クリーン・プロダクション

1999年6月7日

CSN #061

１９９９年５月１３日、２０日のレイチェル・ウィークリー情報をもとに、クリーン・プロダクションの概要について紹介します。、クリーン・プロダクションは、１０年以上前に米政府機関、産業界、環境団体などにより、持続可能な製品に関する新しい概念として開発されたものでしたが、１９９９年４月にカナダのクリーン・プロダクション・アクション（Clean Production Action：ＣＰＡ）という組織が「クリーン・プロダクション市民ガイド（CITIZEN'S GUIDE TO CLEAN PRODUCTION）、著者：ビバりー・ソープ(Beverley Thorpe) 」を発表しました。下記にその概要を紹介します。

＜情報源＞

Rachel-Weekly #650, #651 ---May 13, 20 1999---,　その他

＜編集発行人＞

ピーター・モンタギュ (Peter Montague)

環境調査財団 (Environmental Research Foundation)

Fax (410) 263-8944, E-mail: erf@rachel.org

＜目次＞

第１章　クリーン・プロダクションの定義

第２章　カナダＣＰＡによるクリーン・プロダクション市民ガイドの概要

１，クリーン・プロダクションとは

２，クリーン・プロダクションの手法

３，クリーン・プロダクションの４要素

４，クリーン・プロダクションの基準

５，ライフ・サイクル・アセスメント（ＬＣＡ）の問題点

以下本文

第１章　クリーン・プロダクションの定義

「クリーン・プロダクションとは、単に生産課程の問題だけでなく、使用課程も含めたすべての段階でクリーン化の思想を織り込むことである。」

第２章　カナダＣＰＡによるクリーン・プロダクション市民ガイドの概要

１，クリーンプロダクションとは

• 工場でクリーンな方法で製品を作ることではない。
• 製品設計手法と消費において、どのようなエコロジー上の問題が発生するかを検討する全体論
• 持続可能な原材料やエネルギーの使用法を提供
• 製品のライフサイクルに循環概念を定着
• 原材料選定、システム設計、製品設計に予備的（事前警戒的）アプローチを実行
• 製品構想段階で最初に必要性を問う
• 耐久性付与、再利用を考慮した製品設計
• エネルギー、水、原材料の使用を最小限化
• 生産プロセスにおいて、無害で安全なインプット（エネルギー、材料など）を使用
• エコロジー上安全な材料はリサイクルする
• 製品寿命と品質を維持しながら原材料を節約し消費を削減
• 製品の品質が持続可能であることを保証
• 生物多様性、社会多様性を保護する
• 最終的にエネルギー、原材料、資源使用の最小限化を行い、持続性のある製品設計、持続性のある生産を行い、プロセス中には再利用可能な廃棄物を産出するよう設計

２，クリーンプロダクションの手法

クリーンプロダクションは、社会における材料の流れを見るシステムを第一歩とする。次に、製品を使用開始してから使用し終わるまでのライフサイクルにおいて何が起こるかを考慮する。

• 原材料からどのようにして製品が生まれるかの製造工程
• 製造工程に沿って発生する廃棄物
• どのような材料から製品が作られるか（原材料、副資材、エネルギー等）

３，クリーンプロダクションの４要素　

１）予備的（事前警戒的）アプローチ

環境や人間の健康に有害な脅威が起こる場合、原因と結果の関係が科学的に十分に解明されていなくても予備的（事前警戒的）アプローチが行われる必要がある。　

２）予防アプローチ

例えば、安全にリサイクルや堆肥化できる材料を用いた有害のない製品を設計することによって、ある工程で廃棄物が大量発生することを避けるプロセス及び製品設計ができる。　

３）民主的手段

労働者、消費者、コミュニティなどの産業活動への影響を考慮し、クリーンプロダクションは、生産から消費までの製品連鎖の中で、労働者と消費者の十分な関わり合いを実行する。　

４）統合アプローチと全体論的アプローチ

社会は環境資源の使用及び消費に統合アプローチを採用しなければならない。私たちが購入する製品について、原料メーカー、エネルギーメーカー、生産者によってアクセス可能な情報入手手段をもつ必要がある。　

この情報へのアクセスは、持続可能な生産と消費のための意志決定に役立つ。統合は媒介物と環境間、労働者と消費者間でリスクをシフトしない全体論的アプローチを意味する。そして現在の問題に取り組んでいる間に、新たな問題を作らない。−例えば殺虫剤代替として開発された遺伝子組み替え作物−。

４、クリーン・プロダクションの基準　

１）食品でのクリーン・プロダクション・システム

• 有害でない
• エネルギー効率が良い
• 可能な限り再生材料を用いて生産し、元通りに補充され再び用いられる。
• 再生不可能な材料から作られた製品は、有害でない方法で効率的にエネルギーとして再加工される。

２）製品における基準

• 耐久消費財、再生可能
• 簡単に廃止、修理、再構築可能
• 再利用、流通過程においてリサイクル可能な最小包装仕様を用いる　

３）クリーン・プロダクションにおいて最も重要なこと

• 全ライフサイクルを通じて非汚染
• 自然と文化において多様性を維持
• 将来のニーズを見越した生産能力をサポート　

４）クリーン・プロダクションのライフ・サイクルに含まれる段階

• 製品設計、プロセス設計
• 原材料選定、生産
• 製品製造、組立
• 消費者での製品使用
• 製品の寿命終了時まで使用材料を管理保存

５，ライフ・サイクル・アセスメント（ＬＣＡ）の問題点　

ライフ・サイクル・アセスメント（ＬＣＡ）は、現在最も広く取り組まれている環境問題のための研究であり、各種の製品に関して「ゆりかごから墓場まで」、つまり材料資源採掘から製品廃棄までの全過程における環境影響評価を行うツール。　

ＬＣＡは製品影響評価と設計最適化を可能にするものと特徴づけられているが、個々の環境影響を評価する詳細なデータが不足しているのと、全体としての評価をする上で多くの要因間の重み付けが困難であるなどといったことから、広範囲の協力体制が望まれている。　

原材料購入時、プロセス設計及び改良、製品出荷承認を行うにあたり、環境影響評価を行うことが可能。

以下の点においてＬＣＡは完全ではない。　

• 個々の環境影響を評価する詳細なデータが不足しているため、化学物質の科学的根拠に基づくリスク影響評価を行うにあたり落とし穴が生まれる。
• ＬＣＡは、材料やエネルギーの再利用といった社会基準要素はない。つまり、材料やエネルギーの流れを解析する場合、全ての仮定を想定して最大使用量を定めることが困難と思われる。労働者や消費者の健康影響評価は、最大使用量からの環境影響評価にある程度依存する。

＜参考文献＞　

[1] Beverley Thorpe, CITIZEN'S GUIDE TO CLEAN PRODUCTION

(Montreal, Canada: Clean Production Action, April 1999).

Available from Clean Production Action, 5964 Avenue Notre Dame

de Grace, Montreal, Que, Canada H4A 1N1; tel: +1 (514)484-4207;

fax: +1 (514)484-2696. E-mail: bthorpe@web.net.

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