣、通小町など謡曲にちなむものも多いんですが、花の特徴と良く合っていて、うまいなぁと感心します」
|