妊娠期間中の有機溶剤の使用


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ご質問

記事の中で、「妊娠初期の有機溶剤曝露と出生異常」というのがありましたが、実際にこのようなことがあり得るのでしょうか。妊娠中の友達が、実験で有機溶剤を使用しています。いいアドバイスなどありましたら教え下さい。 

 

回答

私も仕事の関係上、日常的に有機溶剤を使用しています。基本的にいかなる場合であろうと、有機溶剤を使用する場合は、ドラフト内で使用すること、保護メガネを掛けること、保護手袋を着用すること、保護衣を着用すること、できれば有機溶剤用のガスマスクを着用することが原則です。実験作業に際しては、めんどくさいと思われがちなことばかりですが、作業者の健康が最優先です。時にはルーズになりがちですが、自分自身の健康問題として、しっかり考えて作業すべきです。 

私のホームページ中の「妊娠初期の有機溶剤曝露と出生異常」の件ですが、本文は、米医師会雑誌(JAMA)に掲載されています。

 

Sohail Khattak and others, "Pregnancy Outcome Following Gestational Exposure to Organic Solvents," JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION Vol. 281, No. 12 (March 24/311999), pgs. 1106-1109.
http://jama.ama-assn.org/issues/v281n12/abs/joc81429.html

 

この文献によると、妊娠期間中に職業上などで有機溶剤に曝露すると、胎児の奇形などの先天性異常のリスクが増加すると指摘しています。また、妊娠期間中の女性の有機溶剤への曝露は、できるだけ最小限にすべきだと指摘しています。 

最近、胎内で有害化学物質が検出された事例が、たびたび報告されています。昨年へその緒から、内分泌攪乱化学物質であるビスフェノールAやノニルフェノールが検出されました。また、胎内の羊水中から農薬が検出されています。また、発癌物質が多く含まれる、多環芳香族炭化水素に関する胎児への影響も報告されています。 

ご心配されている有機溶剤ですが、やはり人体に良い物質ではありません。感受性が高く、組織が発達の真っ最中にある妊娠中の胎児の曝露は、できるだけ避けた方が良いと思います。母親が曝露するということは、胎児が曝露することに結びつきます。まさに米医師会雑誌が指摘する通りだと思います。実際に胎児に異常が起こるのかということですが、全ての場合に起こるとは言えません。しかし、先の論文の疫学研究で指摘されているように、起こる可能性が増大する可能性があります。 

有機溶剤への曝露をできるだけ最小限に抑えるためにも、以下の保護具を着用することをお勧めします。

落ち着いて、慌てないで対処するようにして下さい。心配し過ぎて、ストレスになることは、かえって健康に良くありません。


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