ダイオキシン汚染状況に関する海外と国内の比較


C006

ご質問 

私は日本のダイオキシン汚染レベルが、世界中でかなり高い国の一つだと思っています。実際に他国と比較してみると、どれくらいのレベルでしょうか。(日本に留学されている外国人の方からの質問です。)

 

回答 

摂南大学薬学部の宮田教授がまとめられたデータを表1、表2に示します。
(引用:「環境ホルモン&ダイオキシン」化学同人) 

表1 大気中のダイオキシン類の濃度

国名

対象地域

測定年

ダイオキシン類の濃度
(pgTEQ/m3)

日本

大都市域

1990-1996

0.02-1.76 (平均0.65)

日本

中都市域

1990-1996

0.01-1.56 (平均0.56)

日本

バックグラウンド

1990-1996

0.00-0.32 (平均0.06)

アメリカ

都市地域

1989

0.08-0.18

アメリカ

農村地域

1989

0.05

ドイツ

工業地域

1994

0.15

ドイツ

都市地域

1994

0.07-0.35

ドイツ

農村地域

1994

0.03-0.07

イギリス

都市地域

1993

0.04-0.10

スウェーデン

都市地域

1991

0.024

スウェーデン

郊外地域

1991

0.013

ダイオキシン類:ポリ塩化ジベンゾダイオキシン(PCDDs)+ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)

 

表2 食物由来のダイオキシン類一日摂取量

国名

一日当たりのダイオキシン類摂取量
(pgTEQ/day)

日本(大阪)

175.0

ドイツ

130.0

カナダ

140.0

イギリス

125.0

表1、表2から明らかなように、日本のダイオキシン汚染レベルは、海外より高い傾向にあります。しかしながら、この汚染レベルが私たち日本人の健康に影響を与えているかどうかは、大規模なコホート研究などで明確に報告されていません。 

日本のダイオキシン類のTDI(耐容一日摂取量)は、4pgTEQ/kg体重/です。厚生省の発表によると、日本人の平均的な曝露量は2.60pgTEQ/kg 体重/程度と考えられています(下記参考資料)。しかしながら、世界保健機関(WHO)TDI(耐容一日摂取量)は、1- 4pgTEQ/kg体重/と幅をもたせています。その点では、日本人の平均的な曝露量はWHOTDI(耐容一日摂取量)のグレーゾーンに入っています。 

WHOTDI(耐容一日摂取量)を設定したWHOの専門家委員会は、私たちの健康に何らかの影響が出ている可能性が考えられると報告しました。国や産業界は、これまで以上にダイオキシン類を発生させないよう対策を行う必要があります。またそのために、私たちもできる限り協力しなければならないと思います。

 

<コホート研究>

ある集団を、曝露されている人々の集団(コホート)と曝露されていない人々の集団に区別し、追跡期間中、例えば20年間の死亡または疾病の発生を調査し、曝露された人々の死亡率または疾病率を曝露されていない人々のそれと比較する。

 

<参考資料>

ダイオキシンの耐容一日摂取量(TDI)について
http://www.mhw.go.jp/houdou/1106/h0621-3_13.html#no3

厚生省生活衛生局企画課
環境庁企画調整局環境安全課環境リスク評価室


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