季節のテーブル  
>>暮らしの歳時記

極寒の頃、熱燗で一献 今年の冬は例年にない寒波で雪の多い地方は大変。何事もほどほどにと願いたいものです。奈良は盆地特有の冷え込みで、昔から寒さが足元から這い上がってくるといわれました。以前、奈良町の取材をしていた時、冬に伺うとすっかり冷え切ってしまったものです。古い家は広いし、欄間や障子で機密性はないし、寒がりにとってはちょっとこたえました。  そんな奈良の町には昔から“あられ酒”が女性に愛されていたようです。あられ酒とは米麹が入っているので瓶を傾けると白い麹がお酒に舞ってまるで霰のように見えるところからの名付け。甘い口あたりなのでお酒が苦手な女性にも大丈夫だし、
今西清兵衛商店の「あられ酒」と熱燗にぴったりの「極味」
納得店描(2003年2月取材)の記事はこちら
ほんの少しいただくと体がほっと温まります。 冷たい奈良を過ごす知恵だったのでしょう。  お酒好きにはこの季節、やはり熱燗が一番。火鉢に鉄瓶をかけて、ここで燗をつけると台所へ立つ手間も省けるというものです。気に入りの徳利とぐい飲みを用意して、あつあつの鍋を囲めば極楽、極楽。幸せは結構身近にあるものです。  夫婦二人、友人二人の親しき仲にも演出あり。 テーブルには和ろうそくを灯し、椿もあしらいましょうか。あり合わせの肴も盛りようによっては料亭風。
青菜のおひたしには黄色の菊の花びら一枚を柚子の皮に見立てて。徳利は備前など土味のあるものを選べば、冷めにくく、雰囲気も暖かそうです。 陶器の徳利やぐい飲みは使うほどに艶が出て、手になじむもの。あれこれ器を換えながら、いただくとお酒の味も一層美味になるのではないかしら。  雪もお酒も過ぎると大変ですが、ほどほどならば趣にも百薬の長にもなってくれます。冬野菜たっぷりの鍋と熱燗なら、体も心も芯から温まり、多少の風邪っ気はどこへやら。外はちらちら雪が舞ってきてもここだけはほこほことした居心地の良さ。ほろ酔い気分で友達を招いても、鍋物ならいかようにも対応できます。こんなこともあろうかと、玄関には冬ならではの花、部屋の隅にはスィートピーを和風に飾っておきました。白いラッカーで雪化粧させた玄関の花から部屋へと入れば春の花。温かさが何よりのご馳走とまずは熱燗かけつけ三杯。頬も口元もほどなく解けて、話題は縦横無尽に駆け巡ります。  極寒の頃、つい閉じこもりがちになるからこそ、テーブルの演出を心がけてみてはいかがでしょう。ちょっとしたことから、心って弾むものだと思いませんか?





 
Special Thanks 熊谷賀代子「花工房 KIKI」
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