ダイオキシンと塩分


E008

ご質問

ラップメーカーは、残飯中の塩分もダイオキシン類発生源となり得ることと、その方が発生源としては塩化ビニリデン製ラップよりも大きいと述べています。試験データなどによる裏付けがあるのでしょうか。 

 

回答

国立環境研究所の安原さんらが、次の1)から4)を燃やした場合のダイオキシン類生成量を比較した実験結果を発表しています。 

1)重油:10 ngNm3以下

2)新聞紙:同上

3)樹木:30 ngNm3以下

4)食塩をまぶした新聞紙:1200 ngNm3以上

*数値は参考書から読みとっているため、およその数値です。 

引用:「しのびよる化学物質汚染」合同出版、国立環境研究所 安原昭夫

 

塩ビ樹脂と新聞紙を一緒に燃やした場合でも、食塩と新聞紙を一緒に燃やした場合と同様に、高い結果が得られたと本の中で述べています。 

そして安原氏は本の中で、次のように述べています。 

「塩ビ工業界では、ダイオキシン生成の主要因が、食塩であるとの見方もされているが、この考え方は正しいのでしょうか。私たちの実験結果は大変興味のあることを教えてくれました。燃焼物の単位質量当たりからのダイオキシン発生量との関係には、おおざっぱに直線関係が見られました。つまり食塩であろうと、塩ビ樹脂であろうと、ごみの中の塩素は、ダイオキシン生成に直接つながっているということです。」 

ダイオキシンの生成機構は、塩素、酸素、炭素、触媒(銅や鉄)が300度付近で数秒間燃焼することです。ですから上記実験結果は、その生成機構を裏付けたデータだと言えます。 

地球上では太古の昔から、ものを燃やすことが行われてきました。ですから自然界には極微量のダイオキシン類が存在しました。発掘された数千年前の人体から、極微量のダイオキシン類が検出されたとの報告もあります。 

問題は、近年産業が発展し、塩素を使った様々な化学製品が私たちの生活や産業に広く普及し、塩素系農薬に不純物として含まれるダイオキシン類、塩素を含むごみの焼却によって発生するダイオキシン類によって、環境中に含まれるダイオキシン類が増えたことにあります。 

残飯中の塩分もダイオキシン類発生源となり得るというメーカーの主張を全く否定することはできません。ダイオキシン類低減対策の1つとして、家庭ごみから塩素を減らさなければなりませんが、私たちは生きていくために塩分が必要です。そのためには塩分以外の塩素、例えば塩素を含む樹脂を家庭ごみから少なくする必要があると思います。また私たちも、できるだけごみを出さないように工夫すべきだとも思います。 


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