製品安全データシート(MSDS)義務化の概要


2001416

CSN #182

事業者が製品の譲渡等を行うに際し、相手方に対してその製品の性状及び取扱いに関する情報を提供することが義務化されています。その際に提供するデータは、製品安全データシート(Material Safety Data Sheet: MSDS)と呼ばれています。図1に示すように、MSDSの交付は全ての流通過程に関連しており、それぞれ製品の譲渡や販売等を行う相手方に対して交付しなければなりません。

MSDS交付義務を定めた法令は、化学物質管理促進法(PRTR)[1]、労働安全衛生法[2]、毒物および劇物取締法[3]があり、それぞれ交付義務の目的が異なるため、対象物質や対象製品、提供すべき情報の内容が異なります。そのため必ずしも全ての製品において交付義務があるわけではございません。表1に各法令におけるMSDS交付義務を定めた条文の概要を示します。 

図1 MSDS提供の概要図

表1 各法令におけるMSDS交付義務の概要1)

項目

化学物質管理促進法(PRTR)

労働安全衛生法

毒物及び劇物取締法

義務化
施行日

200111

200041

200111

交付義
務化の
目的

相手方における、指定物質の環境への排出量及び移動量の把握と届出、及び化学物質管理の改善を行うための情報提供

相手方において取り扱う労働者の健康障害防止のために実施する、労働者に対する教育や暴露防止策実施のための情報提供

相手方における、保健衛生上の危害防止措置(飛散等防止、廃棄、応急措置など)のための情報提供

対象
物質

令別表第1、第2
(
第一種・第二種指定化学物質)

令別表第31
令別表第9
規則第34条の22

法別表第1、第2、第3
指定令第1条−第3
規則第13条の6

対象
製品

(令第5,6)
対象物質の含有量が1重量%以上 (金属・シアン換算後、特定第一種は0.1重量%以上)の製品

(規則第34条の22)
対象物質の含有量が1重量%以上の製品(金属換算しない)

毒物及び劇物に該当する製品
(
含有量などは物質ごとに異なるので、法、指定令で確認)

対象外
製品

(令第5,6)
1)
取扱過程で固体以外の状態、粉状、粒状にならない製品
2)
指定物質が密封されて取り扱われる製品
3)
一般消費者の生活用品
4)
再生資源、廃棄物

(法第57条の2H12.3.24基発第162)
1)
一般消費者の生活用品
2)
薬事法の医薬品、医薬部外品、化粧品
3)
農薬取締法の農薬
4)
取扱過程で固体以外の状態、粉状、粒状にならない製品
5)
対象物質が密封状態で取り扱われる製品

(規則第13条の6)
1)
一回に200mg以下の劇物を販売、授与する場合
2)
以下の物(令別表第一上欄の物)を生活用に使う一般消費者に販売、授与する場合
・塩化水素又は硫酸を含有する住宅用液状洗浄剤
DDVPを含有する衣料用防虫剤

情報提
供時期

(法第14)
製品を譲渡・提供する時まで
(
省令第6)
製品を譲渡・提供するごと
(
法第14)
通知事項に変更が生じた場合は速やかに相手側に変更後の情報を提供するよう努めなければならない

(法第57条の2)
製品を譲渡・提供する時まで
(
法第57条の22)
通知事項に変更が生じた場合は速やかに相手側に変更後の各事項を通知するよう努めなければならない

(令第40条の9)
該当製品を販売・授与する時まで

通知事項に変更が生じた場合は速やかに相手側に変更後の情報を提供するよう努めなければならない

 

(省令第6)
同一製品を同一相手先に譲渡・提供する場合は、一度交付すれば以後は交付しなくてもよい(相手先から請求された場合を除く)

(規則第34条の25)
同一製品を同一相手先に譲渡・提供する場合は、一度交付すれば以後は交付しなくてもよい

(令第40条の9)
同一製品を同一相手先に譲渡・提供する場合は、一度交付すれば以後は変更がない限り交付しなくてもよい

提供す
べき
情報

(省令第3)
1)
製品名
2)
該当指定化学物質の名称
3)
該当指定化学物質の政令番号(令別表第一又は第二の該当番号)
4)
該当指定化学物質の指定種別(第一種,特定第一種,第二種)
5)
該当指定化学物質の含有量(有効数字2桁で記載)
6)
当方の会社名,住所,連絡先

(法第57条の2、規則第34条の22,4)
1)
名称
2)
成分及び含有量(含有量は10%未満の端数を切り捨てた数値と切り上げた数値の範囲として表記できる)
3)
物理的及び化学的性質
4)
人体に及ぼす作用
5)
貯蔵又は取扱い上の注意
6)
流出その他の事故が発生した場合の応急措置

(規則第13条の8)
1)
情報を提供する毒物劇物営業者の氏名・住所(法人の場合は名称及び主たる事務所の所在地)
2)
毒物又は劇物の別
3)
名称、成分及びその含有量
4)
応急措置
5)
火災時の措置
6)
漏洩時の措置
7)
取扱い及び保管上の注意

 

7)製品の漏出時の措置
8)
製品の取扱い上及び保管上の注意
9)
製品の物理的・化学的性状
10)
製品の安定性及び反応性
11)
製品の有害性
12)
製品の暴露性
13)
製品の廃棄場の注意
14)
製品の輸送上の注意

7)当方の会社名・住所

8)暴露の防止及び保護のための措置
9)
物理的及び化学的性質
10)
安定性及び反応性
11)
毒性に関する情報
12)
廃棄上の注意
13)
輸送上の注意

情報
提供
手段

(法第14条、省令第2)
1)
文書の交付
2)
磁気ディスクの交付、FAXなど相手方が承諾した方法

(法第57条の2、規則第34条の23)
1)
文書の交付
2)
磁気ディスクの交付、FAXなど相手方が承諾した方法

(法第40条の9、規則第13条の7)
次のいずれかの方法で、邦文で行わなければならない
1)
文書の交付
2)
磁気ディスクの交付、FAXなど譲受人が承諾した方法

1)各法令のMSDS交付義務を定めた部分を抜粋。詳細は、各法令を参照(PRTRは参考文献[1]、労働安全衛生法は参考文献[2]毒物及び劇物取締法は参考文献[3])。

MSDSの内容を判断する場合、化学物質の特性に対する専門的な知識を必要とするため、そのような知識を有していないものが受け取った場合、その判断には注意が必要です。受け取ったMSDSの内容について判断しかねる場合や疑問が生じた場合には、交付元の事業者か専門家に問い合わせ、正しく理解する必要があります。

Author: Kenichi Azuma

<参考資料>

[1] 環境庁,PRTR(環境汚染排出物質移動登録)について」
http://www.eic.or.jp/eanet/prtr/risk0.html

[2] 安全衛生情報センター,「労働安全衛生法」
http://www.jaish.gr.jp/anzen/html/select/anhr00.htm

[3] 国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部,毒物及び劇物取締法
http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/dokugeki.html


「住まいの科学情報センター」のメインサイトへ