「遺伝子組み替え作物について」


1999年2月19日

CSN #006 

レイチェルの環境と健康ニュース(#637)より

――我々の意に反したものだ――

1999年2月11日

 (以下要約文)

 

Marc Lappe、Britt Baileyが書いた「AGAINST THE GRAIN」という本は、遺伝子組み替え技術によってアメリカ合衆国に一瞬のうちに農業革命が起こっていること明らかにしている。

 1997年には、アメリカ合衆国の大豆収穫の15%は、遺伝子組み替え種子からの策もととなった。モンサント社の計画が100%達成されれば、来年には100%の大豆が遺伝子組み替え種子からの作物となるであろう(文献1、p5)。同様の状況が綿でも起こっており、とうもろこし、じゃがいも、トマトなどでもやや遅れて開始されるだろう。そしてそれは、歴史上の農業革命に比べて驚くべき速度で進行し、地球全体の生態系に入り込むものと思われる。

 マスメディアは、農業における遺伝子組み替え革命についてほとんど報道しなかった。また、政府は遺伝子組み替え作物に表示を義務づけることもなく、すでに遺伝子組み替え食品が食料品店で販売されている。

 遺伝子組み替え技術は、ある1つの種子に対して新しい特性を付与するために、他の種子の遺伝子情報をその種子の組み込む技術である。これまで遺伝子の組み替えは、同種の遺伝子同士では可能とされてきた。自然界においては、犬遺伝子と猫遺伝子が交わることはなかった。しかしながら科学者は、鱒や蚊から遺伝子を取り出して、トマトに埋め込むことができる。

 米国農務省(USDA)、米国食品医薬品局(FDA)、米国環境保護庁(EPA)の3つの連邦機関は、遺伝子組み替え種子や食品について規制している。これらの機関の幹部らは、遺伝子組み替え技術という新しい技術に対して公平な判断を下さずに、むしろ支援するような言い回しをしている。これらの機関の考え方は以下のようである。

1,農家は遺伝子組み替え技術を用いた種子を使った記録を残さなくても良い。

2,農家や食品製造業者や流通業者から遺伝子組み替え作物を買っている会社は、通常の作物と区別する必要はない。従って消費者は、遺伝子組み替え作物を避けるすべがない。

3,遺伝子組み替え作物やそれを使った食品に対して遺伝子組み替え技術を使用しているといった表示をする必要はない。従って消費者は、食料品店でそれらを選別するすべがない。アメリカ合衆国では、全ての食品に重要成分のリストを表示しているが、遺伝子組み替えに情報についてはその必要がない。

 これらの機関の考え方は2つの重要な問題を表している。

  1. 一般家庭の食卓に遺伝子組み替え食品が急速に拡大してもわからない。
  2. 誰も遺伝仕組みか食品を摂取したことがわからないので、疫学者が健康への影響について追跡調査しようにもできない。

 来年までにモンサントの計画が実行されれば、アメリカ合衆国の大豆種子の100%は、遺伝子組み替え種子になる。アメリカ合衆国のサラダオイルの80%は、大豆から作られる。つまり、来年か再来年には、サラダオイルの大半は遺伝子組み替え技術を用いた大豆から作られたものになる。(文献1、p52)

 最大手であるモンサント、ダウ、デュポン、ノバルティスなどの遺伝子組み替え技術を有するメーカーは、ヨーロッパ、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、インド、中国などの国々で積極的にその技術を展開している。

 この技術のトップメーカであるモンサントは、世界の人口かこのまま増加するのであれば、人類が食糧危機を乗り切るためにも、この技術が必要であると言っている。

 もし遺伝子組み替え技術が世界の食糧危機を救済する目的であるのならば、、モンサントや他のメーカーは、さらに以下の開発をすると思われる。

(a)痩せた土壌でも成長可能な種子

(b)高価な装置や化学肥料や水を用いずに、単位面積当たりに高蛋白を生み出せる植物

(c)より小さい農場でも可能な技術

(d)安価で技術ライセンスの不要な種子

(e)家畜のためでなく人間のための技術として

 遺伝子組み替え作物の技術は、質の高い土壌が必要で、莫大な設備投資がかかり、化学物質の使用が増加するといった問題点をもっている。また大豆の場合、1エーカー当たり通常の作物と比較して10%収穫率が低いという報告がある(文献1、p84)。それは家畜の餌になるが人間の蛋白源にはならない。遺伝仕組み替え技術による農業革命は、人類の食糧危機を救うことはできない。また、それによって殺虫剤の生産が増加する。(文献1、p55)

 モンサントらの遺伝子組み替え作物は、Btと呼ばれる自然界の殺虫剤の遺伝子情報を組み込んでいる。Btは、葉を食べる芋虫を退治するための、自然界で発生する土壌中の有機物である。有機農業者は、合成化学物質による殺虫剤の使用を最小限にし、芋虫による害を防ぐためにBtに頼っている。

 モンサントは、Btの遺伝子情報を取り出し、綿やトウモロコシやじゃがいもに取り入れている。そのため、それが行われた全ての作物はBt遺伝子を含んでおり、Bt毒素が生産されている。

 多くの害虫がBtの毒性に対する抵抗力を身につけるため、Btは10年内にその有用性を失うだろうと、Bt含有作物のマーケティングを担当しているダウ・ケミカル社の科学者は言っている(文献1、p70)。このようなモンサントやダウのような短期利益を得ようとする事業の考え方は、自然界の殺虫剤の有効性を破壊する。

 農業における生態系は、多様性を有していなければならない。これは有機農業の根底にある思想である。

 「参考文献」

[1] Marc Lappe and Britt Bailey, AGAINST THE GRAIN;

BIOTECHNOLOGY AND THE CORPORATE TAKEOVER OF YOUR FOOD [ISBN

1567511503] (Monroe, Maine: Common Courage Press, 1998).

Available from Common Courage Press, P.O. Box 207, Monroe, ME

04951. Tel. (207) 525-3068.


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