ユタ州の飲料水中砒素濃度と標準化死亡比(SMR)


1999年5月15日

CSN #050

米ユタ州の飲料水中砒素濃度と標準化死亡比(SMR)について調査した報告が最近発表された。砒素は、灰色砒素、黄色砒素、黒色砒素の3種の同素体があり、単体、化合物とも猛毒である。砒化インジウム、砒化ガリウムなどの化合物半導体成分、鉛、銅の合金成分として用いられる。また、建材として用いられる石膏ボード中からも一部検出されており、その毒性から防蟻剤としても用いられる。日本国内では水道法などで基準値が設定されており、地下水、公共水域で観測されている。

 

<情報源>

環境衛生展望(Environmental Health Perspectives Volume 107, Number 5, p359-365, May 1999

URL: http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/1999/107p359-365lewis/abstract.html

<研究者一覧>

1)Denise Riedel Lewis, Rebecca L. Calderon

アメリカ環境保護庁、国立衛生環境影響研究所、人間研究部門

U.S. Environmental Protection Agency, National Health and Environmental Effects Research Laboratory, Human Studies Division

2)J. Wanless Southwick, Rita Ouellet-Hellstrom, Jerry Rench

SRAテクノロジー社(SRA Technologies, Inc.,

 

米ユタ州、ミラード・カントリー地区居住者における、飲料水中の砒素濃度と死亡者数の関係についてコウホート分析(同齢集団分析)を行った研究報告要約が概説されている。

 

<分析方法>

・飲料水中砒素濃度の中央値:14−166ppb

(測定機関:ユタ州立環境局、飲料水部)

・標準化死亡比(SMR) 居住歴、飲料水中の砒素濃度の中央値、累計砒素曝露を用いて計算。

 

<分析結果及び考察>

性別

疾患

SMR

95%信頼区間

男性

高血圧心疾患

2.20

1.36−3.36

腎炎、腎臓症

1.72

1.13−2.50

前立腺癌

1.45

1.07−1.91

女性

高血圧心疾患

1.73

1.11−2.58

他の心疾患[1]

1.43

1.11−1.80

[1]肺性心、心膜炎、他の心膜疾患などを含む心疾患

 

要約文中に砒素濃度高低とSMRの関係についてデータは紹介されていないが、以下のコメントが紹介されている。

 

 

<標準化死亡比(SMR)>

標準化死亡比(SMR)についての算出方法等詳細は以下のアドレスをご参考下さい。

URL: http://www.pref.okayama.jp/okayama/fukushi/kikaku/what_smr.htm

 

SMR=市町村の実際の総死亡数÷(市町村の年齢階級別人口×全国の年齢階級別死亡率)の総和

SMRは,全国(基準とするもの)を1とするため,

市町村のSMRが1より大きい場合、市町村の死亡率は全国より高い。

市町村のSMRが1より小さい場合、市町村の死亡率は全国より低い。

(注意点)

 人口が小規模の市町村の場合には,その死亡数が偶然的な要因により変動するものであるため,SMRの値にも偶然的変動を含んでおり,「真の値」を示すものではなくなる。

 

<参考データ>

1)日本の水質基準(健康に関する項目)

  水道法:0.01mg/l 以下(10ppb)

 

2)測定結果事例

愛知県平成9年度公共用水域及び地下水の水質調査結果によると、過去の調査で環境基準値を超過した砒素8地点の発端井戸と周辺井戸をモニタリング測定しているが、8地点中砒素の最大値は以下の通り。どの観測地点も調査開始地点から改善されておらず、横這いのままである。

URL: http://www.pref.aichi.jp/kankyo/jouhou/suisitu/suisitu_7.html

<8地点中最大値>

名古屋市中川区の発端井戸: 0.028mg/l(28ppb)

 

これは基準値を越えた例です。Web上であまり公開されていないので明確なことは言えないが、日本ではユタ州ほど高くないと思います。


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