労働環境でのエタノールによる健康障害について


C004

ご質問

エタノールを用いた仕事を行っている場合、エタノールを吸入するケースがあると思いますが、健康障害はないのでしょうか。また、健康障害の事例はあるのでしょうか。 

無水エタノールでは、吸入による急性症状として、咳、頭痛、嗜眠、疲労感があるというデータがありました。

 

回答 

エタノールを用いた仕事での具体的な健康障害事例は、情報を得ることができませんでした。しかし、おっしゃるように、無水エタノールの健康影響については、国際化学物質安全性カード (ICSC)などに情報が掲載されています。

<参考サイト>
国際化学物質安全性カード(ICSC)日本語版、国立医薬品食品衛生研究所 (NIHS)、化学物質情報部(化学物質名:エタノールのページをご覧下さい)
http://www.nihs.go.jp/ICSC/
 

酒類などには、数%から数十%のエタノールが含まれています。通常は、飲酒によりエタノールが体内に吸収されると、肝臓で約90%がアルコール脱水素酵素などによりアセトアルデヒドに分解されて、顔面紅潮、頭痛、動悸などの症状を引き起こします。アセトアルデヒドはさらに、アセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸に分解され、最終的には酢酸が炭酸ガスと水に分解されます。 

この中のアセトアルデヒドが、アルコール(エタノール)摂取による顔面紅潮、頭痛、動悸などの健康影響を引き起こす主な原因となります。また、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きの強さに個人差があるため、アルコールに強い人と弱い人が生じます。 

エタノールへの曝露経路としては、蒸気の吸入や経口摂取による体内吸収があります。経皮吸収は比較的少ないようです。エタノールは、揮発性が高い化学物質です(沸点79度)。吸入の危険性としては、20℃で気化すると、空気が汚染されてゆっくりと有害濃度に達すると言われています。 

酒類などの製品に含まれているエタノールは、室温でゆっくりと揮発します。職場でエタノールを用いた仕事をしている環境では、揮発したエタノールを吸入により摂取することで、健康障害が発生する可能性は十分にあります。但しそれは、吸入量によります。取扱量が少ないので揮発量が少ない、換気施設や保護具などの安全対策が十分に行われているので吸入量が少ないなどにより、健康障害が事例として報告されていないのかもしれません。 

エタノール(無水、つまり100%)を実験室などで使う場合、エタノールは揮発性が高いので、基本的にはドラフトなどの局所排気施設内で扱います。健康障害の発生は、作業環境中でどれくらいの量のエタノールを吸入するかによります。 


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