スェーデンの若年層における飲料水からの日常的な銅摂取量


1999年6月24日

CSN #069

銅は体内に存在するミネラルであり、約20種類ある微量元素の1つに挙げられています。体内に存在する少量元素としては、多い順にカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄があり、鉄以下のミネラルを微量元素と呼んでいます。 

鉄や亜鉛、銅、マンガンはちょうど境界領域にあり、場合によっては、「少量元素」のグループに分類することがあります。 

また、一般に微量元素は、所要量と何らかの障害があらわれると考えられる過剰量とが、それほど離れていないという特徴があります。特にセレンや亜鉛、銅などは、所要量と過剰量が接近している微量元素です。ですから、これらの元素を健康食品や薬品として摂取する場合には注意が必要です。 

銅の体内での主な働きはヘモグロビンの合成を促進することです。つまり、造血機能があるということです。そのため、欠乏すると貧血・骨折しやすくなり、低色素性貧血、毛髪や皮膚の色素脱失、成長障害が発生します。逆に過剰に摂取すると溶血性黄疸になります。 

食品では、牛レバー、貝(特に牡蠣)、海老、かに、種実類、カシューナッツ、マッシュルームなどに多く含まれています。 

しかし、過剰摂取すると人体人間の健康に影響を与えることから、飲料水中の水質基準が定められています。日本の水道法による銅の水質基準は下記の通りです。

基準値: 1mg/ l以下

(出典)国内飲料水水質基準値 (水道水が有すべき性状に関連する項目)平成4年1221日水道法改正

URL: http://www.nihs.go.jp/incident/law/suido/suido.html

 

<人間健康に対する銅のWHO環境衛生基準>

参考までに、WHO(世界保健機構)による飲料水中の銅濃度のガイドラインは銅(Cu)1.5 mg/ lです。またWHOの銅の環境衛生基準によると、人間健康に関して以下のように設定しています。

(出典)銅に関するWHO環境衛生基準

URL: http://www.who.int/pcs/docs/ehc_200.html

銅の経口摂取許容範囲(AROI)

成人

幼児

下限*

20 μg /kg 体重/ day

50 μg /kg 体重/ day

上限**

不確定:2−3 mg/ kg 体重/ day は越えない

*下限:銅の吸収、滞留、沈着における変化量と成人の基本的な必要量から求められている(WHO, 1996)

**上限:銅汚染飲料類の胃腸に与える影響の研究に基づいている。

上記数値は銅の飲食物からの摂取量に限定される。また入手可能な世界中(特に欧米)の人間曝露データからすると、過剰銅摂取よりも銅摂取不足からの人間健康影響リスクの方が大きい。

  

今回紹介する論文は、スェーデンの若年層における飲料水からの日常的な銅摂取量に関する報告です。 

<情報源>

環境衛生展望 (Environmental Health Perspectives) Volume 107, Number 6, June 1999
URL:
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/1999/107p441-446pettersson/abstract.html

<研究者>

<概要>

銅は、過剰に摂取すると、中毒を引き起こす可能性がある極めて重要な微量元素である。若い子供達は、飲料水中からの大量摂取と銅代謝能力の低さなどから中毒を起こすリスクを有している。この前向きな研究の目的は子供が摂取する飲料水量と飲料水中の銅濃度を概算することである。 

1)実験方法

スウェーデンのUppsala Malmoに住んでいる1,178人の子供達が摂取している生の飲料水(フラッシング洗浄されていない飲料水)を分析した。飲料水中から検出された銅濃度と含有量はこれらの子供の中で、生後9-21ヶ月の430人から概算した。この子供達はみなスウェーデン人で、母乳は1日3回未満しか与えられなかった。 

2)測定結果 

検体

低い方の10%

中央値

高い方の10%

1,178人の子供達の家庭での生の飲料水中銅濃度

0.17 mg/L

0.72 mg/L

2.11 mg/L

430人の幼児(生後9-21ヶ月)の飲料水中からの銅1日摂取量

0.03 mg/L

0.32 mg/L

1.07 mg/L

 

WHO環境衛生基準にあるように、微量元素は所要量と過剰量が近接しています。飲料水中に銅が含まれる原因は、銅配管、腐食防止剤などです。スェーデンでの上記報告にあるように、測定データの高い方では飲料水中の銅濃度がWHOガイドライン値以上になっています。過剰に摂取することは禁物です。自然界に存在する微量元素で十分に所要量に達しているのであれば、必要以上に摂取するルートはできる限り取り除かれるべきだど思います。  


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