デンマーク環境保護庁の化学物質政策
2002年6月17日
CSN #241
「2020年までに、デンマークの市場にある製品は、人の健康と環境に対して深刻な影響を与える化学物質を含んでいない。」
2001年10月、デンマーク環境保護庁(DEPA)は、次世代の人の健康と環境を保護するために、「Generation Goal(世代目標)」として、2020年までに問題物質(problematical substances)を排除する目標をかかげました[1]。
現在、EU(欧州連合)では約100,000の化学物質が登録されており、そのうちデンマークの市場で使用されている化学物質は約20,000あります。それらの多くは、私たちの生活に有用な性質を有していますが、人の健康と環境に対して危険な化学物質もかなりあります。
この問題物質としては、表1に示すPBT基準を1つ以上満たすものが選定され、優先リストが作成されます。デンマーク環境庁は、EUで登録されている約100,000の化学物質から約400の化学物質を優先リストの予備リストとして選定しました。そして工業界が、これらの化学物質が優先リストに含まれるべきではないことを科学データで証明できなければ、これらの化学物質の環境中への排出を2020年までに停止しなければなりません。
この予備リストは、問題物質が新しく確認されればリストに追加され、予備リストに選定されたとしても、最初に想定したほど有害でないことが明らかになれば、リストから削除されます。
表1 PBT基準の内容([1]をもとに作成)
項目 |
内容 |
Persistent(残留性) |
徐々に分解するため環境中に残留する物質 |
Bioaccumulable(生体蓄積性) |
動物や人に蓄積する物質 |
Toxic(毒性) |
生殖機能障害、遺伝障害、発がんなど、魚や他の生物に対して高い毒性がある物質 |
また、2001年よりデンマーク環境保護庁は、さまざまな消費者製品中の有害化学物質の調査/分析を行っています。そしてその結果を、デンマーク環境保護庁のWebサイトで報告書として公開しています。現時点で15項目が公開されており、私たちの摂取量と毒性影響量からリスクアセスメントを行っている製品もあります。その一覧を表2に示します。
表2 消費者製品中の有害化学物質調査項目一覧表([1]をもとに作成)
調査番号 |
調査項目 |
No. 1, 2002 |
塩ビ樹脂製品中のフタル酸エステル類と有機スズ化合物 |
No. 2, 2002 |
刺青用顔料の調査 |
No. 3, 2002 |
デンマーク市場における皮革製品中の六価クロム及び三価クロム含有量の調査 |
No. 5, 2002 |
Shrovetide(毎年四旬節の直前にある3日間の懺悔季節)及び舞台用メーキャップ中の化学物質のマッピング(図示) |
No. 6, 2002 |
デンマークの小売店で販売されているキャンドル中の化学成分 |
No. 7, 2002 |
ビーズにアイロンをかけた場合に溶け出す化合物のマッピング |
No. 8, 2002 |
清掃用品及び他の消費者製品中における芳香剤の含有量 |
No. 9, 2002 |
植物抽出成分及びエッセンシャルオイルを含む化粧品中の接触アレルゲン物質の定量方法に対するGC分析法及びGC/MS分析法の有効性 |
No. 10, 2002 |
消費者向け化粧品(自分自身で化粧を行う商品)における化学物質の調査 |
No. 11, 2002 |
天然化粧品における植物性成分 |
No. 12, 2002 |
タンポンからの化学物質のマッピング |
No. 13, 2002 |
生理用ナプキンからの化学物質のマッピング |
No. 14, 2002 |
粘土を熱した時に排出される化学物質のマッピング |
No. 16, 2002 |
金属用洗剤及び研磨剤 |
No. 17, 2002 |
注入剤、ワックス、床磨き製品中におけるパーフルオロオクタンスルフォン酸塩(perfluorooctanesulfonate: PFOS)化合物の分析 |
これらの報告書の内容は、参考資料[1]にあるデンマーク環境保護庁のWebサイトから入手できます。
Author: Kenichi Azuma
<参考資料>
[1]デンマーク環境庁のWebサイト
http://www.mst.dk/homepage/