塩ビ製点滴バッグから溶出するフタル酸エステル


1999年4月20日

CSN #035

 

情報源:Natural Health Village

http://www.naturalhealthvillage.com/newsletter/990301/pvc.htm

By Peter Barry Chowka

1999年2月1日、Natural HealthLine

  

病院で薬物投与、点滴、輸血などに用いられる静脈注射用の塩ビ製点滴バッグから溶出するフタル酸エステルについての記事である。 

グリーンピースと人間の健康への影響調査に関して共同作業を行っている、165の米国の市民団体連合組織である「やさしい医療の会(HCWH; Health Care Without Harm)」から警告が発せられた。この連合組織は1996年9月に発足し、現在そのメンバーにはアメリカ看護婦協会、ニューヨークにあるベースイスラエル医療センター(Beth Israel Medical Center)、シエラクラブ(Sierra Club)が加入している。そして警告は、1999年2月23に日に、HCWHによって発せられた。その内容は、「病院で使用されている点滴用バッグと点滴用チューブの約80%が塩化ビニル樹脂(PVC)製であり、患者に投与される薬物や血液中に有毒化学物質が溶出する可能性がある」というものであった。またそれは、プラスティック樹脂の軟化剤として用いられ、可塑剤と呼ばれているジエチルヘキシルフタレート(DEHP)に関連した問題である。点滴バッグやチューブに使用されているプラスティック樹脂において、DEHPは混合されているだけで、樹脂と化学的に結合されているわけではないので溶出する。DEHPは、人間に対する発癌性の疑いのある物質としてアメリカ環境保護庁に認められている。科学者らはまた、DEHPが精子生産に影響を与えたり、心臓、肝臓、精巣、腎臓に対するダメージを与える可能性を示してきた。 

DEHPなどのフタレート系可塑剤は、子供の玩具から溶出することが発見されている。また塩ビ樹脂製玩具は、グリーンピースなどの組織によって子供の健康に危険であると指摘されてきた。グリーンピースによれば、ここ数ヶ月間の話し合いで玩具メーカーの多くは、子供や乳幼児用の塩ビ製品から全てのフタレートを取り除く約束をしてきた。グリーンピースによると、1986年以来DEHPは、発癌性、生殖毒性、子供の口の中で溶出する可能性があるため、乳幼児が口に入れる玩具では使用されないようになっている。 

1999年2月23日にグリーンピースによって発表された調査結果によると、塩ビ製医療器具におけるDEHPの濃度が、塩ビ製子供用玩具で検出された濃度と同じレベル、あるいはそれ以上であった。HCWHによると、塩ビ製医療器具のメーカーは、点滴バッグから溶出するDEHPが、飲料水で規定されている許容値(6ppb)よりも830倍以上の濃度(5ppm)に達する可能性があることを認めた。5億個以上の点滴バッグが毎年アメリカ合衆国内で患者の病気の治療や傷の手当に使用されている。またその中には出産直後の乳児、エイズ患者、慢性疾患患者が含まれている。 

今回のニュース・リリースによると、グリーンピースが数社のトップメーカーから入手した11個の点滴バッグ、注射器、チューブ、カテーテルにおけるDEHP含有量を測定したところ、DEHPが軟化剤として29%〜81%の濃度で使用されていることがわかった。しかしMcGaw社製の点滴バッグだけが塩ビ製でなかったためDEHPが検出されなかった。そしてグリーンピースを含む連合組織は、塩ビ製点滴バッグの代替品は、容易に入手可能で塩ビ製品に対してコスト競争力があるオレフィン製(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)点滴バッグであり、製造メーカーはアメリカ市場の20%のシェアをもつB.Braun McGaw社製1社であるとしている。ある医薬文献では、ある種の癌やエイズの化学療法用の薬に塩ビ製容器を用いることに反対している。なぜならこれらの薬によって、塩ビ製点滴バッグからのDEHP溶出が促進される可能性があるからだ。また生理食塩水やブドウ糖溶液が入った塩ビ製点滴バッグであっても、その容器とそれらの液体が接触することで、連邦安全飲料水法(federal Safe Drinking Act)が定めた飲料水中の許容値に対して800倍以上、つまり5ppm以上のDEHPが溶出する可能性がある。 

対策は簡単である。病院などの医療施設はすでに市場で入手可能な非塩ビ製品に切り替えなければならない。 

1999年2月21日のAP国営通信では以下のように述べられている。「消費者は怖がることはない。塩ビ樹脂製医療器具によって患者に危害がでている証拠はないとアメリカ保健健康省食品医薬品局(FDA)は主張している。FDAによると、人体への曝露に関して最も懸念しなければならないのは、新生児が呼吸のために塩ビ製器具を使うことである。それでもその曝露量は、動物実験で確認した危険濃度のたった1/2である。ほとんどの患者の場合、曝露による摂取量はその数倍小さい。」 

<追加情報>

 

 

 


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