子供の健康に対する環境の影響


2002520

CSN #237

200258日から10日にかけて、国連子供特別総会(United Nations Special Session on Children)がニューヨークで開催され、ユニセフ(UNICEF)、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)が共同で作成した約140ページの報告書「新ミレニアムにおける子供たち:健康における環境影響(Children in the New Millennium: Environmental Impact on Health)」が発表されました[1]

この報告書によると、子供の健康やとりまく環境がこれまで10年以上にわたって大きく改善されてきたにも関わらず、環境汚染によるさまざまな疾病によって、世界中で1日平均約5,500人の子供たちが犠牲になっていると報告しました。

国連子供特別総会は、60ヶ国以上の首脳、およそ180か国の政府高官、250人以上の国会議員、その他政治以外の分野から総勢6,000人もの参加者が集まりました。この特別総会の主な目的の1つは、衛生的な施設と安価で安全な飲料水が確保された住まいを増やすことでした。

WHOは、世界中の疾病による苦しみの約3分の1は、環境リスク要因によるものであり、そのうちの40%以上は5歳以下の子供たちだと推算しています。そして子供の健康に影響している環境汚染は、飲料水や食料の細菌汚染による下痢や急性呼吸器感染症(ARI)が特に多く、栄養失調により免疫システムが低下していることが主な要因だと報告しました。

また、子供たちに直接的な影響を及ぼすその他の環境汚染要因として、高濃度の有害化学物質や天然資源の枯渇があり、有鉛ガソリンなどによる環境中の鉛によって慢性的な神経発達障害を引き起こし、農作業で働く数百万人の子供たちは農薬中毒のリスクにさらされていると報告しました。

ユニセフ事務局長のCarol Bellamy氏は、「子供たちはより一層きれいな水が必要であり、これらの憂慮すべき事態は、重要な問題に関して我々がほとんど確認できていないことを示しており、あまりにも多くの子供たちが、きれいな水や衛生施設を利用することによって予防できる疾病の犠牲になっている。」と述べています。

そして国連環境計画(UNEP)Klaus Töpfer事務局長は、2002826日から94日にかけて南アフリカのヨハネスブルクで開催される「持続可能な開発に関する世界サミット(World Summit on Sustainable Development):ヨハネスブルクサミット2002」の中で、子供の環境衛生問題の位置づけを高める必要があると述べています[1]

2002514日、国連のアナン事務総長は、このサミットに対して、1)水と衛生設備、2)エネルギー、3)健康、4)農業生産性、5)生物多様性と生態系マネイジメントの5つの行動提案を発表しました[2]。その中で、きれいな水や衛生設備の確保、有毒で有害な化学物質の影響への取り組みが含まれました。

Author: Kenichi Azuma

<参考資料>

[1] United Nations: “POLLUTION-RELATED DISEASES KILL MILLIONS OF CHILDREN A YEAR SAYS NEW UN REPORT, RELEASED FOR GENERAL ASSEMBLY SPECIAL SESSION ON CHILDREN”, ICEF/1858, SAG/102, UNEP/108, 9 May 2002
http://www.un.org/News/Press/docs/2002/icef1858.doc.htm

[2]United Nations: “UN Secretary-General Names Five Key Areas Where Johannesburg Summit Can Make a Real Difference”, New York, 14 May, 2002
http://www.johannesburgsummit.org/html/whats_new/feature_story.html


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