農薬と攻撃性


1999年5月7日

CSN #045

情報源: Rachel-Weekly, ---April 29, 1999---, Peter Montague

1999年4月29日のレイチェル・ウィークリーから概要を紹介します。

以下の4つの章から構成されています。

  1. 農薬と水について概説
  2. 農薬含有水を与えた雄マウスの疫学的研究論文紹介
  3. 農薬に曝露した幼児に関する研究論文紹介
  4. 子供に対する農薬の毒性

 

−以下概要紹介−


第1章 農薬と水についての概説

 

アメリカでは25年前から殺虫剤、除草剤、農薬を低濃度含有した水道水を、飲料水、風呂水、シャワー水として使うことで、飲食や皮膚を通じてそれらの化学物質を人体に取り込んできている。このことは、日本でも同じことだと思う。農地に散布された農薬などの化学物質は、地下水や河川を通じて飲料水中に混入していることは十分に考えられる。 

本記事では、これらの化学物質の代表例として以下の化学物質をあげている(文献1)

これらの化学物質の生体への影響については、発癌性を中心に動物実験による多くの研究がなされているが、地下水で検出される濃度は、「受け入れ可能なリスク」とされてきている。

  

第2章 農薬含有水を与えた雄マウスの疫学的研究論文紹介

 

この章では、最新の農薬に関する生体への影響に関する研究(文献2)が紹介されている。

以下にその概要を述べる。 

  1. 研究組織及び研究者

    ウィスコンシン大学の生物・医学の研究グループ

    ウォレン・P・ポーター、ジェイムス・W・ジェーガー、イアン・H・カールソン

     

  2. 研究目的

    アルディカーブ(カーバメート系殺虫剤)、アトラジン(トリアジン系除草剤)、硝酸塩(肥料)の混合物が内分泌系、免疫系、行動へ与える影響についての疫学的研究が目的である。アメリカの農業地帯の地下水で検出される濃度と同レベルのこれらの化学物質を、それぞれ2−3種類組み合わせて水に混入し、雄マウスに与えたときの影響を観察している。 

    特に神経系、免疫系、内分泌系(ホルモン)は、互いに密接に関連しており、3つの系のうちどれか1つでも障害を受けたり機能低下が生じたりすると、他の系にも影響が出る可能性があるとポーター博士が説明している。

     

  3. 実験内容

 <投与した化学物質モデル>

  1. アルディカーブ、硝酸塩の混合物
  2. アトラジン、硝酸塩の混合物
  3. アトラジン、アルディカーブ、硝酸塩の混合物

 <評価方法>

項目

機能評価方法

免疫系

外来タンパク質に反応する抗体をマウスが作り出す能力を評価

内分泌系

血液中の甲状腺ホルモン濃度を測定

神経系

かごの中に別のマウスを侵入させた時の攻撃性を評価

成長への影響

体重変化、脾臓重量変化

再現性確認のため、数回繰り返して実験が行われている。

 

  1. 実験結果

 確認された雄マウスへの影響

 

  1. 考察

 ウィスコンシン大学の研究チームは以下のように考察している。

 

第3章 農薬に曝露した幼児に関する研究論文紹介

 

この章では、農薬に曝露した幼児に関する研究論文(文献6)が紹介されている。

以下にその概要を述べる。

 

1)研究調査対象

メキシコ、北ソノラ地方、ヤキ谷に住むヤキ・インディアンの4−5歳児2組を調査。

@毎年45回以上農薬散布している低地の農家の子供達

A農薬を使用しない高地の農家の子供達

 

2)調査結果

@で農薬曝露した子供達に起きた以下の異変が報告されている。

 

3)考察

研究者であるエリザベス・ジレットの以下のコメントが紹介されている。

「谷間の子どもたちの行動を見ていると、兄弟姉妹とすれ違う時にたたく子がいる。両親がちょっと何かを直させようと話しかけると、すぐにひっくり返ったり、怒ったりする。このような攻撃的な行動は農薬に曝露していない高地の子供達には見られない」。

 

第4章 子供に対する農薬の毒性

この章では、子供に対する農薬の毒性について第2章の研究論文の研究者であるポーター博士のコメントが紹介されているので概要をまとめてみた。(文献5)

 

<補足情報>

農薬、肥料、有害金属が若年層の精神力、感情バランス、社会適応力にどのように影響するかについての報告がある。[レイチェルウィークリー #529, #551]

以下のサイトから入手できます。

http://www.monitor.net/rachel/

 

<本文中の参考文献>

[1] Jack E. Barbash and Elizabeth A. Resek, PESTICIDES IN GROUND WATER (Chelsea, Michigan: Ann Arbor Press, 1996); Richard Wiles and others, TAP WATER BLUES (Washington, D.C.: Environmental Working Group, 1994); Brian A. Cohen and Richard Wiles, TOUGH TO SWALLOW (Washington, D.C.: Environmental Working Group, 1997); Environmental Working Group, POURING IT ON; NITRATE CONTAMINATION OF DRINKING WATER (Washington, D.C.: Environmental Working Group, 1996). See www.ewg.org. And: Gina M. Solomon and Lawrie Mott, TROUBLE ON THE FARM; GROWING UP WITH PESTICIDES IN AGRICULTURAL COMMUNITIES (New York: Natural Resources Defense Council, October, 1998). 

[2] Warren P. Porter, James W. Jaeger and Ian H. Carlson, "Endocrine, immune and behavioral effects of aldicarb (carbamate), atrazine (triazine) and nitrate (fertilizer)mixtures at groundwater concentrations," TOXICOLOGY AND INDUSTRIAL HEALTH Vol. 15, Nos. 1 and 2 (1999), pgs. 133-150. 

[3] C.A. Boyd, M.H. Weiler and W.P. Porter, "Behavioral and neurochemical changes associated with chronic exposure to low-level concentration of pesticide mixtures," JOURNAL OF TOXICOLOGY AND ENVIRONMENTAL HEALTH Vol. 30, No. 3 (July 1990), pgs. 209-221. 

[4] W.P. Porter and others, "Groundwater pesticides: interactive effects of low concentrations of carbamates aldicarb and methamyl and the triazine metribuzin on thyroxine and somatotropin levels in white rats," JOURNAL OF TOXICOLOGY AND ENVIRONMENTAL HEALTH Vol. 40, No. 1 (September 1993), pgs. 15-34. And see: W.P. Porter and others, "Toxicant-disease-environment interactions associated with suppression of immune system, growth, and reproduction," SCIENCE Vol. 224, No. 4652 (June 1, 1984), pgs. 1014-1017. 

[5] Keith Hamm, "What's In the Mix?" SANTA BARBARA [CALIFORNIA] INDEPENDENT April 15, 1999, pg. 21-.URL: www.independent.com/007/001/002.html.

[6] Elizabeth A. Guillette and others, "An Anthropological Approach to the Evaluation of Preschool Children Exposed to Pesticides in Mexico," ENVIRONMENTAL HEALTH PERSPECTIVES Vol. 106, No. 6 (June 1998), pgs. 347-353.

 

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