海洋汚染について
O002
ご質問
日本における海洋汚染の主な原因は、家庭排水だということが分かり、私達にできることは、家庭排水を減らさなければならないことだ思いました。そこで、いくつか質問があります。
1、家庭排水を減らす以外に私達にできることはないのですか?
2、海の汚染はいつ頃から始まって、今まではどんなふうに変わってきていますか?
3、その汚染に対してどのような対策をしていますか?
4、10年前には方法がないと知ったのですが、今では対策方法があるのですか?(国での法律、企業での開発)
5、水銀、PCDといった汚染物質を取り除く方法はあるのですか?
回答
とても広範囲な質問なので、電子メールで正確に全てをお答えすることが難しいですね。でも海の汚染は全世界へと繋がっているのですから、とても大きな問題です。できる範囲でお話しますが、その答の多くは、環境白書や海上保安白書に掲載されています。アドレスは、次の通りです。
平成11年版 環境白書 総説・各論(全文)
http://www.eic.or.jp/eanet/hakusyo/1999/mokuji.htm
平成11年版 海上保安白書(概要)
http://www.kaiho.motnet.go.jp/info/books/h11haku/mokuji.htm
海洋汚染に限らず、河川、大気、土壌など、環境汚染の現状と保全・対策についての総論が掲載されていますので、是非参考にして下さい。
1,家庭排水を減らす以外に私達にできることはないのですか?
家庭排水だけでなく、家庭からでるごみを減らすことが大切だと思います。家庭から排出されたごみが焼却された場合に問題なのが、排出ガスによる大気汚染、焼却残灰を埋め立てる最終処分場での土壌汚染です。また焼却されない不燃ごみでは、埋め立て処分場での土壌汚染が問題になります。大気汚染中には、有害化学物質が含まれる粒子状の物質が浮遊しています。それらはやがて地上や海上に落下し、海、河川、土壌を汚染します。汚染された土壌に含まれる有害化学物質は、地下水や河川を通じて海洋に流れます。大気・土壌・水環境は、密接につながっているのです。農場で使用された農薬による土壌汚染は海洋まで汚染し、海流にのって北極のアザラシなどを汚染していることが明らかとなっています。
2、海の汚染はいつ頃から始まって、今まではどんなふうに変わってきていますか?
工業技術院資源環境技術総合研究所が、東京水産大学、アメリカ国立食品安全毒性センターとの国際共同研究により、東京湾における海底の泥から難分解性環境ホルモン汚染状況を調査した結果によると、化学産業が発達し始めた1920年-1930年以降に海洋汚染が始まり、毒性の高い農薬やPCB等の人工化学物質が多量に使用されていた1965-1975年頃において汚染が最大となり、その後徐々に汚染が下っています。少し難しい報告書ですが、次の3つの報告書を参考にして下さい。
http://www.nire.go.jp/index_j.html
(報道、プレス懇談会から1999年10月18日の記事へ入って下さい)
http://www.nire.go.jp/index_j.html
(報道、プレス懇談会から1999年1月14日の記事へ入って下さい)
http://www.nire.go.jp/index_j.html
(1999年NIREニュースに入って下さい)
3、その汚染に対してどのような対策をしていますか?
基本的には、法律による規制がもとになります。環境白書が参考になるかと思います。
4、10年前には方法がないと知ったのですが、今では対策方法があるのですか?(国での法律、企業での開発)
法律では、昭和45年の海洋汚染防止法、昭和45年の水質汚濁防止法による排出水の規制、1994年(平成6年)11月に発効した「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)、「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約」(OPRC条約)などの法律により規制されています。1998年1月30日に海洋汚染防止法は改訂(1998年7月1日施行)され、アセトクロールなど新たに15の化学 物質が船舶からの排出で規制されることになりました。
有害化学物質の分解処理に関しては、微生物を使ったバイオレメディエーション技術をさかんに研究しています。基本的には、白色腐朽菌を使って分解する技術が主です。その他、分解遺伝子を組み込んだ大腸菌によるダイオキシン類の分解、食用菌であるマイタケやエノキタケを用いたダイオキシン類の分解などです。
5、水銀、PCBといった汚染物質を取り除く方法はあるのですか?
1) PCB
・紫外線/微生物分解法
原理)紫外線による脱塩素、微生物による二酸化炭素と水と塩酸への分解
処理基準値)0.003mg/kg
処理後残物)培養液
二次処理)なし
・化学処理法(触媒水素化脱塩素化法)
原理)高濃度のPCBを分解する技術、PCB原液をパラフィン系溶剤で希釈し、触媒(Pd/C触媒)の存在下にて、常圧で水素化脱塩素反応を行うことにより、PCBに結合している水素を塩化水素ガスとして取り除き、PCBをビフェニルに変換します。
処理基準値)0.5mg/kg
処理後残物)油類
二次処理)焼却
・BCD(アルカリ触媒分解)法
原理)PCBに水素供与体、炭素系触媒、アルカリを添加してから、窒素雰囲気下、常圧で300−350度に加熱して塩素を取り除く方法。
処理基準値)0.5mg/kg
処理後残物)油類
二次処理)焼却
・超臨界水酸化分解法
原理)超臨界状態の水を用いて、PCBを酸化分解する
処理基準値)0.003mg/kg
処理後残物)酸性水
二次処理)中和
2) 水銀
・加熱処理(600-1000度)による気化法
・硫化鉄と混合し加熱処理(250-300度)による気化方法が最近開発されました。