環境衛生における優先調査項目


1999年6月24日

CSN #068

<情報源>

英医学会雑誌

BMJ 1999;318:1636-1637 ( 19 June )

http://www.bmj.com/cgi/content/full/318/7199/1636

 

Goran Pershagen教授

Karolinska 研究所、環境医学研究室、ストックフォルム、スェーデン

(Institute of Environmental Medicine, Karolinska Institutet)

 

<概要> 

環境問題は、政治の上でも重要な課題とされているが、人体への健康影響という観点での環境衛生問題は、優先度が低くなりがちである。例えば本記事では以下の例を挙げています。 

(例)

つまり逆環境影響である。 

このような状況から欧州委員会は、従来のプログラムと比較して、さらに環境衛生研究に焦点を当てた5つのプログラムに着手している。また本記事では、そのプログラムの環境衛生に関する3つの目標を以下のように挙げています。 

  1. 環境因子によるアレルギー疾患などを含む、逆健康影響の減少
  2. 環境衛生に与える危害を評価すること、及び減少すること
  3. 健康と環境に関わる政策立案と情報公開を支持すること

 

最近、WHO(世界保健機関)欧州局及び欧州委員会とともに欧州科学財団は、環境衛生における研究ニーズに関するドキュメントを作成した。このドキュメントは、1999年ロンドンにおける環境衛生に関する政府間協議に提出された。11の調査項目は優先順位なしに定められ、特定の科学研究ニーズのもと、3つの主なカテゴリーに分類された。1)基礎探索、2)基礎科学研究結果の政策転換に関する研究、3)リスクマネジメント/原則の政策決定の促進あるいは支持に関する研究。 

本記事には提案された11の調査項目を以下のように挙げています。 

  1. 気候変化、成層圏のオゾン枯渇と人間健康
  2. 欧州における健康予測による社会変化
  3. 認識機能に関する環境影響
  4. 健康に関する環境影響のメディエイターとしての認識機能
  5. 子供と事故
  6. 周囲の空間における空気中の粒子
  7. 室内空気質と健康
  8. 水質と飲料水
  9. 内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)
  10. 免疫毒性物質の人間健康影響評価
  11. 化学リスク評価と関連毒物問題

 

「これらの研究に優先度はないが、一般市民と産業界の両方において、環境衛生影響に関する意志決定を行うために必要な科学的基礎を強固にすることが重要である。」とPershagen教授は述べています。 

その他にもPershagen教授は、環境衛生に関わる研究について以下のコメントを述べています。 

基礎研究の重要性

国際協力の重要性

 

私たちの生活環境には、私たちの健康に影響を与える可能性が多数存在します。欧州科学財団がWHO(世界保健機関)欧州局及び欧州委員会とともに作成したドキュメントの11の調査項目は緊急に調査し、必要な対策を取る必要があると思います。その上でも環境衛生研究は非常に重要です。 

今年6月18日の日本内分泌攪乱化学物質学会(環境ホルモン学会)第3回講演会では、環境化学物質が内分泌系攪乱だけでなく、神経活動撹乱作用を引き起こす可能性のあることが報告されています。特に、脳神経系が発達する胎児期から乳児期における環境化学物質曝露について指摘しています。これまでの間接的なデータから、内分泌攪乱化学物質を含む環境化学物質が、子供達の学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関連している可能性があるが、データが少なく断定できない状況だとされています。そのため、どの化学物質が危険であるかどうかを明らかにするために、基礎研究と毒性試験が緊急に必要であると報告されています。 

私たちが安心して生活できる生活環境の構築を目指すべきです。環境衛生研究はその第一歩であり、その結果を踏まえた社会及び産業構造の改革が必要です。


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