1997年アメリカ有毒化学物質放出年間目録(TRI)


1999年5月19日

CSN #053

1999年4月にアメリカ環境保護庁が報告した1997年有毒化学物質放出年間目録(Toxics Release Inventory Public:TRI)が発表されました。PDFファイル形式で3MB、総数301ページある膨大な報告書です。1997年度の放出量だけでなく、有毒化学物質放出の経年推移が図表を用いて掲載されています。以下のアドレスをご参照下さい。

URL: http://www.epa.gov/opptintr/tri/tri97/drhome.htm

 

アメリカ環境保護庁のTRI行動全般については以下のサイトをご参考下さい。

URL: http://www.epa.gov/opptintr/tri/

 

PDFファイル形式を表示するには、無償配布のAdobe(R) Acrobat(R) Readerが必要ですので、お持ちでない方は下記アドレスからダウンロードして下さい。

URL: http://www.adobe.co.jp/product/acrobat/readstep.html

 

<1997年アメリカTRI概要紹介>

報告書の量が膨大なので、ごく一部紹介します。

 

1)1997年全排出量におけるTRI化学物質上位20

亜鉛化合物、メタノール、アンモニア、窒素化合物、マンガン化合物、トルエン、リン酸、キシレン、ノルマルヘキサン、塩素、塩化水素、銅化合物、メチルエチルケトン(MEK)、二硫化炭素、クロム化合物、ジクロロメタン、スチレン、鉛化合物、グリコールエーテル、亜鉛

これらの化合物で19億3千万ポンド(87万トン)となり、全体の1/3−1/4に相当する。(全体が25億8千万ポンド、117万トン

各化合物の用途や毒性についての記載有り。

 

2)1997年排出量におけるTRI化学物質上位20(廃棄物)

メタノール、エチレン、トルエン、銅、プロピレン、アンモニア、塩酸、クレオソート、亜鉛化合物、鉛化合物、リン酸、エチレングリコール、ノルマルヘキサン、銅化合物、キシレン、硫酸、塩化ビニル、窒素化合物、硝酸、塩素

 

3)全排出量の年別推移

1995年:26億2千万ポンド(119万トン)

1996年:25億2千万ポンド(114万トン)

1997年:25億8千万ポンド(117万トン)

 

 

<TRIや日本国内の状況について>

 

1)TRIについて

各企業の工場での生産活動における、製品を生み出すための原料の投入と排出物の産出の「物質収支」に関する報告。アメリカ環境保護庁が急性毒性・慢性影響・毒性・蓄積性に基づいて指定した約600以上の有毒化学物質について、大気・河川・埋め立て・施設外処理への年間放出・移動量を環境保護庁と州に報告しなければならない制度である。 

最近は様々な環境媒体における排出汚染物質の測定と報告が国際レベルで注目されるようになってきている。米国では、その他の国々における環境汚染物質排出移動登録(Pollutant Release and Transfer RegistersPRTR)のようなベンチマーク制度として、有毒化学物質放出年間目録(Toxics Release Inventory:TRI)を実施してきた。

 

2)日本国内の状況

従来は、各工場と地方自治体間で結ばれた「公害防止協定」があり、各工場の「公害防止計画」を作成しているところが多い。しかし、1992年にブラジルのリオデジャネイロ・サミットで採択された『アジェンダ21』で各国政府に導入推奨が行われ、OECDが1996年2月、加盟国に導入を勧告しているPRTR(環境汚染物質排出・移動登録制度)を検討している。そして、1996年6月、環境庁の包括的化学物質対策検討会が、日本でPRTR(環境汚染物質排出・移動登録制度)の導入を求める報告書をまとめた。そして、現在のところ、各企業においてPRTRプロセスに向けた取り組みを行っている。 

PRTRとは、環境を汚染するおそれのある物質の大気、水、土壌への排出および廃棄物としての現場からの移動に関する環境データベースである。つまり、1つ以上の物質を排出している施設が、排出物、量、排出先の環境媒体について定期的に報告し、これらのデータを整理して、関心を持つ当事者が利用できるようにする仕組みである。また、工場などの固定的な排出源からのデータだけでなく、農薬散布や運輸活動のような移動排出源からの排出量も、その他のデータ要素(自動車の数など)からの推定値として登録するようなPRTRを導入しているところもある。

また環境庁は、化学物質に限らず企業の環境対策を第三者機関がチェックし、その情報を公開する「公認環境監査制度」を1999年度末にも発足させる計画である。企業に1)環境保全に向けた経営方針、2)工場ごとの廃棄物・騒音の発生状況や対策、3)地球温暖化の原因になる二酸化炭素の削減計画、等を記載した報告書の作成を求め、国が認定する「公認環境監査人」(仮称)と呼ぶ第三者機関が報告通りに実施されているかをチェックし、公表するという方向である。


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