欧州連合によるクレオソートの規制強化


20011217

CSN #217

木材防腐用(注入、塗装)として、クレオソートが、鉄道用の枕木、木製の電柱、公園等の屋外で使用する木製遊具、屋外用ガーデニング家具などに使用されています。クレオソートは、コールタールを蒸留して得られた留出油(200400℃)から、ナフタレンやタール酸等を回収し、その残りの成分をさらに用途に応じて調整した油状液体で、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾ[a]ピレン、高級フェノール類などが含まれています。

クレオソートによる健康影響としては、眼・皮膚・気道への刺激作用があり、国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類では、グループ2A(人に対しておそらく発がん性がある)に分類されています。

クレオソートは、常温での蒸気圧は低いですが(沸点194-400度、20度蒸気圧20-200Pa;抽出量により異なる)、刺激性等の急性影響、発がん性等の慢性影響が懸念される化学物質であり、その取り扱いには十分注意しなければなりません。

20011026日付の欧州委員会(EC)プレスリリース[1]によると、ECはクレオソートの消費者への販売を禁止する新しい指令を採択しました[1][2]。その理由は、クレオソートに含まれているベンゾ[a]ピレン(BaP)は、これまで考えられていた以上に発がんを生じる可能性が大きいことが、ECからの依頼で行った環境毒性科学委員会(CSTEE)による最新の研究で報告され、欧州連合(EU)の科学委員会は、現在の法律で定められた許容濃度より低い濃度でも許容できない発がんリスクがあると決断したからです[3]。禁止は遅くとも2003630日までに実施される予定です。

また、クレオソートのBaP含有濃度が10分の1に削減されるため、クレオソートで処理された木材の工業用途への使用が大幅に制限され、ガーデン家具など肌に触れるリスクがあるところへは、クレーソートで処理された木材の使用禁止が保証されるであろうと発表しています。

以下に、EUが採択したクレオソートの規制内容を示します([3]をもとに作製)。

表1 規制対象物質

化学物質名称

CAS No.

コールタールクレオソート

8001-58-9

クレオソート油

61789-28-4

留出物 (コールタール)、ナフタレン油

84650-04-4

クレオソート油、アセナフテン小片

90640-84-9

留出物(コールタール)、上澄み

65996-91-0

アントラセン油

90640-80-5

タール酸、石炭、原油

65996-85-2

木クレオソート

8021-39-4

アルカリ性低温タール油

122384-78-5

 

2 規制概要の要約

No.

概要

1.

木材処理への使用禁止、及び処理木材の市販禁止

2.

ただし次の場合は使用可能

1)

工業用木材処理に使用され、化学物質含有濃度及び包装表示が次の基準を満たすこと

  • ベンゾ[a]ピレン含有濃度50ppm未満(質量)
  • 水抽出フェノール含有濃度3%未満(質量)
  •  20リットル以上の容器で市販
  • 消費者への販売禁止
  • 工業用に使用限定する旨のラベル表示

2)

1)の基準を満たす場合は、鉄道用枕木、送電用の電柱、電気通信用の電柱、柵、農業目的(木製支柱)、港、水路など工業用での使用(処理用の製品、処理済みの製品)に限って市販可能

3)

この指令が適用される前に表1のリストにある化学物質で処理された木材は再利用可能

3.

.-2)、2.-3)については次の用途への使用禁止

  • 建物内部(いかなる目的であろうとも)、玩具、遊び場
  • 頻繁に皮膚に触れる可能性がある、公園、庭、屋外レクレーション施設、屋外レジャー施設
  • ピクニックテーブルなどのガーデニング家具製品
  • 栽培用の代用容器、人間や動物が消費する原料・中間製品・最終製品が直接接触する梱包材、これらの製品を汚染する他の材料に関する製品、使用、再処理

 

2から明らかなように、ごく限られた用途での使用が可能ではありますが、ベンゾ[a]ピレンの含有濃度規制強化などの措置がとられます。私たちが触れる可能性がある身近な用途に対しては使用禁止となりますので、私たちの健康に対するリスク削減として大きな効果をもたらすことになるでしょう。

Author: Kenichi Azuma

<参考文献>

[1] Europe Commission, “Dangerous preparations: Commission directive restricts creosote applications”, IP/01/1500, Brussels, October 26, 2001
http://europa.eu.int/rapid/start/cgi/guesten.ksh?p_action.gettxt=gt&doc=IP/01/1500|0|RAPID&lg=EN

[2] Environment News Service, “Europe Bans Creosote by 2003”, November 1, 2001
http://ens-news.com/ens/nov2001/2001L-11-01-04.html

[3]THE COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES,Official Journal of the European Communities,COMMISSION DIRECTIVE 2001/90/EC, October 27, 2001


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