妊娠初期の有機溶剤への曝露と子供の出生障害の関係


1999年3月27日

CSN #020

1999年3月23日

情報源:AP通信、シカゴ

職場で有機溶剤に曝露した女性からは、曝露しない女性と比較して、13倍もの重要な障害を持つ子供が産まれるという研究報告が発表された。研究者らは、妊娠初期に有機溶剤に曝露することで、流産、低体重、悪阻(病的つわり)、早産の危険性が増すことを発見した。

それらの有機溶剤は、一般的な工業材や消費材として使われている殺虫剤、接着剤、塗料、ラッカー、クリーニング液などに用いられている有機溶剤である。

この研究によると、研究者や技術者として工場で働いている女性、または化学技術者としてグラフィックデザインや印刷業務を行っている女性においてこの問題が観察された。

この研究を行ったのは、トロントにある小児科病院のSohail Khattak博士であり、水曜日(3/23)に発売された米国医学協会の雑誌に掲載された。

出産に関する顧問医師であるRichard Schwarz博士は、以下のように述べている。「その研究は、有機溶剤と出生障害の危険性に関する関連性を認めるには不十分な研究内容である。また、この研究において観察された女性達は、子供を作ること対して心配事があると相談があった女性から選ばれたことからも、観察対象者の選択方法に疑問がある。しかしその研究結果は、危険信号を発する価値があり、無視すべきではない。さらに検討する必要性があるということを示唆している。」

研究者らは、1987年から1996年までの間、妊娠初期3ヶ月間に有機溶剤に曝露した125人の妊婦を観察した。そして有機溶剤に曝露していない女性と比較した。

125人のうち113人は正常に出産し、8人が流産した。また4人が中絶した。そして、113人のうち13人の女性から産まれた子供に障害があった。しかし有機溶剤に曝露していない女性からは、1つの奇形が見られたにすぎなかった。

有機溶剤に曝露した女性のうち9人は早産であり、有機溶剤に曝露していない女性では、早産だったのは3人であった。また有機溶剤に曝露した女性からは、8人の低体重児が産まれたが、有機溶剤に曝露していない女性から産まれた低体重児は3人であった。

妊娠初期に7ヶ月以上有機溶剤に曝露した16人の女性は、治療が必要なほどの悪阻(病的つわり)の症状で働いていた。一方曝露していない女性ではそのような症状の女性はたった1人だった。

Khattak博士は以下のように述べている。「このような化学物質への曝露は避けるべきである。しかし適切な予防措置がされており、適切な指導が行われていたならば、そのリスクはそんなに大きくはない。」

日本でも女性の化学技術者はたくさんいる。特に、グラフィックス作業を行う作業者には女性が多い。また、研究者には最近女性の進出がめざましく、有機溶剤を用いた実験を日常的に行っている職場環境の女性も増えている。有機溶剤が人体に与える影響は、発癌性などの研究が中心だったが、この研究報告は、妊娠初期の女性が多量に曝露すると、出生異常を引き起こすという新たな危険性を警告するものである。


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