塩ビ壁紙からのダイオキシン類生成


I026

ご質問 

知人より聞いた話なのですが、住宅用の壁紙(塩化ビニール)より、経年劣化(太陽がよく当たる場所が高温になる為)等によりダイオキシンが微量ですが大気中に発生すると聞きました。燃やすと発生する事は知っていましたが、上記の理由にてダイオキシンが発生することは有るのでしょうか? 又、発生していた場合、どれくらいの量が発生しているのでしょうか? 又、人体に影響の有る量はどれぐらいで、そのガイドラインはどれぐらいなのでしょうか?

 

回答 

反応温度とダイオキシン類生成量の関係に関する実験によると、275度から360度付近でダイオキシン類が生成し、約320度付近が最大となっています。その際には、塩素原子と炭素化合物、酸素が必要です。 

塩化ビニール樹脂が塩素原子供給源となる場合、塩化ビニール樹脂を燃焼させることによって塩素原子を生成し、なおかつ275度から360度付近で炭素化合物や酸素と塩素原子を反応させる必要があります。 

仮に太陽光による経年劣化で塩化ビニール樹脂から塩素原子が単独で生成することがあったとしても、その塩素原子が炭素化合物や酸素と275度から360度付近で反応しないと、ダイオキシン類は生成されません。 

太陽光で塩化ビニール樹脂の壁紙が高温になったとしても、100度を越えることはないでしょう。 

パルプ製造過程でダイオキシン類が生成するのは、ダイオキシン類の前駆体となるリグニン、ジベンゾフラン、ジベンゾ-p-ジオキシンがパルプ中に存在し、塩素漂白によってそれらの物質が塩素化するからだと考えられています。塩化ビニール樹脂からダイオキシン類の前駆体が経年劣化によって生成されるとは、構造的に考えにくいと思います。 

仮に、我々が予想もしない反応が太陽光の紫外線などによって発生し、ダイオキシン類が生成したとしても、ダイオキシン類は常温では固体物質で、最も毒性が高い2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-p-ジオキシンの融点は305度で、100度を越えたあたりから固体表面からガス化し始めます。ですから仮に何らかの原因で塩化ビニール樹脂にダイオキシン類が含まれたとしても、住宅用の塩化ビニール樹脂の壁紙から大気中に放散する可能性は、通常使用される場所では極めて低いと思います。 

以上のことから、ご質問の状況でダイオキシン類が大気中に放散する可能性は、極めて低いと思われます。


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