コーヒー摂取と胆石疾患リスクに関する研究
1999年6月19日
CSN #066
日常的にコーヒーを飲んでいる方はたくさんいると思います。コーヒー中に含まれるカフェインは、中枢神経系の活動を活発にします。そこで、眠気覚ましにコーヒーを飲む方もいるでしょう。しかし、飲み過ぎは神経過敏の兆候が現れるといわれています。また、カフェインは人間の体内から3〜7時間かかってやっと半分が排出されるという研究報告もあります。適度な量を適度な時間間隔を開けて飲むことが大切です。
今回紹介する研究論文は、コーヒーを一日に2−3杯飲むと、胆石形成が抑制されるという報告です。
<情報源>
米医師会雑誌
The Journal of the American Medical Association (JMMA), June 9, 1999;281:2106-2112
URL: http://www.ama-assn.org/sci-pubs/journals/most/recent/issues/jama/oc90133a.htm
<研究者>
Michael F. Leitzmann医学博士、Walter C. Willett医学博士、Eric B. Rimm, ScD、
Meir J. Stampfer医学博士、Donna Spiegelman, ScD、Graham A. Colditz医学博士、
Edward Giovannucci医学博士
<研究概要>
本論文では、私たちが日常飲んでいるコーヒー飲料が、胆石形成のリスクを低下させる可能性があることを示唆している。コーヒー摂取による胆石形成の代謝効果が数点確認されている。
1986年にアメリカの男性健康管理者に対して131項目の食品頻度調査票を配布し調査を行った。その中の一部に、コーヒーと他のカフェイン含有飲料の消費についての項目があり、1996年まで追跡調査が行われた。その調査結果を用いて算定されたコホート研究によって研究が行われている。
調査参加者は、1986年の時点で40−75歳であった、胆石形成の経験がない全46,008人の男性であった。新たに有症状胆石形成(超音波検査やX線検査で診察)が生じたかどうか、及び胆嚢摘出を行ったかどうかについて調査を行った。
<研究結果のまとめ>
1996年まで追跡調査した間に、1081個の被験体が有症状胆石形成を報告し、そのうち885個は胆嚢摘出を必要とした。
胆石形成に関して、他の既知及び疑いのあるリスク要因を調整した後、1986年と1996年におけるレギュラー・コーヒー摂取状況によって比較した。
レギュラー・コーヒー |
修正相対危険度 (RR)* |
RRの95%信頼間隔 |
2−3杯/日 |
0.6 |
0.42-0.86 |
4杯/日以上 |
0.55 |
0.33-0.92 |
*相対危険度 (RR):疾患者集団の有症率が非疾患者集団の有症率の何倍かを示す数字。
対照的にカフェインを除いたコーヒーは、胆石形成リスク減少と無関係であった。
カフェイン摂取の最も低い部類(25 mg/day未満)の男性と、カフェイン摂取の最も高い部類(800 mg/day以上)の男性とを比較した結果は以下のようになっている。
修正相対危険度 (RR) |
RRの95%信頼間隔 |
0.55 |
0.35-0.87 |
1杯のコーヒーに含まれるカフェインは、コーヒーの入れ方にもよるが、85〜250mgといわれている。つまり本研究結果によると、1日2−3杯のコーヒーを飲むと胆石を形成する可能性が約40%少なくなることを示している。本研究のアメリカ合衆国男性のコホート研究によると、コーヒー摂取は有症状胆石形成予防に効果がある可能性を示している。
<コホート研究について>
多人数の方々から生活習慣についての情報を集め、長期にわたって疾病の発症に関する追跡を行うことによって、どの様な生活習慣が疾病の発症に関連しているのかを明らかにするために行う研究方法の1つとして行われている。
日本では現在、厚生省による多目的コホート研究(JPHC Study)が行われている。これは、全国約14万人の地域住民を対象とした、生活習慣と癌など成人病発症との関連を明らかにするための長期追跡調査で、厚生省癌研究助成金による指定研究班「多目的コホートによるがん・循環器疾患の疫学研究」(主任研究者 津金昌一郎 国立がんセンター臨床疫学研究部長)において全国11保健所と国立がんセンター・国立循環器病センターなどとの共同研究として行われている。以下のアドレスにその状況が掲載されています。
(出典)
「厚生省多目的コホート研究(JPHC Study)」
URL: http://www.east.ncc.go.jp/epi/jphc/jphcST.html