自然素材と外装材


I016

ご質問

住宅建築の仕事をしています。いわゆる「自然素材による健康住宅:内装材に自然素材を使用した、通風と採光に配慮した住宅」を目指しています。内装材、外装材など建築材料の全てを自然素材で施工することは、技術的にはもちろん可能ですが、コスト面や施工性、メンテナンス、耐久性などの面からよほどの建築主の理解が必要で、現実的でないように思います。また、真剣に住み手の立場を考えても疑問を感じます。

外装材についてですが、最も頻繁に使用するのが、モルタルの上にペンキを吹付ける方法です。使用する塗料は、アクリル樹脂系の水系塗料を使用しています。また、塗料の下地として有機溶剤を含む撥水剤を吹付けます。それらが人体にどのように影響するのかは私には解りませんが、住宅を人間生活の場としてだけでなく、貴重な資産ととらえれば、自然素材でないということだけで安直に排除していくことに抵抗を感じます。

住宅の外壁を直接触れることは比較的少なく、施工後完全に乾いて固まればほぼ固定化されるのならば、外壁からの放散物が室内空気を汚染することは考えにくいし、現時点では、コストや施工性はもちろん耐久性(外装材の耐久性は、木造建築の場合、防水性に直接関わり、即ち建物自体の耐久性を意味します。)の面からも、これを使用せざるをえないのが実情です。このことをずっと疑問に思いながら設計しています。 

明らかに人体に悪影響なら使用できません。ほぼ問題ないなら推奨できます。現在の一般住宅の場合、外装材は都市部では防火地域の指定があったり、なくても隣家と近接していたりで、防火上の観点からも耐火性を有する材料がふさわしいでしょう。また、メンテナンスにも最も費用を要する箇所といえます。それに外観上も最も強調される箇所です。それだけに材料選定に説得力のある理論が見当たりません。ご意見お聞かせ願えないでしょうか。

回答

とてもご苦労されながら、健康的な住まいを築き上げられている様子がよくわかりました。外壁材に使用する素材について疑問を感じられているようですね。

リスクすなわち健康や環境への影響、ベネフィットすなわち私たちが受ける恩恵のバランスを考えながら品質設計を行うことが大切だと思います。私たちの健康に影響がでないようリスクを低減しながら、さまざまな材料のメリットを最大限に活かしていけばよいのではないでしょうか。

外壁材に水系のアクリル塗料を使用されることも、アクリル材料の耐久性を考慮してのことだと思います。水系のアクリル塗料であれば、有機溶剤系の塗料と比べて、有機溶剤の揮発が低減できますし、乾燥固化後にであれば、揮発成分が室内空気を汚染することは、ほとんどないと考えられます。

ですから自然素材でないというだけで排除するのではなく、有効に活用できる場所や方法を考えればよいと思います。それを実践されているのではないかと感じました。

また、確かに防火地域への建築には不燃材料や耐火材料が必要となり、昨今開発されてきている不燃材料や耐火材料の使用は、私たちの安全性を守る上で必要なことだと思います。

リスクとベネフィットのバランスを考えながら、私たちの健康を損なわないよう化学物質を安全に使用し、快適で健康的な生活環境が築ければと思います。


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