揺れ動く遺伝子組み替え作物(2)
1999年5月13日
CSN #049
知人から英科学雑誌ネイチャー(Nature)4月22日号に掲載されているGM食品に関する特集記事を紹介いただいたので、以下に概要を述べます。
1,ヨーロッパでの表示を求める動きとアメリカの反対の動きに関する見解
新しい技術により生産されたというだけで、既存の製品より危険だとはいえない。さらにGM食品の影響については、人の健康に対してもまだわからないことが多い。
農地に除草剤耐性のスーパー雑草が広がる可能性があるといった表現について、多くの科学者は誇大表現だと感じている。
以上のことを踏まえた上、GM表示に関して様々な立場からの議論をもとめ、そのプリンシプルとして、次の4点を挙げています。
GM食品の規制は科学的根拠に基づいて行うべきである。健康に与える長期的影響や生物多様性に対する影響に関しては引き続き研究の続行が必要。
現在の科学の限界を認めるべきだ。危険だという証拠がないことが安全だということにはならない。
科学的情報を一般に公開し、広く議論できる方法を見つける必要がある。
食品安全性規制には一般大衆の心配も考慮すべきだ。
2,日本の現状
『Japan defends its drive for self-sufficiency---日本は自給のためにGM作物を推進しようとしている』
GM食品にたいする一般の懸念の広がりにもかかわらず、日本の科学者は-他国に同調し、人の健康と環境に対する長期的なリスクについてようやく疑問を堤し始めた。また、農林水産省は4月1日初めてGM作物リスクの調査に乗り出した。
多くの人々はGM食品に懸念をもっている。それは以下理由による。
1. 遺伝子操作することに対する倫理的な問題
2. GM技術が一般に理解されていない
3. 政府が表示に消極的
その他に、国立農業環境技術研究所の渋谷氏によれば、リスクに対する公共のコミュニケーション不足があり、科学者は何がわかっていて、何がわかっていないのかを知らせる必要があると指摘している。
GM食品に対する国民の信頼の低さは、食糧自給をめざす政府にとって不都合である。驚いたことに、農水省の研究プロジェクトの目的は人々の心配をしずめる方法を見つけることである。
日本のGM規制はOECDの枠組みをモデルにしており、「実質的同等」ということに重点を置いている。日本消費者連盟の安田氏は、数世代後に残る毒性やその結果として現れる生物多様性への影響を見逃していると指摘している。しかし、厚生省も健康や環境に対するリスクの可能性は非常に少ないとしている。
日本の規制システムは栽培試験など、他の工業国より厳しいところもある。
政府はGM作物の開発に積極的だが、一般企業、JT、キリンビール、サントリーなどは試験はしているものの商品化の予定はない。これは会社に対するマイナスのイメージや製品のボイコットにつながることを恐れているためである。