ベルギーダイオキシン汚染情報


1999年6月16日

CSN #065

ベルギーダイオキシン汚染問題に関する情報を、Dioxin-Lメーリングリストから入手しましたのでお伝えします。汚染源の推定、汚染濃度などが紹介されています。また、関係者のコメントを抜粋しています。(1999年6月16日)

 

<情報元>

ニュー・サイエンティスト, 1999年6月12日号

(New Scientist, 12 June 1999)

 

化学技術ニュース, 1999614日号, Vol77, No 24

CHEMICAL & ENGINEERING NEWS, June 14, 1999 Volume 77, Number 24

 

<概要>

ダイオキシン汚染が発見された食物には、高濃度ポリ塩化ビフェニール(PCBs)が含まれていることが明らかになった。そして対象となる食品は既に消費されていると推定されている。 

最初の調査測定結果から推定すると、幼児は危険な状態に曝露されている可能性が示唆される。 

鶏肉と鶏卵での高濃度ダイオキシンの発見により数千トンの食物を廃棄した。そして今週、食肉と鶏卵はベルギー食料品販売店の陳列棚に再び並び始めた。 

発見の状況と関係者のコメント 

今年1月、ある養鶏場の農場主は、卵が孵化しないことと、雛の神経系不調に気づいた。最初獣医は栄養失調だと診断した。しかし4月になって、飼料製造業者が該当する雌鳥と疑わしい飼料を、農産物品質管理を行っているオランダ国立研究所RIKILT(ダイオキシンを測定できるベルギーから最も近い場所にある実験室)に送った。 

RIKILTは法律で定められた基準値の1,500倍に相当する 781pptのダイオキシン類を飼料中の油脂分から検出した。汚染状況はGhent近傍にあるヘルケスト (Verkest)社によって生産された油脂80トンの生産バッチ(バッチは生産単位)へさかのぼって調べられた。また、それは12の飼料メーカーへ卸されていた。

 

RIKILTWim Traag氏のコメント

 

オランダのユトレヒト大学, Martin van den Berg氏のコメント

 

ベルギー当局のコメント

 

オランダ、ビルトモアにあるWHO欧州環境衛生センター, Rolaf van Leeuwen氏のコメント

 

ブリュッセル保健担当官のコメント、6月9日

  

参考資料として、厚生省による国内の食品中のダイオキシン濃度測定結果を紹介します。

(出典) 厚生省「平成9年度食品中のダイオキシン類等汚染実態調査報告」(1998/10/28

URL: http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/1010/h1028-3_13.html

 

<調査対象化合物>

ダイオキシン類(ジベンゾジオキシン(PCDD)12

ジベンゾフラン(PCDF)15

コプラナーPCB(Co-PCB)3種

単位: ppt (pgTEQ/g)

個別食品

ダイオキシン類

ダイオキシン類+Co-PCB

魚介類 (アナゴ、カレイ、ヒラメ、タイ、アジ、サバ、スズキ及びホッケ)

0.495ppt (0.060-2.642ppt)

1.600ppt (0.121-10.397ppt)

肉類(牛肉、豚肉及び鶏肉)

0.241ppt (0.004-2.949ppt)

0.295ppt (0.011-2.960ppt)

乳・乳製品(牛乳、チーズ)

0.062ppt (0.008-0.151ppt)

0.105ppt (0.012-0.263ppt)

穀類(米)

0.002ppt (<0.001-0.012ppt)

0.007ppt (<0.001-0.028ppt)

豆類(大豆・小豆)

0.009ppt (0.001-0.029ppt)

0.014ppt (0.002-0.039ppt)

芋類(サツマイモ)

0.013ppt (<0.001-0.045ppt)

0.015ppt (<0.001-0.045ppt)

野菜類等(リンゴ、キュウリ、長ネギ、白菜、小松菜、ホウレン草及びシイタケ)

0.042ppt (<0.001-0.370ppt)

0.053ppt (<0.001-0.430ppt)

数値は平均値、( )内は最小値から最大値までの範囲

TEQToxic Equivalents(毒性等量)

 

国内の測定結果から考えても、ベルギーのダイオキシン汚染濃度がどれ程高濃度かがわかる。ベルギー産の汚染された食品を摂取した人々の健康が懸念される。また、ダイオキシン類は、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の1つとされており、免疫系、内分泌系などの生殖障害による影響が懸念される。特にそれは、妊娠初期の母親から胎児が摂取した場合の影響が問題となる可能性がある。 

但し、上述の国内食品中の測定結果も安心してはいられない。上述の厚生省の発表資料によると、全国7地点で集めたトータルダイエット試料(14食品群)について、ダイオキシン類等を分析し、測定結果を集計することにより、通常の食事から摂取されるダイオキシン類等の量を推計している。その結果は以下の様になる。 

1日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)

項目

ダイオキシン類

ダイオキシン類+Co-PCBs

1日摂取量

48.0pgTEQ/day
(29.9-69.5pgTEQ/day)

120.7pgTEQ/day
(68.7-158.8pgTEQ/day)

体重kg当たりの1日摂取量

0.96pgTEQ/kg体重/day
(0.60-1.39pgTEQ/kg体重/day)

1.37pgTEQ/kg体重/day
(1.37-3.18pgTEQ/kg体重/day)

Co-PCBs:コプラナーPCBs

現在、日本政府は耐用1日摂取量(TDI)について1998年のWHOの勧告を受けて、現行の基準を改訂しようとしている

現行:10pgTEQ/kg体重/day

WHO勧告:1-4 pgTEQ/kg体重/day

すでに現在、厚生省調査による日本の食品中のダイオキシン濃度と1日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)を照合すると、決して安全な状況とは言えないと考えられる。


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