4−t−オクチルフェノール曝露による雄メダカの繁殖能力低下


1999年5月18日

CSN #052

環境ホルモン物質(内分泌攪乱化学物質:EDCs)の1つである4−t−オクチルフェノールが雄メダカへもたらす生殖影響に関する研究論文が最近報告された。

 

<情報源>

環境衛生展望(Environmental Health Perspectives Volume 107, Number 5, p385-390, May 1999

URL: http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/1999/107p385-390gronen/abstract.html

<研究者及び所属>

1)Suzanne Gronen, Steve Manning, Sue Barnes, David Barnes, Marius Brouwer

南ミシシッピ大学、海洋科学研究所、沿岸科学部( University of Southern Mississippi, Institute of Marine Sciences, Department of Coastal Sciences

2)Nancy Denslow

フロリダ大学(University of Florida

 

<緒言>

最近多くの研究により、雌魚における卵黄の前駆タンパク質であるビテロジェニン(vitellogenin:VTG)が環境エストロゲン化学物質(以下内分泌攪乱化学物質:EDCs)の誘導で合成されると証明されてきた。しかしながら、この現象がもたらす化学的、生物学的な重要性はほとんど知られていない。

本研究論文は、雄魚におけるVTG合成と繁殖力低下の関係についての実験的研究である。

 

<実験方法>

 

<実験結果>

Aグループ(試験グループ)      :4-t-OP曝露雄メダカ/非曝露雌メダカのつがい

Bグループ(コントロールグループ):4-t-OP非曝露雄メダカ/非曝露雌メダカのつがい

 

<4−t−オクチルフェノールの概要>

1)用途

印刷インキ、ワニス、油溶性フェノール樹脂、繊維油剤、ポリマー用界面活性剤、農業用界面活性剤


2)毒性

一般に、哺乳動物に対する急性毒性は低く、最も懸念されるのが水生生物である。魚、藻、無せきつい動物には極めて有毒で、生体内蓄積による生物濃縮及び食物連鎖の可能性もあると考えられている。
 


3)日本国内での検出報告

建設省河川局河川環境課によるアルキルフェノール類、フタル酸エステル類、アジピン酸類、ビスフェノールA、ス ン、人畜由来ホルモン(17β−エストラジオール)についての1998年全国調査結果が報告されている。4−t−オクチルフェノールについて、以下のようにまとめてみた。

 

(1)全国河川256ヶ所での検出結果

建設省河川局河川環境課(平成10年10月16日)

URL: http://www.moc.go.jp/river/horumon/05.html

・251ヶ所:検出下限値(0.1ppb)未満

・  5ヶ所:定量下限値(0.3ppb)未満、検出下限値以上

 

(2)平成10年度 水環境における内分泌攪乱化学物質に関する実態調査結果

建設省河川局河川環境課(平成11年 3月30日)

URL: http://www.moc.go.jp/river/horumon/in990330.html

・河川水質調査結果

URL: http://www.moc.go.jp/river/horumon/9903-61.html

代表16水系261地点において検出下限値(0.03ppb)未満が253地点、その他最大で0.7ppbである。なお、平成10年10月16日報告書よりも検出下限値が下がっている。

 

・底質調査結果

URL: http://www.moc.go.jp/river/horumon/9903-62.html

15水系20地点全てにおいて検出下限値(1 μg/kg)未満

 

・下水道調査結果(流入下水や放流水)

URL: http://www.moc.go.jp/river/horumon/990330-7.html

流入下水:10地点中5地点が定量下限値(0.3ppb)未満、最大値3.3ppb

放流水 :10地点中9地点が検出下限値(0.1ppb)未満、1地点が定量下限値(0.3ppb)未満

 

低濃度(20−230ppb)4−t−オクチルフェノール曝露により、雄メダカの生殖能力に影響がでている研究報告である。建設省の国内調査結果と対比すると水生生物への影響は考えにくいが、さらに低濃度での影響評価が必要と思われる。


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