シックハウス症候群が医学的に認められないのは?


I015

ご質問

アメリカではシックハウス症候群(シックビルディング症候群)は、 医学的に認められなかったと聞いたのですが、何故でしょうか。また、シックハウス症候群が病名として認められない理由と背景は? 

回答

シックビルディング症候群の原因には、主に化学物質などの化学的因子、カビ・ダニなどの生物的因子などがあります。しかし発症のメカニズムがほとんど解明されていないため、科学的根拠に乏しいとされていました。 

そのため古典的な医学研究者たちには、単なる気の病(心因性の障害)ではないかと考える人たちがいました。例えば、しょっちゅう手を洗わないでいられないという強迫観念にとりつかれている人たちは、少しの手の汚れなどに対して過敏に反応します。 

今でもメカニズムについてはほとんど解明されていませんが、さまざまな臨床データから、その存在は否定できないとされています。 

 

また「シックハウス」という言葉ですが、これは日本だけしか通じない言葉です。また、その定義も定められておりません。住宅の壁の合板から放散されるホルムアルデヒドによって化学物質による過敏症になった個人の方が、シックハウスという言葉を用いて1994年頃からこの問題に取り組み始めました。 

シックハウスという言葉が一般の人たちにはとても受け入れやすい言葉であったため、ここ数年でこの言葉がたちまち広がり、現在では住宅の室内空気汚染に起因して生じる粘膜系への刺激、呼吸器系への刺激、頭痛、倦怠感などの症状に対して、シックハウス症候群という言葉が用いられています。 

そのような背景もあって、いまでも厚生省や一部の専門家は、シックハウス症候群という言葉をほとんど使いません。室内空気汚染による健康影響問題として取り上げています。そして室内空気汚染の中でも現在最も大きな問題である化学物質に起因する症状に関しては、化学物質過敏症という言葉が用いられます。この言葉はアメリカでは多種化学物質過敏症(MCS: Multiple Chemical Sensitivity)と呼ばれています。 

もともと海外では室内空気汚染による健康影響問題に対して、シックビルディング症候群(SBS: Sick Building Syndrome)という言葉が1982年に世界保健機関(WHO)で定義されました。これは欧米で建物(ビル)内の空気汚染によって生じた症状を定義したものです。欧米ではSBSを用いますので、シックハウス症候群(SHSということになります)という言葉は用いられません。欧米のホームページやメーリングリストでは、MCSSBSとして取り上げられています。また、これらの症状の原因となる室内空気質(IAQ: Indoor Air Quality)という言葉も国内では専門家以外に使われませんが、欧米では一般的に用いられます 

付記)2つの同様なご質問に対する回答をまとめて編集しています。


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