汚染物質のない世界で生きるための基本的人権

−国連環境計画(UNEP)


2001723

CSN#196

20世紀以降の急速な産業の発達により、私たちの生活環境はそれまでとは一変し、より便利で豊かになった反面、さまざまな環境汚染問題が生じています。私たちは、生命や身体に対して健康で安全な生活を送る権利を持っています。19481210日に行われた第3回国連総会で採択された世界人権宣言の第3条を以下に示します[1] 

世界人権宣言3

「すべての人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。」

 

2001427日にスイスのジュネーブで開催された国連人権委員会(United Nations Commission on Human Rights)のセミナーは、初めて環境と人間の間の結びつきについて議論し、「すべての人は、有害汚染物質と環境悪化のない世界で生きる権利を有する。」との結論を下しました[2][3]

このセミナーは、国連人権高等弁務官のMary Robinson氏と国連環境計画(UNEP)Klaus Toepfer事務局長が、環境と人権の原則をどのように強化するかについて探索するために組織化したもので、Klaus Toepfer事務局長は、その歴史的な動きを歓迎し、次のように述べています[3]

「世界人権宣言に記された基本的な権利の多くには、重要な環境のディメンジョン(空間スケール、時間スケール、現実性スケールなどの環境条件)が含まれている。生命・健康・適切な食料と住まい・伝統的な暮らしと文化への基本的権利を人々が享受するための範囲を決定するために、環境条件は明らかに役に立つ。また、自然環境を汚染・破壊する人々は、自然に対して罪をもたらすが、人権をも妨害しているということを認める時代である。堕落した、あるいは汚染された環境において、人権を守ることはできない。生きるための基本的人権が、土壌の浸食、森林伐採、有害物質や有害廃棄物への曝露、汚染された飲料水によって脅かされている。このような理由から、我々は、生物多様性・気候変動・砂漠化・化学物質に対する環境協定の実行が、人権保護に大きく貢献できると信じている。我々は、法の遵守及び施行を含め、人権の環境ディメンジョンに対して取り組み続ける国連人権委員会の作業を歓迎するであろう。」

 

国連人権委員会のセミナーは年1回開催されており、次の開催は20023月に予定されています。今回のセミナーの結論は、次回20023月に議論される予定です。 

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(UNCED)地球サミット:リオ地球サミット」では、「持続可能な開発:Sustainable Development」が提唱されました。そして、2002年の9月に南アフリカのヨハネスブルクで「持続可能な開発に対する世界サミットthe World Summit on Sustainable Development」が開催され、この10年間の持続可能な開発への前進に対する評価が行われます。その評価の中に、「汚染物質のない世界で生きるための基本的人権」も含められる予定となっています。

Author: Kenichi Azuma

<参考文献>

[1] Office of the High Commissioner for Human rights, Universal Declaration of Human Rights,December 10, 1948
http://www.unhchr.ch/udhr/lang/jpn.htm

[2]United Nations Environment Programme (UNEP), Living In A Pollution-free World A Basic Human Right”, UNEP News Release 01/49, April 27, 2001
http://www.unep.org/Documents/Default.asp?DocumentID=197&ArticleID=2819

[3] Environment News Service (ENS), LIVING FREE OF POLLUTION CALLED BASIC HUMAN RIGHT”, April 30, 2001
http://ens.lycos.com/ens/apr2001/2001L-04-30-09.html


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