海外でのシックハウス症候群に対する取り組みについて


I008

ご質問 

ヨーロッパでは10年も前にシックハウスは解決されたと言われているようですが、シックハウスは海外ではどのように取り組まれているのでしょうか。

 

回答 

欧米ではシックハウスという言葉はほとんど使われず、室内空気質(IAQIndoor Air Quality)という言葉が使われます。そこで、IAQという観点からお話したいと思います。欧米のIAQの状況は、現早稲田大学の田辺新一先生(昨年はお茶の水女子大学)が昨年執筆された「室内化学汚染」(講談社現代新書、本体640円)に記載されていますので、ご参考下さい。田辺先生は、空調関係の専門家ですが、総じて室内空気質に関してわかりやすく書かれています。

その中から少しご説明しますと、欧州連合(EU)では、半分以上の国がホルムアルデヒドに関する対策が終了しており、居住開始後の最初の数日間は、ホルムアルデヒドの濃度基準を少し越えることがあっても、それ以降は基準値をクリアーするレベルになります。ガイドラインも1980年代に作成され、それ以降変更されていないようです。つまりこの10年間、新しい知見がほとんどないということです。日本では、数年経過しても厚生省のガイドライン値をクリアーできない新築住宅が多いのです。 

さらに私が知っていることを付加すると、日本では総揮発性有機化合物(TVOC)が、一般に竣工直後で約数万マイクログラム/立方メートルあり、数ヶ月経っても数千マイクログラム/立方メートル(外気:約650マイクログラム/立方メートル)にしかならないという報告があります。WHOのガイドラインが300マイクログラム/立方メートルですから、日本がどれ程ひどい状況かがわかります。欧米では、ホルムアルデヒド同様にほぼ対策が行われており、室内空気汚染の目安となる総揮発性有機化合物(TVOC)に関しては問題になっていません。むしろその中の個々の化学物質に関する議論に移行しています。 

IAQに関するアメリカのメーリングリストがあり、私は以前に管理者からお誘いを受けて参加していますが、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物に関する議論はほとんどありません。一酸化炭素、二酸化炭素、鉛、ラドン、カビや菌類、HVAC(室内環境の制御に関わる概念の総称で、暖房、換気、空調の略称)、ペットの臭いなどが議論されています。 

このメーリングリストでは、室内空気質に関する情報のやりとりが、毎日10件から20件ほど行われています。参加者は、IAQに関わるコンサルタント、NGO、企業、科学者、弁護士、一般市民、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)、アメリカ環境保護庁(EPA)の方も参加しています。ご関心があるのであれば、簡単な登録をするだけで無料で参加できますので、下記のアドレスでご確認下さい。言語は英語です。
http://www.onelist.com/subscribe.cgi/iaq


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