スミチオンの影響


C018

ご質問

スミチオンの胎児に対する影響について教え下さい。現在妊娠15週目です。隣家でスミチオンを散布中、風下で数分間知らずに吸引してしまいました。スミチオンは脳の神経伝達に影響するそうですが、神経伝達物質の発生する妊娠15週目あたりに吸引してしまうことはなにか影響があるのではないかと心配です。病院で伺ったところ、動物実験のなされていない農薬について、その影響は不明であるとの事です。何か少しでも情報があればお教えいただけませんでしょうか。

 

回答

スミチオン(物質名:フェニトロチオン)の胎児への影響に関する報告までわかりませんでしたが、アカゲザルとビーグル犬を用いたフェニトロチオン長期投与(1,0004,000μgkg体重/日)実験における6−8年目の報告では、血清異常や肝細胞の変性・脱落再生などの影響が示されています。

施設内で数種類の農薬を無人散布(フローダストや燻煙剤)した際の気中濃度を測定した報告によると、散布直後で1,00010,000μg/立方メートルとなり、12時間後には数μg/立方メートル以下となっています。また、松食い虫防除のため空中散布した例では、気中濃度が最大100μg/立方メートルとなっています。

人の呼吸量は、成人で平均18.5立方メートル/日とされています。仮に数分間10,000μg/立方メートルのフェニトロチオンを吸引したとすると、5分間の呼吸量が0.064236立方メートルなので、642.4μgとなります。日本人の平均体重50kgを用いて、12.8μgkg体重/日となります。

フェニトロチオンの一日許容摂取量(ADI)は、5μg/kg体重/日となっています。1980年代の報告ですが、フェニトロチオンの一日摂取量は約1μg/日であり、体重50kgでは0.02μg/kg体重/日となります。

ADIは、様々な毒性評価の結果から定められた、一生涯を通じて連続して毎日摂取しても有害な影響を受けることが有りそうもない暴露量です。仮に施設内で無人散布しているところに誤って入室し、5分間吸引したとしても、最大(12.80.0212.82)μgkg体重/日です。翌日以降は0.02μgkg体重/日だとすると、数日でADIを下回ります。

またこの計算は、施設内で燻煙剤などを用いて無人散布した場合の散布直後の最大気中濃度を用いています。窓開放系での気中濃度はさらに低くなり、風下での吸引が部屋の外であれば、さらに気中濃度は低いと予想されます。ですから実際には、1日の試算でもADIを下回っているのではないかと思われます。

以上のことから、ご心配されなくても大丈夫だと思います。


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