加熱調理された食品中におけるアクリルアミド


2002513

CSN #236

2002424日、スウェーデン国立食品局(NFA)は、動物実験において発がん性が指摘されているアクリルアミドが、高温で調理されたでんぷんを含む食品中(例えば、ジャガイモやパンなど)において高濃度検出されたと発表しました[1]NFAから発表された測定結果を表1に示します[2]

表1 加熱調理された食品中のアクリルアミド濃度

食品の種類

アクリルアミド濃度 (μgkg)

測定サンプル数

平均値

最小値−最大値

ポテトチップス

1,200

330-2300

14

フライドポテト

450

300-1100

9

ビスケット、クラッカー

410

<30-650

14

パン(かりかりしたところ)

140

<30-1900

21

朝食用シリアル

160

<30-1400

15

コーンフレーク

150

120-180

3

パン(やわらかいところ)

50

<30-160

20

種々の揚げ物(ピザ、パンケーキ、ワッフル、フィッシュスティック、ミートボール、チキンビット、油で揚げた魚、ベジタリアン・シュニッツェル、カリフラワー・グラタン)

40

<30-60

9

 

いずれの食品の原料も、ゆでた場合には検出されておらず、高温で調理されたときに、でんぷんが変成してアクリルアミドが生成されたと考えられています。アクリルアミドは、国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類でグループ2A(人に対して発がん性を示す可能性がある)に分類されており、アクリルアミドを一生涯毎日摂取し続けた場合の発がんリスクは表2のように示されています[3]

表2 アクリルアミドの発がんリスク

組織

発がんリスク(1μgkg体重/日)

アメリカ環境保護庁(USEPA)

1,000分の4.5

世界保健機関(WHO)

1,000分の0.7

ストックホルム大学
(Granath et al. 1999)

1,000分の10

 

表2によると、最もアクリルアミドの発がんリスクを高く概算している組織はストックホルム大学ですが、例えば逆に最も低く概算しているWHOの発がんリスクを用いた場合でも、体重50kgの人が毎日50μgのアクリルアミドを一生涯摂取し続けた場合の発がんリスクは10,000分の7となります。

表1よりポテトチップス中のアクリルアミド濃度が1,200μgkg、フライドポテト中のアクリルアミド濃度が450μgkgなので、約42 gのポテトチップスや、約110 gのフライドポテトを毎日一生涯摂取し続けた場合、それぞれ発がんリスクが10,000分の7となります。実質的に安全域であろうとされる発がんリスクを、1,000,000分の1100,000分の1と考えると、毎日これらの高濃度のアクリルアミドが含まれる食品を摂取し続けると発がんリスクが高くなることがわかります。

このような状況から、WHO2002426日に緊急のコメントを発表し[4]、食品中のアクリルアミドから生じる公衆衛生に対するリスクの範囲を可能な限り早く決定するために、200262527日に国連食糧農業機関(FAO)と協同で専門家会合を開催すると発表しました[5]。そして、2002531日を最終期限として、毒性データ、その発現メカニズムに関する情報、疫学研究データ、食品からの摂取に関する情報、食品中のアクリルアミドの分析方法、加熱調理時の食品中におけるアクリルアミドの生成及び消滅のメカニズムに関する情報、リスクマネイジメント情報などのデータの提供を呼びかけています[6]。そして現時点では、WHOが推薦する基本的な食事のアドバイスが変わることにはならないと発表し、たくさんの果物と野菜を食べ、脂肪分の少ない食品を食べることを勧めています[4]

本報で紹介した加熱食品中におけるアクリルアミドに関する情報は、今後のWHOの情報に注力し、本サイトで取り上げていく予定です。

Author: Kenichi Azuma

<参考資料>

[1] National Food Administration: “Acrylamide is formed during the preparation of food and occurs in many foodstuffs”, April 24, 2002
http://www.slv.se/Download/Document/approvedDocs/engakrylpressmeddelande.htm

[2] National Food Administration: “Analytical methodology and survey results for acrylamide in foods”, April 26, 2002
http://www.slv.se/Download/Document/approvedDocs/engakrylanalysresultat.htm

[3] National Food Administration: “Acrylamide - Cancer studies and comparisons of risk”,April 24, 2002
http://www.slv.se/Download/Document/approvedDocs/engakrylcancerstudier.htm

[4] WHO Geneva: “WHO TO HOLD URGENT EXPERT CONSULTATION ON ACRYLAMIDE IN FOOD AFTER FINDINGS OF SWEDISH NATIONAL FOOD ADMINISTRATION”,Press Release WHO/32, April 26, 2002
http://www.who.int/inf/en/pr-2002-32.html

[5] WHO Geneva: “WHO sets dates for technical consultation on acrylamide in food and requests contributions from experts”, May 7, 2002
http://www.who.int/home-page/

[6] WHO Geneva: “WHO Consultation on the Health Implications of Acrylamide in Food. Call for Experts”,April 26, 2002
http://www.who.int/fsf/Acrylamide/Call_for_Data.pdf


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