接着剤やメラミン樹脂とホルムアルデヒド


I025

ご質問

 1.接着剤におけるホルムアルデヒドの含有について

ホルムアルデヒドは接着剤に多く含まれていると言いますが、接着剤にも「エポキシ系」・「酢酸ビニル系」・「合成ゴム系」など様々な種類が存在します。接着剤においてホルムアルデヒドはどのような役割を果たしており、どのような接着剤にホルムアルデヒドは含有されるのでしょうか? 

2.MDFや合板のホルムアルデヒド放散について

ホルムアルデヒドは樹脂や合板などにも多く含まれていると言います。JIS(日本工業規格)JAS(日本農林規格)規格において、合板などに含有されるホルムアルデヒド量のランク分け(F0E1)がされていますが、どのような方法及び基準でランク分けが行われているのでしょうか? 

3.メラミン樹脂とホルムアルデヒド

メラミン樹脂などからもホルムアルデヒドが放散すると聞きますが、メラミン樹脂メーカーから当該製品のMSDS(製品安全性データシート)を取り寄せても、ホルムアルデヒドが含有されていることに関する記載がないケースがほとんどです。メラミン樹脂などには本当にホルムアルデヒドは含有されているのでしょうか? また、ほとんど無視できるレベルの量なのでしょうか? 

 

回答

1.接着剤におけるホルムアルデヒドの含有について

ホルムアルデヒドは、水に溶かして約40%の水溶液にしたものをホルマリンと呼びます。ホルマリン漬けという言葉を聞いたことがあるでしょうか。生物の標本を長期にわたり腐蝕させないように保存するために、ホルマリンの中で貯蔵します。つまり、ホルムアルデヒドは防腐剤としての特性を持っています。また、ホルムアルデヒドは、さまざまな薬品や樹脂の原料となる化学物質でもあります。 

以上のことから、ホルムアルデヒドは接着剤において、次の2つの目的で使用されています。 

1)壁紙用合成でんぷん系接着剤において、防腐剤としてホルムアルデヒドが使用されています。これはでんぷんの腐食防止が目的です。ただし、最近ではホルムアルデヒドを使用しないノンホルムアルデヒドタイプが市販されています。 エポキシ系、酢酸ビニル系、ウレタン系、アクリル系、合成ゴム系などは、樹脂が腐蝕しませんので防腐剤を添加する必要はございません。 

2)合板や木質系ボードには各種の接着剤が加工工程で使用されています。これは、木材チップや木材片を貼り合わせて合板や集成材を製造するためです。それらの接着剤の多くは、ユリア樹脂(尿素/ホルムアルデヒド樹脂)、メラミン樹脂(メラミン/ホルムアルデヒド樹脂)、フェノール樹脂(フェノール/ホルムアルデヒド樹脂)が接着剤の原料として使われています。 

これらの樹脂は、例えば尿素とホルムアルデヒドを反応させてユリア樹脂を生成するのですが、その際に反応が100%進行せずに、未反応のホルムアルデヒドがごくわずか残留するため、後に放散する原因となります。また、特にユリア樹脂は、もう1つの特徴として、高温高湿度下で加水分解して原料であるホルムアルデヒドが生成されやすいため、数年経過してもホルムアルデヒドが徐々に放散される原因ともなります。

 

2.MDFや合板のホルムアルデヒド放散について

JISJAS規格によるEンクやFランクは、MDFや合板そのものを測定して評価するのですが、ホルムアルデヒド発生源の大半は、それらに使用されている接着剤です。そしてランク分けは、MDFや合板そのものからの、空気中へのホルムアルデヒド放散量を評価してランクわけします。 

だたし、空気中の放散量を簡単には評価できないので、空気中に放散したホルムアルデヒドを水に溶解し、その水に溶けた量を測定しています。ホルムアルデヒドが水に非常に溶けやすい性質を利用しています。 

具体的には、MDFや合板の小片をデシケーター内(小型の容器)において20度で24時間放置した時に、デシケーター内に放散したホルムアルデヒドがデシケーター内に設置してある水に溶けます。そしてその溶けた量を測定しています。ですから濃度の単位は、水1リットルあたりのホルムアルデヒドの重量(mgl)で表されます。そしてその濃度に応じてランク分けされます。 

 

3.メラミン樹脂とホルムアルデヒド

メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドを反応させて作られます。この合成反応は100%とはならず、未反応のホルムアルデヒドが残留します。楢崎幸範, 「メラミン樹脂製食器からのホルムアルデヒドの溶出」, 食品衛生学雑誌, Vol. 30, No. 1, pp59-68, 1989によると、メラニン樹脂製食器からホルムアルデヒドが検出されています。この報告では、溶出温度、エタノール・酢酸・水などの溶液中への溶出試験、サンドペーパーで表面を損傷させた場合の溶出試験、食器を洗剤で洗浄、水洗、熱湯消毒、熱風乾燥時の溶出量を評価しています。食品衛生法で定められた溶出量の基準値は、4μgmlです。 

ホルムアルデヒドの溶出量は、溶出温度が高く、溶出時間が長いほど、増加傾向を示しています。4μgmlを越える溶出量は、95度において4%濃度の酢酸で溶出した時です。水や10%濃度のエタノールでは、9560分間で数μgmlの溶出が確認されていますが、4μgmlは越えていませんでした。 

また、通常は食品では使用されない50%濃度の酢酸では、22.68μgmlの溶出量が得られています。これほどの強い酸になると、メラミン樹脂が分解し、ホルムアルデヒドの溶出量はかなり増加します。 

この試験の場合、メラミン樹脂製の容器に接触している各種溶液中へのホルムアルデヒド溶出量を測定していますので、JISJAS規格のように空気中へ放散するホルムアルデヒドを評価しているわけではございません。ですからこれらの数値を、EンクやFランクにあてはめることはできません。 

しかしながら、メラミン樹脂からホルムアルデヒドがでることは、理解できます。しかも強い酸に接すると、未反応のホルムアルデヒド以外にも、メラミン樹脂が分解してホルムアルデヒドがでてきます。 

メラミン樹脂メーカーがMSDSにホルムアルデヒド含有の記載をしない理由は、ごくわずかだからでしょう。来年施行されるPRTRという法律では、20011月からMSDSに記載する化学物質の基準として、指定された化学物質が製品中に1%以上含まれる場合(発がん物質は0.1%)と規定されています。ホルムアルデヒドは指定された化学物質ですが、発がん物質ではございませんので、1%未満であれば記載する必要がございません。 

メラミン樹脂においては、ホルムアルデヒドはほとんど反応していますので、1%未満だと思います。ですからMSDSには記載されないのでしょう。だた、強い酸に接すると分解してでてくることは、取り扱いの注意事項等に記載すべきだとは思いますが。 

メラミン樹脂からでてくるホルムアルデヒドが無視できるレベルかどうかは、条件や製品によって異なりますので、一概にはいえません。前述の食品衛生学雑誌の試験データでは、95度において4%濃度の酢酸に接触すると、食品衛生法の基準値を越えます。ただ、通常の使用では、おそらく食品衛生法の基準値を越えることはないと予想されます。しかし、さらに消費者がどのような条件で使用するかを研究し、追加確認する必要はあると思います。


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