過去を振り返り未来を守る−アメリカ環境保護庁−
2001年1月8日
CSN #168
アメリカ環境保護庁(EPA)は、1970年12月2日に誕生しました。大気汚染防止法(Clean Air Act)、水質汚染防止法(Clean Water Act)、スーパーファンド(Superfund)など、これまでさまざまな取り組みを行ってきました。2001年新たな世紀を迎えるにあたり、「Remember the Past – Protect the Future: 過去を振り返り未来を守る」という題目の報告書を2000年4月に発表しました[1]。この報告書は、未来へリスクを残さないように、1970年から2000年までの30年間を振り返ろうという内容となっています。
この報告書から、アメリカ環境保護庁Carol M. Browner長官のコメントを引用します[1]。
「EPAは、川に火がつき、都市が濃い煙の雲で覆われた30年前に誕生した。我々はそれ以来、著しい進歩を遂げた。だからといって我々は、立ち止まることはできない。環境と公衆衛生を守る我々の使命に終わりはない。新たな挑戦が、新たな時代の到来と同様に、地平線のむこうにぼんやり姿を現している。我々は、新たな夜明けや輝く太陽とともに、きれいな空、きれいな水、そして我々の家族が良好な健康に恵まれるように、我々の仕事を確実に継続しけなければならない。」
表1 アメリカ環境保護庁の歴史([2][3]から主な出来事を抜粋)
年 |
出来事 |
1970年 |
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1971年 |
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1972年 |
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1973年 |
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1974年 |
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1975年 |
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1976年 |
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1977年 |
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1978年 |
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1979年 |
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1980年 |
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1981年 |
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1982年 |
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1983年 |
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1984年 |
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1985年 |
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1986年 |
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1987年 |
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1988年 |
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1990年 |
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1991年 |
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1992年 |
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1993年 |
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1994年 |
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1995年 |
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1996年 |
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1997年 |
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1998年 |
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1999年 |
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2000年 |
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表1に示すように、EPAの30年の歴史において、大気汚染防止法(CAA)、水質汚染防止法(CWA)、海洋投棄法(ODA)、飲料水安全法(SDWA)、毒性物質規制法(TSCA)、包括的環境対応補償責任法(スーパーファンド: CERCLA)など、さまざまな法律が制定されました。そして1990年代には国民の「知る権利」を重要視し、有害物質排出目録(TRI)が始動しました。TRIによって、地域住民は、自分たちが生活している地域や周辺工場からの有害物質排出量を把握できるようになり、市民レベルでの提言を行いやすくなりました。日本でも同様に、環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)が2001年4月から始動しますが、アメリカのTRIがモデルとなっています。
またこの30年間で、有機塩素系殺虫剤であるDDT、ヘプタクロル、クロルデン、絶縁油などに使用されたポリ塩化ビフェニール(PCBs)など、有害性の高い化学物質の使用が禁止され、有鉛ガソリンも段階的に削減されました。
この30年間には、いくつかの大きな事件も発生しました。ニューヨーク州ラブカナルでは、廃棄物埋立場跡地に居住する住民に健康被害が発生し、農薬、重金属、ダイオキシン類など80種類以上の有害化学物質が検出され、学校や300以上の住宅が取り壊されました。また、スリーマイル島の原子力発電所事故、オゾンホールの発見、酸性雨による森林被害などが起こりました。さらに最近では子供の健康影響について、特に喘息の増加を懸念しています。
アメリカ環境保護庁(EPA)は、21世紀への挑戦について、次のように報告書の中で述べています。
「私たちの生活の質を維持しながら、どのように改善していくかが重要であり、1970年代にあった「新車、大きな家」という考えではない。きれいな空気・きれいな水・開放空間・安全で健康的な環境、これらと産業成長のバランスをとるという概念へと進化すべきである。」
Author:Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] EPA
902/R-00-001, US Environmental Protection
Agency (EPA), ”Remember the Past;
Protect the Future.” April 4, 2000
http://www.epa.gov/region02/epa30/
[2] Environmental
Protection Agency (EPA) Timeline
http://www.epa.gov/history/timeline/index.htm
[3] The Official
EPA 2000 Time Line
http://www.epa.gov/earthday/timeline.htm