ほ乳瓶や歯固めなどの乳児用品に潜む危険
1999年5月1日
CSN #043
上記の件に関するアメリカ消費者レポートの出版物情報が、下記アドレスに掲載されています。
http://www.consumerreports.com/Special/Samples/Reports/9905bab0.htm
以下、このレポートの概要を紹介します。
−目次−
第1章 レポートの概要紹介
第2章 個々の問題
第3章 消費材安全委員会から子供を持つ親たちへのお願い
第1章 レポートの概要紹介
このサイトでは、消費材安全委員会(CPSC)による軟質塩ビ製の歯固めや玩具に関する調査報告書を紹介している。ここで紹介されている製品は、乳幼児が吸ったり噛んだりするもので、材質によっては乳幼児に対して危険である可能性がある。特に軟質塩ビ製であれば、フタル酸エステル類の溶出が懸念される。フタル酸エステル類の中には、エストロゲン作用、つまり環境ホルモン物質としてリストアップされているものがある。本報告書は、フタル酸エステル類の一つであるジイソノニルフタレート(DINP)について概説している。
この報告書が注意を促す製品と有害化学物質
製品及び部位 |
注意すべき化学物質 |
乳幼児用塩ビ製の歯固め、玩具 (口で吸ったり噛んだりするもの) |
ジイソノニルフタレート(DINP) |
ほ乳瓶の本体(ポリカーボネート樹脂製) |
ビスフェノールA |
乳幼児用のプラスティック製品を使用している方は、この報告書を読んでパニックにならないよう勧告している。なぜならDINPは動物実験で様々な毒性が確認されているが、人体に対する影響については十分にわかっていない。しかしその影響が確認されるまで、できる限り曝露しないようにすべきだと主張している。なぜなら大人よりも乳幼児の方が影響を受けやすいからである。
第2章 個々の問題
この章では軟質塩ビ製の歯固めと玩具、ほ乳瓶に関する調査報告書について概説している。
1)軟質塩ビ製の歯固めと玩具
歯固めとは歯が生えかけた幼児がつける器具で、軟質プラスティック製品が用いられている。この章では、軟質塩ビ製の歯固めや玩具について報告している。軟質塩ビ樹脂は可塑剤(軟化剤)が混合されているため柔らかさを有しているが、それにはフタル酸エステルの1つであるDINP(ジイソノニルフタレート)が最も多く使用されている。DINPの動物実験によると、癌、肝臓疾患、腎臓疾患が確認されている。
おしゃぶりやほ乳瓶の吸い口はラテックスやシリコン製なのであまり心配ないが、歯で噛んで遊ぶ塩ビ製玩具は注意しなければならない。ここでは、6−7種類のDINP含有塩ビ製の歯固めを試験した結果が報告されている。
消費材安全性委員会(CPSC)によると、「口に入れる塩ビ製玩具から摂取するDINP量は、有害と思われる量よりも少ないが、幼児への影響についてはさらなる研究が必要だ。」と述べている。また、アメリカの塩ビメーカー、玩具メーカー、関連メーカーは以下のように反論している。「塩ビ製玩具や歯固めは、50年間使用されているので安全だ。またほとんどの玩具メーカーは、委員会の要求に応じて自主的にポリエチレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)など可塑剤を含まない製品に変更してきた。」
しかし店頭では未だに塩ビ製品が販売されているようだ。ガーバー(Gerber)という大手販売メーカーによると、「フタル酸エステル類を含有している歯固めを店頭から除去してきた。製造メーカーの多くは、今後はフタル酸エステル類を含有しない製品を開発すると約束した。Kマート、シアーズ、ターゲット、ウォルマートなどの大手小売店でもそのような製品を除去してきた。現在我々は、製造メーカーがフタル酸エステルを含まないと保証する製品だけを販売している。」と述べている。
しかしCPSCが今年の3月に確認したところ、昨年末に確認した塩ビ製歯固めの多くが今でもある大手小売店の棚に並んでいる。以上が現在のアメリカの状況である。
アメリカではフタル酸エステル含有製品が、メーカーの自主的な行動により徐々に削減されている。日本でも1998年に大手百貨店がフタル酸エステル類を含有する塩ビ製乳幼児玩具を撤廃している。日本では一部の塩ビメーカーが海外塩ビメーカーの買収を行い事業拡大の動きを見せているが、廃棄物焼却からのダイオキシン発生問題もあり、全体的には脱塩ビへと動いているようだ。ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂でどこまで代替可能かがポイントになると思われる。
2)ほ乳瓶
ポリカーボネート樹脂は、透明性が高く硬い樹脂である。そのためガラスに代わる軽くて丈夫な樹脂として、住宅建材、自動車、家電製品、家庭用品など多くの用途で使われている。しかしポリカーボネート樹脂からは、ある条件下でビスフェノールAという化学物質が溶出されることがわかっている。ビスフェノールAは、内分泌攪乱化学物質(EDCs:俗称、環境ホルモン物質)とされており、動物実験によってエストロゲン様作用が確認されている環境汚染化学物質の1つでる。この報告書は、ほ乳瓶に使われているポリカーボネート樹脂から溶出するビスフェノールAついて概説している。
この報告書では6種類のほ乳瓶を用意し、加熱殺菌時におけるビスフェノールA溶出試験を行っている。その結果ビスフェノールAが検出されている。実験条件及び実験結果等の詳細はこのサイトに掲載されていないので、出版されている調査報告書を参考にしていただきたい。またプラスティックからの化学物質溶出に関する関連報告書として、以下の報告書が紹介されている。(関連資料:1998年6月の調査報告書「脂質食品にプラスティックラップから溶出した化学物質」)
この報告書の実験で検出されたビスフェノールAに対する考察を以下のように行っている。
<実験でのビスフェノールA検出量>
ほ乳瓶の加熱殺菌処理試験からは、コロンビア州ミッソリーニ大学の生物科学者フレドリック・ボン・サール教授の研究で動物に影響があったとされるビスフェノールA投与量の4%が検出された。
<検出結果に対するCPSCの考察>
この数字は驚くほど低いが、乳児に対する安全性指針は動物実験に影響があった濃度の0.1%程度と言われている。そうすると今回の実験結果は40倍の数値になる。
<アメリカ食品医薬品局の見解>
アメリカ食品医薬品局(FDA)の製品施策部の責任者であるジョージ・パウリによると、「FDAではビスフェノールAの溶出に関して調査してきた。ポリカーボネート製ほ乳瓶の安全性は古いデータによるものだ。FDAでは再試験が必要だと考えており、ビスフェノールAのようなエストロゲン様作用をする化学物質の乳児への影響について最近懸念している。」
第3章 消費材安全委員会から子供を持つ親たちへのお願い
最後にこの章では、消費材安全委員会から子供を持つ親たちへのお願いを掲載している。私たちの子供達、これから生まれてくる子供達のために。
<歯固め>
<ほ乳瓶>
<政府や生産者への要望>