ペットボトルの再利用(Part1


2000年6月19日

CSN #140

ペットボトルは、ポリエチレンテレフタレート(PET: polyethylene terephthalate)を成形加工して得られたプラスチック製品で、清涼飲料水、酒、ビール、食酢、油、醤油、ソース、洗剤、シャンプー、化粧品、医薬品などのボトルとして幅広く使用されています。今回は、ペットボトルの再利用と題して2回にわけて概説します。本報ではPart1として、ペットボトルに使用されているボトル用PET樹脂の用途、ペットボトルの製造方法について概説します。

2000年は予測値

表1、表2に日本におけるボトル用PET樹脂の用途別需要量推移を示します[1][2]。表1、表2から明らかなように、ボトル用PET樹脂の需要量はここ数年で大幅に向上し、清涼飲料用途における需要量の伸びが大きく影響していることがわかります。

ペットボトルは、図3に示すプロセスで製造されます[3]。一度重縮合反応でペレットとして取り出した後、さらに樹脂の重合度や純度を高めるために固相重合を行うことが特徴です。PET樹脂製造のための触媒としては、アンチモンやゲルマニウムが用いられ、その他の添加剤は使用されないので純粋な樹脂であると言えます。ただし着色する場合には、着色剤が添加されます。

PET樹脂の重縮合プロセスでは、高温による分解副生成物としてアセトアルデヒドが発生します。しかし固相重合プロセスで純度が高められる際に、その含有量が低下します。アセトアルデヒドは毒性を有する化学物質です。しかし、私たちはお酒を飲むときに摂取したアルコールを肝臓で分解する際に、アセトアルデヒドを生成します。このアセトアルデヒドの毒性によって私たちは酔いの症状を示します。またアセトアルデヒドは、食品中にも微量に存在します。

ペットボトル中のアセトアルデヒドの問題は、安全性よりもむしろ食品に対する風味への影響が懸念されています。そのためメーカーは、高い純度が得られるように、触媒や重合条件に工夫を凝らしています。

得られたPET樹脂は、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形、二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形加工されますが、世界的に二軸延伸ブロー成形が主流となっています。図4に、二軸延伸ブロー成形(ホットパリソン法)よるペットボトルの成形工程を示します[3]

 

私たちは飲料や食品調味料などにペットボトルを使用した後、不用となったペットボトルを廃棄しようと考えます。廃棄されたペットボトルは、廃棄物となって焼却処理や埋立処理されます。

良好な燃焼条件におけるPET樹脂の焼却テストでは、ほとんど有害物質は発生しないことが確認されていますが、焼却残灰にはPET樹脂製造時の重合触媒であるアンチモンなどが数%残留することが確認されています[4]。また、廃棄物処分場からは化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の指定化学物質[5]である1,4−ジオキサンが検出[6][7]されており、PET樹脂との関連性が疑われています。

19956月、都市ごみ減量化とリサイクルを目的として、「容器包装に係わる分別収集及び再商品化に関する法律」(容器包装リサイクル法)が制定されました。そして、ガラスびん、アルミ缶、スチール缶、紙パック、ペットボトル(飲料、酒類、醤油)の5つについて、19974月から分別回収・リサイクルが開始されました。しかしペットボトルに関しては、分別回収してもリサイクルが追いつかず、保管されたり放置されたりしています。次報は、リサイクルの観点からペットボトルの再利用について概説します。

Author:東 賢一

<参考文献>

[1] 長谷川正, プラスチックス, Vol. 50, No. 11, pp58-64, Nov 1999
最近のペットボトルのリサイクリング技術

[2] プラスチックス, Vol. 51, No. 6, pp55, June 2000

[3] PETPENフィルムとPETボトルおよびA-PETC-PET, 株式会社大阪ケミカルマーケティングセンター, Vol. 3, No. 137, May 1993

[4] 旧橋 章、プラスティックス、Vol49, No3, 1998

[5] 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法), 国立医薬品食品衛生研究所
http://www.nihs.go.jp/law/kasin/kasin.html

[6] 福里隆一、資源環境対策、Vol34, No.12, 1998

[7] 安原昭夫、環境化学、Vol2, No.3, 1992


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