シックハウスを防ぐ住宅について 


I001

ご質問

1.シックハウス症候群に本当に防げないでしょうか?

2.どのような住宅がシックハウス症候群を起こさないでしょうか?

 

回答

1.シックハウス症候群は本当に防げないでしょうか? 

防ぐことは十分可能だと思います。シックハウス症候群は、1950年代以降に急増してきた問題です。つまり、化学産業の発達とともに住宅設計に対する概念が変化し、それまで人体に有害な化学物質をほとんど含まない日本の伝統的な住宅工法を用いていたのが、施工性向上(接着剤など)、外観品質向上(塗料など)、断熱気密性向上(各種断熱材)、遮音性向上(各種遮音材)、防虫対策、耐久性向上(防錆材、防蟻材、木材防腐材)など人体に有害な化学物質を含む新建材を用いた住宅設計を取り入れてきました。本当は、その際に、化学物質が室内で人体に与える影響を研究した上で新建材を開発していれば、現在のシックハウス問題も大問題にならなかったかもしれません。しかし、他の環境問題でも同じことなのですが、健康に対する影響評価が十分なされないまま、どんどん新しい建材が導入されてきたのが事実です。 

シックハウス問題に対する取り組みは、まだスタートし始めたばかりだと思います。建設省健康住宅研究会では、3化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン)及び3薬品(木材保存材、防蟻材、可塑剤)を優先取り組み物質として検討し、「設計・施工ガイドライン、ユーザーズ・マニュアル」を作成しています。しかしシックハウス問題は、その他多くの揮発性有機化合物(VOC)、細菌、カビなどが関係しています。本当のところは、まだシックハウスの原因については、ほとんどわかっていないのが実状です。1998年末、日本建築学会が、産官学共同で「室内化学物質汚染解明のための研究開発プロジェクト」を発足しました。今後このプロジェクトを中心に解明が進み、シックハウスが発生しない住宅開発が行われていくと思われます。私はこのプロジェクトに期待しています。

 

2.どのような住宅がシックハウス症候群を起こさないでしょうか? 

上述したように、室内空気中の化学物質、細菌、カビなどが健康影響を及ぼさないだけの種類と量(つまり安全なリスクレベル)に抑えることが重要だと思います。もちろん完全にゼロにできればいいのですが、それはまず困難だと思います。なぜならアカマツ、ヒノキなどの自然の木材からもホルムアルデヒドは発生するのです。また、乾燥しいたけやリンゴ、ナシにもホルムアルデヒドは含まれています。 

ですから、建材などから発生する化学物質削減と室内換気とのバランスが重要だと思います。昔の住宅は隙間が多く、自然換気されていたが、最近の住宅は気密性が向上しています。また、たとえ化学物質がゼロになっても、室内換気が不十分で湿気がたまると、カビが発生しますし、細菌も発生します。これらもアレルギー症状を引き起こし、シックハウスの原因となります。どのような住宅がシックハウスを起こさないのか表現が難しいのですが、1つには、室内空気中に健康影響を及ぼすレベルの化学物質、細菌、カビなどが含まれない住宅があると思います。


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