オゾン式空気清浄機と健康影響
2001年7月2日
CSN #193
オゾンは強い酸化作用のある化学物質で、高濃度のオゾンに曝露すると、眼、粘膜、上部気道を刺激し、ヒトの呼吸器機能に影響を及ぼします[1]。そのためWHOの空気質ガイドラインでは、8時間平均値で120μg/m3のガイドラインが定められています[2]。また、オゾンの強い酸化作用は、殺菌、脱臭、脱色などに利用できることから、フランスでは1906年から飲料水の消毒処理に利用されており、現在では最も一般的なオゾン利用法となっています[1]。
また近年では、オゾン発生器が組み込まれた空気清浄機(以下、オゾン式空気清浄機)が市販されています。これは、オゾンの強い酸化作用を用いて、空気中の有害化学物質や細菌などを除去しようとするものです。しかしながら、その効果が科学的に十分実証されているとはいえず、この問題に関してアメリカ環境保護庁(USEPA)が、オゾン式空気清浄機メーカーからの情報と、これまで報告された科学文献をもとに、評価を行いました[3]。
オゾン式空気清浄機メーカーは、室内での使用に対して、人の健康への安全性と、室内空気汚染に対して効果的であると述べてきました。また、販売メーカーは、アメリカ連邦政府がオゾン式空気清浄機を室内空間で使用することに対して、承認してきたと述べています。しかしながら、アメリカ政府機関は、高濃度のオゾンは人の健康に問題を生じるため、そのような承認は行っていないと述べています。つまり、人の健康に影響を与えない低いオゾン濃度によって、室内空気汚染に対する効果があるかどうかの確証が得られておらず、その関係に焦点が当てられていました。
表1 アメリカ連邦諸機関におけるオゾン濃度基準([3]をもとに作成)
健康影響 |
リスク要因 |
健康基準値 |
1) 肺機能低下 2) 喘息の悪化 3) 喉への刺激と咳 4) 胸痛と息切れ 5) 肺組織の炎症 6) 呼吸器感染率の増加 |
1) オゾン濃度の増加 2) 長時間曝露の持続 3) 呼吸回数が増える 活動(運動など) 4) 以前に肺疾患経験 がある(喘息など) |
1) 食品医薬品局(FDA) 室内濃度0.05ppm以下 2) 職業安全衛生管理局(OSHA) 8時間平均値で0.10ppm以下 3) 国立労働安全衛生研究所(NIOSH) 随時最大0.10ppm以下 4) 環境保護庁(EPA) 最大8時間平均値で外気濃度 0.08ppm以下 |
アメリカ環境保護庁の報告書[3]によると、オゾン式空気清浄機で室内空気汚染を効果的にコントロールできるかについては、これまで得られた科学的知見では、健康基準値を超えないオゾン濃度では、室内空気汚染物質はほとんど除去できず、臭いの原因となる多くの化学物質を有効に除去できないことを示す証拠があること、また、その濃度では、ウィルス、細菌、カビなどの生物汚染源を有効に除去できないと報告しています。
そして、室内空気のオゾン濃度には多くの因子が影響するため、オゾン式空気清浄機を取扱説明書通りに使用していても、扉の開閉、部屋の大きさ、空調の使用状況などによって、健康基準値よりも高いオゾン濃度に達成する可能性があり、例えばアメリカ環境保護庁が行った研究によると、扉を閉め切った状態で、最も多くオゾンが発生する強設定でオゾン式空気清浄機を作動させた場合、0.20-0.30ppmのオゾン濃度を示す商品があったと報告しています。
これらのことからアメリカ環境保護庁は、室内空気汚染のコントロールが証明された方法を使用するよう勧告しています。アメリカ環境保護庁の報告書で解説されている方法を以下に示します[3][4]。
1) 汚染源のコントロールと除去
この方法は、最も効果的な方法である。室内空気汚染の原因となる商品や材料の使用を最小限にする。生物汚染源を最小限にする(湿度及び湿気制御、湿気のある表面を時々清掃及び消毒することを含む)ために、正しい衛生習慣を使用すること。
2) 換気により外気を導入し、汚染物を削減または排出する
この方法も効果的で、一般的に使用される。換気方法は、汚染源に近いところに排気ファンを設置すること、機械換気システムの外気の取り込み量を増やすこと、窓を開けることなどを含む。
3) 空気清浄効果が証明された方法を使用
一般的には、この方法だけでは十分とは考えられないが、汚染源のコントロールや換気を補う目的で時々使用される。空気浄化フィルター、プラズマ式空気清浄機、イオン式空気清浄機が、空気中の微粒子を除去するためによく使用される。また、汚染源のコントロールや換気が不十分な場合、ガス状の汚染物を除去するために、ガス吸着剤が時々使用される。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1]入江建久、「IAQ専門委員会報告(前半)」空気清浄, Vol.34(5), p357-405, 1997
[2]World Health
Organization (WHO), Geneva, “Air quality guidelines”, December 10,
1999
http://www.who.int/peh/air/Airqualitygd.htm
[3] United States
Environmental Protection Agency (USEPA), “OZONE
GENERATORS THAT ARE SOLD AS AIR CLEANERS: An Assessment of
Effectiveness and Health Consequences”,
April 4, 2001
http://www.epa.gov/iaq/pubs/ozonegen.html
[4] United States Environmental Protection Agency (USEPA),United States Consumer Product Safety Commission Office of Radiation and Indoor Air, “The Inside Story−A guide to Indoor Air Quality−”, EPA Document # 402-K-93-007, April 1995