プラスチックの使い初めの臭いと可塑剤


C016

ご質問

いただいたファスナー付きの透明の柔らかい入れ物が、ファスナーを開けるたびにいやな臭いがしていました。2,3ヶ月がまんして使っているうちに臭わなくなりました。可塑剤などもあるかと思いますが、使い初めのプラスチックの臭いについて教えて下さい。

回答

プラスチック(高分子)の使い初めの臭いと可塑剤について少しお話します。

1)可塑剤について
可塑剤は、塩化ビニル樹脂を軟らかくするために使用されますが、ポリエチレンやポリプロピレンでは可塑剤は一般的には使用されません。ポリエチレンやポリプロピレンは、密度の調整(低密度化)や、軟らかい成分(たとえばイソブチレン)と反応させることによって軟らかくします。可塑剤を使って軟らかくする樹脂は、塩化ビニル樹脂や塩化ビニリデン樹脂がほとんどといってよいでしょう。

2)臭いについて
臭いについてはたくさんの要因が考えられます。ただし、私も詳細に分析したわけではありませんが、臭いの原因のほとんどは、高分子に使用される安定剤だと思います。

たとえばポリエチレンは、太陽光に当てておくと劣化して白化し、表面がパリパリになります。加水分解といって空気中の湿気と温度によって劣化分解する高分子もあります。

このような現象を防止するために、多くは安定剤が添加されています。その安定剤は、紫外線劣化防止剤や酸化防止剤と呼ばれるもので、単独では臭いがきつくないのですが、高分子を加工成形(高温度がかかる)するときに、一部分解するのではないかと考えています。その分解物には、臭いのきつい低分子化合物が生成される可能性を否定できません。

また、開始剤といって、高分子を作るときに用いられる触媒も、成形加工時に分解物が生じると、臭いのきつい低分子化合物が生成される可能性を否定できません。

このような安定剤は、以前からその影響が心配され、研究や議論が行われていました。特にポリエチレンなどに用いられていたBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)は、発がん性の疑いがあるとして、ここ数年のうちにポリエチレン製品に使用されなくなってきました。

最近では食品に使用されるビタミンEが検討されていますが、ビタミンEを使用すると製品が黄味を帯びるので、消極的なようです。


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