生体に有効なテストステロンと老人の無気力に関する研究


1999年4月5日

CSN #027

人間の内生ホルモンであるテストストロン濃度が老人に及ぼす影響について概説している論文の要約を紹介します。

出典: 臨床内分泌学及び代謝学の雑誌、1999年2月, Vol84.P573-577

紹介記事のアドレス:http://endo.edoc.com/jcem/v84n2/573-abs-frame.html

<要約文>

内生的性ホルモンと共同住宅に住む無気力な老人との相関性について、横断的に区分した地域の人口ベースに研究を行った。1984年から1987年までの間に診療所に訪れた50歳から89歳までの856人の老人が参加した。全量及び生体に有効なテストステロンとエストラジオール、ジヒドロテストステロン濃度を内分泌学研究実験室にある標識免疫検定によって測定した。無気力状態は、BDI法(Beck Depression Inventory: BDI、うなずきや鬱病状態を点数表にしたもの)によって判断した。

生体に有効なテストステロンとエストラジオール濃度は年齢とともに減少したが、全テストステロン、ジヒドロテストステロン及び全エストラジオール濃度は減少しなかった。BDI点数は年齢とともに増加した。また生体に有効なテストステロンが低濃度であり、BDI点数が高い場合に、体重減少や身体活動能力欠乏との間に相関があることが見出された。しかし、喫煙や飲酒との相関はなかった。

線形単回帰あるいは四分位数解析を用いた解析で、年齢、体重変化、身体活動能力それぞれの項目において、BDI点数と生体に有効なテストステロン濃度とは負の相関関係が得られた(どちらの解析手段においても: P=0.007)。また同様の相関が、ジヒドロテストステロンでも得られた(線形単回帰: P = 0.048、四分位数解析: P = 0.09)。

鬱病である25人の男性では、生体に有効なテストステロン濃度が、他の男性よりも17%低かった(P=0.01)。全エストラジオール及び生体に有効なエストラジオールは無気力との相関がなかった。テストステロンの治療は、低濃度の生体に有効なテストステロンを持っている老人の無気力を改善する可能性があることをを示唆している。この仮説を検証するために、試験的な治療が必要である。

英文タイトル:Bioavailable Testosterone and Depressed Mood in Older Men: The Rancho Bernardo Study

出典:The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, February 1999, p. 573-577

著者、所属機関:Elizabeth Barrett-Connor, Denise G. von Mühlen, and Donna Kritz-Silverstein

Department of Family and Preventive Medicine, School of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, California 92093-0607


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