遺伝子組み替え植物花粉の有害性
1999年5月24日
CSN #055
<情報源>
英ネイチャー誌(Nature、May 20, 1999)
1999年5月20日号
これまで遺伝子組み替え作物の生体への影響は、英アバディーンのロウェット研究所のアーパド・パズタイ(Arpad Pusztai)博士による研究が報告されており、害虫耐性があるタチナタマメの遺伝子を組み込んだジャガイモをラットに与えたところ、腎臓、脾臓、胸腺、胃などの組織において成長障害と免疫力低下が観察され、同じ機能をもつマツユキソウの遺伝子を組み込んだジャガイモを与えたラットには、このような影響は見られなかったという報告である。
今回新たに英ネイチャー誌に掲載された報告は、米コーネル大学のJ.E.Loseyらのグループによるもので、遺伝子組み替えが行われたトウモロコシの花粉を振りかけたトウワタの葉でオオカバマダラ(Danaus plexippus)というチョウの幼虫を育てると、遺伝子組み換えしていない普通のトウモロコシの花粉を振りかけた葉や、花粉がまったくついていない葉で育てた幼虫に比べて、食べる量が少なくて成長が遅く、死亡率が高くなるというものである。実験の結果、4日間で44%の幼虫が死んだと報告されている。
この遺伝子組み替えされたトウモロコシは、害虫耐性を有する殺虫性毒素を作り出す細菌である、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis:Bt)遺伝子を導入することによって改善されたものである。これまでBt遺伝子を導入した(以下Btと略す)植物は、標的の害虫以外の生物への影響はほとんど無視できると考えられてきた。しかし、今回の実験でのBtトウモロコシの結果は、遺伝子組み替え作物の新たな危険性を示唆する。
Btトウモロコシの花粉は、風に乗って少なくとも60m以上飛ばされると考えられている。そのため、花粉が付着した植物を食べた生物に影響が出ることが考えられる。米国ではBtトウモロコシの栽培量を今後数年間で増大する計画を建てている。Loseyらは、さらなる研究が必要だと述べている。
この件に関して5/23付け朝日新聞では、ロイター通信からの情報として、欧州委員会が20日、米国に拠点を置くパイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社が開発したBtトウモロコシの種子を、欧州域内で販売する認可手続きを凍結したと報じている。
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